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はじめに
北アルプスの名ルート3本をテント泊で繋ぐ3泊4日縦走、後半の記録。
3日目は大キレットを踏破して槍ヶ岳へ登頂、4日目は表銀座ルートを縦走して燕岳を目指す。

山行録
3日目:大キレットを越え、槍ヶ岳へ会いに行く
前日はハードな西穂高岳~奥穂高岳岩稜踏破だったが、北穂高テント場で十分に眠れたおかげで残りの縦走をこなすための体力は復活。
3時に起床し、空が明るくなる直前の4時にテント場を出発した。いよいよ北穂高岳と南岳の間に伸びる切れ落ちた大稜線、大キレットへ挑戦するときだ。
早朝からさっそく今日の行程の核心部に挑むわけである。逆に、大キレットを突破して南岳に到達さえしてしまえば、そこから先に槍ヶ岳への登頂を阻む困難はない。
4:00 北穂高テント場出発

難易度は西穂高岳~奥穂高岳に比べれば低いと言われているものの、ミスが命とりな険しい岩稜が続くことに変わりはない。前日の疲労も考慮して、気を引き締めて取り掛かろう。
出発してみると、この日の天気はガス多め。北穂高岳山頂からの下りでさっそく鎖場を伴う急下降が連続して出現するものの、視界がないので高度感がなく、恐怖が軽減されているのはむしろありがたいかも。


時折垣間見える涸沢カールははるか下にあり、稜線のダイナミックさの片鱗を感じさせる。

ライチョウ第一号も発見!幸先の良いスタートだ。

下りも落ち着いてきたタイミングで、大キレットの中でも屈指の難所だと言われる「飛騨泣き」が出現。飛騨側(写真の左側)に落ちたら助からないためこの名前だとか。

切り立った岩の側面に鎖が一本這わせてあり、足の置き場はかなり少なめ。途中にいくつか人工のステップが打ち込んであるため、それらを有効活用すべし。


稜線通しに鎖をたどった先では2m近い垂直段差が出現。鎖と途中のステップ一本を頼りに下る必要があり、姿勢の移し方や足の置き場に難儀した。
試行錯誤の後に一度座り込んで冷静になり、再チャレンジで突破。瞬間的な怖さではこの山行で一番だったかもしれない。

飛騨泣きを越えた先もわずかに下りが続いた末、A沢のコルに到着。ここが北穂高岳と長谷川ピークを結ぶ鞍部だ。

次なるピークである長谷川ピークに向けての上りも非常に険しく、ペイントに忠実に痩せた岩稜をたどる道のりが続いた。



長谷川ピーク以降は目立った中間ピークはなく、ぐっと標高を下げて大キレットの最低鞍部に到達した後に一気に南岳に乗り上げる。
今思えば、序盤にクリアした北穂高岳から長谷川ピークにかけての下り→上りが大キレットで最も難しい区間だったらしい。長谷川ピークの先では恐怖を感じるような箇所はなく、相変わらず注意を要する稜線こそ続くものの難易度では一段下がったような感触があった。
最低鞍部からは厚く垂れこめる雲をくぐるように常念岳の優美な曲線が覗く。やはり常念岳は美しい!

最低鞍部からの上りは、落ちたらまずい断崖のような箇所は少なく、梯子や鎖を駆使して一気に標高を上げるダイナミックな区間が続いた。アスレチック的な楽しさがあり、岩稜ルートの最後で緊張感から解放されたのはありがたかった。


そしてついに大キレットをクリア、南岳小屋へ到着!
6:40 南岳小屋

南岳小屋を境に景色は一変。大キレットの険しさが夢だったかのように稜線は広く平坦になり、滑落の危険とは縁がない安全な世界に。緊張は緩み、気楽に縦走を楽しめる雰囲気が戻ってきた。
小屋から緩やかな上りを経て南岳へ登頂。

