思念の滝壺

山に登る。

利尻富士登山録~極北の秀峰は雲隠れ~ ②登山編

1日目

trthff.hatenablog.com

 

はじめに

利尻島探訪2日目の記録。

鴛泊を早朝に出発し、いよいよ利尻富士登山を決行する!

 

7/7(日) 利尻富士登山

4:20 鴛泊出発

利尻富士は島の中央にそびえる単独峰で、数少ない野営地は低標高地にしかないため基本的に強制sea to summitとなる。標高も1721mと高めなのでかなり登る。そこで早めに起床して出発した。

目が覚めた4時前にはすでに外が明るかったのが印象的だった。夏至からほどない時期なのもそうだが、利尻島が高緯度であることも影響しているだろう。

 

鴛泊から出る舗装道を歩いてしばし、利尻山神社を見つけたので参拝。

利尻山神社

厳しい気候に耐えられる建て付け

 

 

道の脇にひっそりと放置されているうんてい。
なぜここに...?学校でもあったのか

 

利尻山神社以降も15分ほど舗装道を歩いていると、ハイキングコースへの分岐が出現。ずっと舗装道なのも味気ないのでそちらに踏み込んでいった。

ハイキングコース入口。この辺から国立公園

ハイキングコースといいつつ、道は鬱蒼としており歩いていて若干不安になる感じ。気分が晴れやかになるかというとNOなので、普通に舗装道をそのままなぞって北麓野営場を経由していっても良かった感はある。

とはいえ道の踏み跡自体は明瞭なので、全く迷うことなく四つ辻へ到達。

甘露泉水と名付けられた水場を起点に、標高444mのポン山への登山道と先ほど通ってきたハイキングコース、北麓野営場への道と利尻富士への登山道が分岐している。

2Lペットボトルを空の状態で持ち込んでいたので、ここで水を補給してから利尻富士への登山道へ歩みを進めた。

甘露泉水。確かに澄んでいておいしい水だ

標高270mで3合目は気が早くない?

この規模の橋に名前が付けられているのは珍しい

390mで4合目。これ後半の間隔がやたら大きいパターンだと悟る。

4合目あたりまでは木々の中を縫っていく森のハイキングコースといった趣だったが、5合目ほどから本格的な登山道の様相を呈し始める。そして、ここまで曇りだった天気がやがて崩れ始め、ついに雨がポツポツと降り出してしまった。降水確率は低い予報だったのに...!

視界が完全に閉ざされているわけではないのが惜しいポイント

優しげな山肌

これは形の良い火山あるあるなのだが、登山道の傾斜はかなり安定していて、急登もなければ平坦な区間もほぼない中を淡々と登っていった。前日にきっちり休めているので体力的にはいっさい問題がない。

道中には見晴台と名付けられた箇所が2つあり、天気さえよければここから海まで見渡せたんだろうなあ...と有り得た景色に思いを馳せ、でも曇っているどころかあまつさえ雨が降っている現実に向き合うのであった。

6合目 第一見晴台。名前からして、晴れてたら展望が開けたんだろうなあ
ちなみに6合目なのに標高は半分も行っていない

7合目

第二見晴台

8合目 長官山。それぞれの合に名前がついているのが良い

利尻富士成層火山でありながら、山頂へ続く複数の尾根が際立っている。
古い休火山で浸食が進んでいるためだろうか

利尻岳山小屋。
あくまで緊急時の利用のための小屋なので注意。
泊まることを前提とした計画を立ててはいけない

9合目手前から赤茶けた土壌が出現する。火山だ!

9合目。
結局9合目から山頂までは300m登るのね

登山道のそばには咲き誇る花々を見ることができ、さすが花畑として知られる利尻・礼文の一角だけあるなというところ。特にベストシーズンの一つである7月に来たのが良かった。雨風が強まる中でも色とりどりの彼らを愛でることができたのは僥倖だった。

ここでもエゾカンゾウに出会えた

リシリオウギ

ミヤマアズマギク

チシマフウロかな?


