一日目
はじめに
この日はいよいよ早朝にキャンプ場を出発し、暗闇の中を歩きだす!
二日目:6/16(日) いざ皇海山
山屋の朝は早い
道のりの長さを考えると、どれだけ早く出発しても早すぎることはない。序盤は林道を辿っていくことになるので暗い中歩いていても危険は少ない。そこで2:40には起床、朝食もそこそこに出発は3:07となった。
闇に包まれて空模様は伺えないものの、空気は穏やかで天気が崩れる様子はなさそう。気温も高すぎず低すぎずの適温で快適な山行になりそうだ。
ヘッドライトを点けて舗装された林道の緩やかな斜面を黙々と歩いていく。水分を4.5Lも積んでるわりには荷物が軽く、テンポよく足を踏み出せる。テントを張りっぱなしで来てよかった、これなら10時間でも余裕をもって歩き通せそう。
途中に車両進入禁止のゲートを通り、はたしてこの先の舗装は必要なのか疑問に思いながらも登山道の入口に到達した。
一の鳥居から庚申山荘までの道はよく整備されていて傾斜もゆるく、名前のついた岩々を見物しながらの気楽なウォームアップとなった。
前半は暗い中の山行となったが、全く迷う心配はなかった。道標のほとんどが反射板となっており、ヘッドライトを点けていると次に進むべき方向が輝くのだ。さすが早朝や夕方に歩く人が多い皇海山、配慮が行き届いている。
4時半を過ぎたあたりから周囲は明るくなり、ヘッドライトが必要なくなったころ、5:00に庚申山荘に到着。
庚申山荘を横目に見て
森が途切れ、一気に開けた空間で視界に入った庚申山荘は一目見て「ああ、これは限界だな」と分かるものだった。構えこそ立派だが、部材は古ぼけて階段はガタガタ、玄関の戸に至ってはガラスが一部破損している有様だ。
使用停止になるのも納得だったが、良い場所に建っているし登山者の拠点としても大切なのでぜひ早急に修繕してもらいたいところ。
山荘前にはありがたいことに水場もあったので、軽く水を補給して再出発した。
庚申山登頂
庚申山までの道のりは、地図上でこそ実線ルートになっているものの、なかなかスリリングになっていた。奇岩怪石がいくつも突き出す中、間を縫うように梯子や鎖を頼って標高を上げていく。なかには巨岩の横に走る溝の中を這っていくような箇所もあり、さながらアスレチックだった。
そして庚申山に登頂!
庚申山の何より印象的なところは、山頂を少し過ぎた先で一気に視界が開け、目の前に鎮座する皇海山にまじまじと見入ることができたことだった。
今まで私が見たことのある皇海山の姿といえば、赤城山に登った際にはるか遠くに垣間見えたものでしかない。それすらも、周囲から抜きんでた山体はすっかり雲に覆われて判別が難しいほどだった。
とんだツンデレ山だと思っていたものだが、ここにきてようやく間近でお目にかかることができた。
山頂が森に覆われて視界が開けないことから地味と言われがちな皇海山だが、こうして前衛の山々から見たときの山体の美しさを楽しむ山なのだとよくわかった。
ひとしきり周囲の眺めを楽しんだところで稜線歩きを再開した。ここから鋸山ピークまでは破線ルート、いつも以上に注意して通る必要がありそうだ。
要注意地帯、鋸山
と思いきや、前半は全くと言っていいほど危険個所はなく、むしろ木漏れ日の差し込む広々とした稜線をゆったりとアップダウンするだけの道で非常に快適だった。
一気に危険度が上がったのは破線ルート終盤、鋸山へ向けての最後の登りだ。突如稜線は細く険しくなり、鎖場と心もとない梯子が連発する区間が出現。なるほどこれが破線ルートの理由かと納得しつつも、三点支持を徹底して安全第一で突破していった。
ヒヤヒヤしつつもようやく鋸山へ登頂すると、頑張った報酬かのように間近に迫った皇海山が!庚申山から見たよりもさらに迫力が増していて良い。
鋸山以降は特に危険地帯はなく、鞍部で大きく下げた標高を獲得しなおすのに体力こそ使ったが無事登頂!