植物にも優しい環境ということで、さっそくチングルマやイワギキョウも。



ライチョウのつがいにも遭遇。雄が砂浴びしているようで、盛んに翼を振りながら道を掘り返していた。

槍ヶ岳に近づくにつれてガスが少しずつ引き始め、槍沢の雄大な広がりが視界に入る。


稜線終盤の上りを経て、ようやく槍ヶ岳山荘へ到着した。

さっそく山荘へ荷物をデポ、ヘルメットを被って槍の穂先へ向かう。一度通ったことがある道のりなので慣れもあり、楽しい岩登りだ。
山頂アタック中、ちょうど槍ヶ岳山荘のスタッフが山頂直下の二連続梯子を補修していた。整備ありがとうございます。


そして槍ヶ岳へ登頂!
9:10 槍ヶ岳登頂

山頂ではあいにくガスで真っ白だったが、同じタイミングで登ってきた外国人の子どもが英語で楽しそうにはしゃいでいるのを聞いているとこちらも嬉しい気分になってきた。
この狭い山頂に梯子をよじ登って到達する体験は刺激的に違いない。子どものうちに経験できるならなおさら記憶に刻まれそう。
当面ガスが取れる気配がなかったので早めに穂先を下りたのだが、槍ヶ岳山荘で休憩していると穂先が姿を見せ始めた!

大縦走のちょうど中間地点にある槍ヶ岳、きちんと山頂を拝めたのは幸いだった。これで未練なく次の稜線へ移れそうだ。
真夏でも大きな雪渓をたたえる大喰岳を振り返りながら、東鎌尾根をたどって槍ヶ岳を下っていった。

今日の宿泊地点である西岳までの道のりは、まず東鎌尾根を一気に下りて水俣乗越を通過、そこから300mほどの急登を経て西岳へ乗り上げるといった感じ。
東鎌尾根は梯子や階段が多数出現する急斜面であり、滑落には注意が必要。ここまでの疲れも加味して慎重に足を運んだ。


そして正午を回ったころ、3日目のゴールである西岳へ到着するのだった。
12:10 西岳到着

さっそく受付を経てテント設営へ向かう。
今回初めて利用した西岳のテント場だが、ここはロケーションが最高だ。
ヒュッテ西岳からやや離れた稜線上に、遮るものない平坦な砂礫が広がり、張る場所は選び放題。西には槍・穂高連峰、東には常念山脈が間近に望める位置にあるため、晴れたときには大展望が楽しめるに違いなかった。明日の天気予報は晴れ、朝の景色が今から楽しみだ。


ヒュッテ西岳では昼ご飯をいただく。軽食メニュー5品の中から選べる。
腹も減っていたし値段も山小屋にしてはお手頃だったので、欲張って2品いただくことに。鮭茶漬けが900円、サバサンドが700円。どちらも疲労の中でも食が進むいいメニューだった。


ガスっている中でも時折天頂から太陽が顔を出し、日中はテント内部が灼熱に。外の岩に座ってくつろいだ午後を過ごし、日の出の景色に期待を込めて宿泊するのだった。
4日目:表銀座縦走で充実の締めくくり
最終日の4日目は「表銀座」、すなわち槍ヶ岳と燕岳を結ぶ人気縦走路を通って燕岳を目指す。アップダウンは少なく危険な区間もないと聞くので、リラックスした気楽な稜線歩きで縦走を締めくくれそうだ。
下山までのコースタイムは短めなので、暗い早朝に行動する必要もない。3時半に起き出し、朝食をとりながら明るくなっていく空を眺めていた。
天気は昨日と打って変わり見事な晴れ、赤らむ地平線に常念岳のシルエットが浮かび上がる!

