思念の滝壺

山に登る。

御嶽登山録~大いなる霊峰は優しさも秘めて~

はじめに

7/27(土)から7/28(日)にかけて御嶽山へ登ってきた。

古くから信仰を集め続ける偉大な霊峰は、そのいかつい山容や3000m超えの標高とは裏腹に、頂上を目指す私たちへの優しさも秘めた面白い山だった。今回はそんな登山の様子を記録する。

 

 

登山計画

御嶽の登山口へ通じる路線バスは木曽福島駅から出ているので、早朝に北陸新幹線と特急しなのを乗り継いで最速で木曽福島へ行くことに。

登山口は最もバス便が多くポピュラーな御嶽ロープウェイを選択した。スタート地点の標高は2100m程度なので、3000m峰にもかかわらず1000mに満たない登りで登頂できてしまう、意外と気軽な山のようだ。

だからといって東京からはるばる来て日帰りは無理なので、山頂山小屋の一つである「二の池ヒュッテ」で宿泊し、二日目に山頂を散策しつつ下山する計画となったのだった。

 

山行録

一日目

木曽福島を散策

特急しなのに乗って木曽福島駅へ到着。バスまでは1時間以上の余裕があるので駅周辺を散策することにした。

この町は中山道の要衝として古くから関所が置かれてきたらしく、街道の歴史的な街並みが保存してあって印象的な眺めになっていた。木曽川に張り出すように建築された崖家造りの民家もあり、なんでも狭い谷合の町で街道を少しでも広くするための工夫だったとか。

木曽川の流れと背後に迫る緑豊かな山々も相まって、歩くのが楽しい場所だった。

歴史的な街並み

崖家造り

そしてここは御嶽古道の始点でもあったらしい。ここから御嶽までといえば尋常ではない距離だ。現代の我々よりもはるかに長大なアプローチを何泊もかけて行っていた先人には敬意を表する。

 

御嶽古道の始点

 

駅の近くには空き家を改装したギャラリーを発見。ちょうど木曽の風景を写真に収めて展示されている方がいたので、御嶽を背景に一年を通じた農作業に勤しむ人々の写真などを見つつお話をしていた。

ギャラリーは基本誰でも展示に使えるらしく、空き家の有効活用法としては興味深い。

 

話し込んでいるうちにバスの時間がやってきたので、ロープウェイ駅へ移動した。

 

木曽の風景展
ロープウェイで高みへ

御嶽ロープウェイは随時運行のゴンドラ形式なので、チケットを買い次第即座に乗り込むことができた。

さあ上へ

 

ロープウェイ終点の七合目から見た御嶽は非常に惜しい眺め。

御嶽は3000m超えでありながら広大な山頂部を持つ台形型の大山塊であり、火山であることからいくつものピークを持つ。その中の最高峰である剣が峰は残念ながらガスに覆われて見えず。代わりのように、第二峰の摩利支天や北端の継子岳、日本最高所の滝である幻の滝を視界に収めることができた。

ガスに隠れかけの摩利支天。その右に幻の滝と継子岳

逆方向に目を向けると、中央アルプスをはじめとする東側の山々が一面に広がっている。中部地域の驚異的な険しさを改めて実感。

 

 

ちなみに、ロープウェイの横にはもう使われていない旧ロープウェイらしき廃構が。

旧ロープウェイ?

ロープウェイ駅ほど近くにある御嶽社にお参りしてから出発した。

 

12:20 山行開始

やはり御嶽は立山・富士山と並んで山岳信仰の中心となってきた霊峰。特にここ黒沢口は伝統的な行者の通り道なので、道中に社や地蔵や碑などが数えきれないほど存在している。

少し登ったところにある覚明社

 

登山道に関しても、8合目で森林限界に達するまではずっと木階段が敷かれ続けており、快適に登れるような努力がなされていた。

丁寧な階段

さくっと八合目

八合目まではさして苦労なく到達。この辺で森林限界に達して景色が開けてくるが、山頂方向はガスって見えず。うーん、天気はそんなに悪くないのにもどかしい。

 

惜しいなあ

たまに切れ間も

 

ここからは木階段が途切れてダイレクト登山道になる。途中からは道に占める大きな岩の割合が増えてきて、申し訳程度に混ざる木組みと合わせていよいよ修行の場という雰囲気を醸し出す中を登っていった。

 

八合目女人堂を見下ろして

御嶽全山総霊神之碑って...
全ての神をまとめて祀ってるってこと...!?