皇海山登頂
皇海山頂は前評判通り森に覆われ、展望は全くなかった。とはいえ、庚申山・鋸山とここまでの道のりで皇海山自身も含めた景色を楽しめてきているため、その点に全く不満はなかった。
むしろ、森に覆われているということは豊かな植生や美しい森が維持できていると見ることもでき、その点では良いこととすらいえるのではないだろうか。展望がないなどというのは登山者の都合でしかない。
展望の代わりにいくつか見どころもあったので、それらを一通り眺めた後に下山に移るのだった。
晴れ晴れ稜線歩き
要注意区間も過ぎ去ってあとは下山を残すのみになったので晴れ晴れした気持ち。それに合わせるかのように、六林班峠までの稜線歩きも明るく楽しく気楽なものとなった。
全体に日当たりはよくアップダウンは控えめ。笹薮の張り出した箇所こそ多いが道が判別できないほどではなく、むしろ藪漕ぎの練習としてちょうどよいくらいであった。
六林班峠では稜線に別れを告げ、鋸山ー庚申山の稜線に沿って東に蛇行するトラバース道で少しずつ標高を下げていくことになる。こちらもアップダウンのほぼない道になっていたものの、そのための代償として尾根と沢をまたぐたびに蛇行を繰り返し、距離がかなり長かった。
その道中で見晴らし岩という展望スポットにも寄れるようだったので、さくっと往復することに。
見晴らし岩から望む庚申山、そして下山
見晴らし岩の上からは庚申山の南面を一望することができた。
庚申山は奇岩・怪石が豊富な山という意味では瑞牆山に近いが、外観では大きく異なる印象だ。瑞牆山がその奇岩・怪石をそのまま見た目にも反映させてごつごつと起伏を見せているのに対し、庚申山はむしろでかい一枚岩が欠けることで全体の形を作っているような格好に見えて面白かった。
ちなみに庚申山は火山らしく、ちょっと意外。浸食が大きく進んでいること・植生が全体を覆っていることで隆起でできた山っぽくなっている。
寄り道も終えて本道に戻ると、ほどなく庚申山荘が見えてくる。
往路では暗い中通っていた序盤の登山道や林道も、ここまでくれば晴れやかなウィニングランだ。軽快に歩いて下山を果たした。
入浴完遂
下山完了時には13時ちょうど。3:07に出発したので山行時間は10時間を切ったようだ。やったぜ。
おかげでかじか荘の日帰り入浴にも間に合ったのでさっそくイン。
足尾温泉という温泉が近くに沸いているらしく、そちらを利用した気持ちよい湯になっている。展望の良い露天風呂も備えてあり、足尾の山深さを楽しみつつリフレッシュすることができた。
帰還
さて、銀山平まで下山したは良いが、バス停までの歩きも残っている。その前に張りっぱなしにしていたテントの回収もある。やることはそこそこ多かったが、幸い時間はたくさん残っていたのでゆったりと撤収作業に取り組めた。キャンプ場を離れるときには若干寂しさを感じるくらいには余韻の残る時間となった。
庚申信仰と、足尾銅山。この地にまつわる二つの隆盛の歴史をそれぞれの碑や遺物に垣間見ながらバス停のあるエリアまで帰還した。
バスが来るまで1時間は残っていたので、周辺をさらに歩いて観光したあとにバスを拾って帰宅したのだった。
振り返り
山行時間が3:07-13:00の合計9時間53分。
標準コースタイム14時間50分の0.67倍のタイムで完遂できたことになる。
- 水平距離が非常に長いコースで短縮がしづらいこと
- 長丁場を無事に乗り切るため、無理せずゆるゆると登るよう心掛けたこと
を踏まえれば上々のタイムだろう。
なお、下山後もしばらく歩き回っていたこともあり、一日の終わりに歩行距離を見るとフルマラソンを超えていた。ぶっちぎりの自己最長記録である。
- 水分は合計4.5Lを持ち込んだが、庚申山荘や六林班峠近くに水場があったため若干余らせた。とはいえ、庚申山から皇海山にかけては補給がきかないことを踏まえると保険をかけて正解だったと思っている。
- 行動食はカロリーメイト2箱に加え、グミ3袋をはじめとした多数のお菓子を持ち込んだ。長丁場だったのでカロリーメイトもグミも消費しきったが、他の菓子はいくらか残ったので見積もりはジャストだった。
総括
足尾地域に折り重なる歴史と、クラシックルートの本格的な山歩きを楽しめた充実の2日間だった!
そろそろ東北の山にも手を出してみたいな。