そして、振り返ると槍・穂高連峰の全景がそこに!
この稜線をはるばる歩いてきたのかと思うと感慨深い。そして、大キレットがいかに深く切れ込んでいるかもよく分かる。

マイテントと穂高岳で記念撮影。雲海もあいまって素晴らしい眺め。

しばらく見入っていると、常念岳の左からご来光が。

燃え上がるような朝焼けに包まれる連峰。


西岳テント場を宿泊地に選んで本当に良かった。最高の景色に見送られてテントを撤収、ぼちぼち大天井岳へ向けて歩き始めた。
5:00 西岳出発

表銀座縦走路の前半は大天井岳へ向けた稜線歩き。
眼前に膨大なボリュームを持った大天井岳が立ちはだかり迫力満点。朝日が後光のごとく差してさらに威厳を増している。


見た目からもわかるようにそれほど高低差の大きい稜線ではないのだが、前々日・前日と難しい岩稜歩きを続けてきたことで疲労が溜まり気味。
心拍がいつもより上がりやすくなっており、スローペース気味に大天井ヒュッテまで登り詰めた。

大天井岳山頂へ登るには山頂東側へ大回りしなければならず時間がかかる。今回は山頂をスルーして西側を巻くことに。その代わり、大天井ヒュッテから10分ほどで登れる牛首展望台へ寄っていった。
以前も一度寄った展望台だが、相変わらず槍・穂高が一望できる絶好のスポットだ。大天井岳の眺めもここがベストかもしれない。


大天井ヒュッテへ戻った後は、巻き道を通って大天井岳を左に抜ける。

そして、大天井岳を抜けた先に現れた稜線こそが表銀座の真骨頂だった。

稜線はどこまでも穏やかに伸びて登山者を優しく導き、ハイマツが覆う山肌を縫うように露出する砂礫が新鮮なコントラストを見せている。



砂礫のところどころにコマクサも咲いており、可憐な姿に癒される。前日までが試練の道のりだっただけに、雰囲気のまるで異なる平和な世界に放り込まれて不思議な気分。
疲労の蓄積した縦走終盤のため、アップダウンがほとんどないという稜線の特徴にも大いに助けられた。

燕岳へ近づくにつれ、その特徴である花崗岩が次第に出現し始める。


景色を楽しんでいるとあっという間に燕山荘へ到着。予約がなかなか取れないと聞く大人気の山小屋だ。今回はコーラを買わせてもらって糖分補給した。

下山路である合戦尾根は燕山荘が始点になっているため、荷物はここにデポできる。燕岳までは空身でピストンできるわけだ。
低下していたペースも身軽になったことで復活。スキップでもするような気分で燕岳へ向かった。


稜線から眺めた燕岳は花崗岩と砂礫とハイマツが入り混じり、南アルプスの鳳凰山を思い出すような美しい山容だった。

ただし、鳳凰山が静的な日本庭園を想起させる一方で、燕岳はもうすこし動きを感じさせる。花崗岩、砂礫、ハイマツ、すべての輪郭が右上から左下に流れていくような形で統一感を持っていることがそう感じる一因かもしれない。
山頂に近づくほどに白さを増していく道を歩み、燕岳へついに登頂!
これをもって縦走の全目標ピークを踏破したのだった。
9:20 燕岳登頂


先には北燕岳
燕山荘へ帰還してからはデポした荷物を再び背負い、下山へ移った。
下山に使う合戦尾根は北アルプス三大急登の一つ、らしいのだが、それほど急勾配な印象は受けなかった。そもそも下りで使ったのもあるし、砂礫メインでよく整備された道が非常に歩きやすく勾配の割に楽だったというのもあるだろう。

中間地点の合戦小屋で名物のスイカをいただいて休憩を挟み、無事に中房温泉へ下山した。登山中に食べるみずみずしいスイカのうまいことうまいこと。染み渡る。


11:20 下山完了
中房温泉では登山口すぐ近くに日帰り温泉があり、登山者へ至れり尽くせりの環境。4日間の汚れを落とし、きれいさっぱりで帰宅するのだった。

ちなみに、今回下山に使った中房温泉だが、下山から4日後に県道中房線で土砂崩れが発生。橋が流出し、車でのアクセスが断たれてしまったそうだ。
燕岳への登山口として重要なだけに早期の復旧を祈りたいところだ。
おわりに
三者三様の魅力を持つ北アルプス屈指の名ルートを連続で味わった贅沢な縦走だった!前半は特に険しい岩稜が続いたが、集中力を切らさず、体力も温存できたことで無事に最後まで歩きぬき、変化に富む道のりを楽しめた。







































































































































































































































