大明神に大菩薩に大権現に大荒神に天狗、錚々たる肩書き

北側のピークは見える
ここからの眺めは北アルプス

 

火山灰や岩のごろつく中を登っていると、ようやく目の前のガスが晴れだす!ちょうどすれ違ってくる行者の方々の白い装束と合わせて、御嶽を象徴するような眺めとなった。

凹凸激しい山頂と見上げる行者

九合目の石室山荘が張り付くように建っている

登ってきた道が一望できる

 

ちなみに二日間の行程を通じて登山者に占める行者率は結構高かった。現代における信仰の活発さでは国内トップかもしれない。

思わず格好を観察していたのだが、大人は笠に装束に足袋という完全なスタイルで登っていることがほとんどだった。子供は足への負担を考えてか白いスニーカーでも良いようだ。

 

九合目の石室山荘は中を覗いてみると現代の山小屋では珍しく畳敷き。古くからの行者の拠点であるようだ。

石室山荘

内部

 

火山灰ベースで黒かった登山道はいつのまにか黄土色に。

石室山荘を通過してからも少し続く登りをクリアしてついに火口辺縁へ到達すると、二の池とそのそばに建つ二の池山荘が。

火口辺縁から見下ろす二の池。
ほぼ火山灰で埋まっていて、池というよりぬかるみ

ここで荷物をデポして、剣ヶ峰までは身軽なピストンで行くことに。そして登頂!

噴火に備えてシェルターも

 

14:20 剣ヶ峰登頂

 

剣ヶ峰へ登頂したタイミングでガスが晴れていたのは幸運だった。一の池と、そこから一段落ちた高さにある二の池を一望することができ、植物の一切生えない厳しい火山の様相を堪能できた。

やっぱり、御嶽はいろいろといかつい。名前も威厳があるし火口部はこのハードな見た目だし、そもそも標高が高いし。でもそれでいて、登りやすいし水源涵養林の役割も大きく、林業が盛んだったため国立公園や国定公園ではなく県立公園として親しまれているあたりに優しさを感じる。不思議なギャップだ。

 

左が一の池、右が二の池。どちらも池というよりぬかるみ

あちらは規制により立ち入りできない

頂上奥社

ちょうど祈祷を行っていた

登頂したタイミングで天気が良かったことは幸運だったのだが、その幸運も束の間。

二の池へ下りている最中に落雷が2度あったかと思うと、突然の雨が降り出してきた!

最初は小雨程度だったので、レインウェアを着なくても急げば宿泊地の二の池ヒュッテまで間に合うだろうという甘い考えで走っていた。考えも空しく、ほどなく雨は勢いを増して土砂降りに。結局途中でレインウェアを着こむことになりつつ、這う這うの体で二の池ヒュッテへ逃げ込むのであった。

 

雨により流れを形成する二の池

14:50 二の池ヒュッテ到着

二の池ヒュッテ

明日の天気予報は午前中に晴れ。山頂部の稜線歩きが楽しめるといいなあと期待しつつ宿泊した。

夕食。白ワインも出て豪華

 

二日目

夜の間はきれいに星が見えるぐらいの晴天だったのだが、朝になってみるとガスに加えて強風が吹いているではないか。

山の天気なので気まぐれなのは仕方ないが、これでは稜線歩きは楽しめそうにない。

かといってこのまままっすぐ下山するのももったいない気がするので、とりあえず第二峰の摩利支天だけでも登ってから下りることに決めた。

 

時間には余裕があるので寝起きの時間をぐだぐだ過ごしつつ、決意を決めて出発。

 

6:30 出発

二の池ヒュッテから三の池方面へやや下った後、一気に登って摩利支天乗越へ到達、そこからは稜線をたどって摩利支天山のピークへ一直線。視界はガッスガスだが、途中何柱もの神々が祀られているのを眺めることはできた。

阿弥陀如来坂を登って摩利支天乗越へ

歳徳金神

月破金神

大陰金神

そして摩利支天山へ登頂。



その後は、五の池山荘の側へ下りて摩利支天乗越をトラバースしつつ二の池ヒュッテへ戻る。天気が回復する様子は一向になかったため、早めに家に帰ろうかということで一息に下山するのだった。

 

下山中に振り返って。やっぱりガスってる

ハイマツの中を下りる
10:00 下山完了

剣ヶ峰でガスが晴れていたのは奇跡だったらしい

下山後は開田高原アイス(とうもろこし味)を味わったりしつつ、しなの&あずさの特急コンビによって早めに家に帰還するのであった。

塩尻から新宿までの特急あずさでは、隣の席も埋まっているようだったが誰も乗ってくる様子がなく、図らずも快適な帰路となった。仮予約で支払いをしなかった跡が残ってたのかな。

 

総括

御嶽、名前と標高から想起されるそのイメージに反して、カジュアルに登山を楽しめる親しみやすい山だと知った楽しい山行だった!