山頂手前には土のうが複数置いてあり、登山者に可能な範囲で運び上げてほしいと書いてあった。土のうは浸食を食い止めるために使われるとのこと。

体力ならいくらでも余裕がある自分に手伝わない理由はない。土のうを担いで登っていった。

重量は4kgでせいぜいテント泊装備一式ぐらいの増加量のはずなのだが、担ぐ形だと全然体感の辛さが違う。息を切らしながらゴール地点まで運び上げたあとに、重心を最適化して荷重分散してくれるリュックという存在のありがたさを実感した。

スタート地点

ゴール地点

そして登頂!

7:50 利尻富士登頂


利尻山頂は社を中心とした小ぢんまりとした空間になっており、同じタイミングで登頂した人々と写真を撮り合ったりしつつ、登頂の感慨と天気が悪いことの悲しさを共有しながら下山に移った。

 

下山は比較的マイナーな沓形コースを行くので、山と高原地図上では破線ルートになっている要注意区間を通過する必要がある。

沓形コースへ

利尻富士のような形の良い火山で要注意区間ってなんだろう、鎖場とは考えづらいよなあと思ってルートを辿っていくと、ほどなくその理由が分かった。

途中で猛烈なザレ場をトラバースで通過する箇所があるのだ。一面に火山灰ベースの砂がかなりの厚みをもって広がり、足を踏み出すたびに一気に沈み込む。体重を支えられる程度の確かさを持った足場がほとんどできない。大きめの石もちょくちょく点在しているが、そのほぼすべてが浮石。体重をかけた瞬間に砂とともに滑り始めて落石となりむしろ危険だ。

ほぼ四つん這いになりながらほうほうの体でザレ場を抜けた。急斜面でも鎖場でもないのにこんな危機感を覚えた場所は正直初めてだった。そりゃ破線ルートに指定されるわけだ。

 

ただ、そこさえ抜けてしまえばあとは一般的な登山道。鴛泊コースよりは整備されていない道だったが、明瞭で迷うこともまったくなく沓形登山口まで下山した。

ハクサンイチゲの群落

ヨツバシオガマ

背負子投げの難所。ザレ場に比べたらはるかに楽

この岩のどこに礼文を見出したのだろう

沓形コースにも非常用の避難小屋があった

下山道の後半はほぼ川。

10:20 沓形登山口へ下山完了

沓形登山口近くには見返台展望台への遊歩道があったのが、この天気で見晴らしは期待できないのであまり登る意味もないだろうということで舗装道をそのまま下っていった。

見返台園地駐車場にはトイレも

どこぞの国道438号線よりずっとしっかりした山道

沓形市街地へは1時間もせず到着

沓形で昼食&リフレッシュ

昨日は狙った店で食べられなかったこともあって若干のフラストレーションがたまっていたが、今日の昼食は今度こそ!ということで「利尻らーめん味楽 本店」へ。

人気店ということで少々並んでいたが、大した待ち時間もなく美味しいラーメンを味わうことができてようやく報われた気分であった。

一押しの焦がし醤油ラーメン。スープが美味しい
醤油の香ばしさに合わせて旨味が圧倒的、これが利尻昆布の力か

さて、腹ごしらえが済んだら今度は風呂だ。沓形では「ホテル 利尻」が日帰り温泉を提供しているのでそちらを利用させてもらった。

複数の名前を持つホテル利尻
日帰り温泉としての名は「利尻ふれあい温泉」

ここの温泉はかなり独特な泉質で面白かった。

土が溶けているかのような褐色の不透明湯で、表面には謎の膜が浮いている強烈なビジュアル。その割に匂いはほとんどなく、温度もほどよい穏やかな湯であった。

どうやら源泉の時点では透明らしいのだが、鉄分が酸化して褐色になるらしい。表面の膜はカルシウムだそうだ。

 

リフレッシュも完了し、そろそろ空港へ戻る時間だ。沓形フェリーターミナルバス停から路線バスに乗るのであった。

沓形フェリーターミナル

沓形岬

ちょうどフェリーが到着してきた

船尾から車が吐き出される瞬間も目撃できた

利尻空港ではお土産を買ったりANA便の離陸を見守ったりする待機時間がありつつ、利尻島との別れを惜しみながら飛び立った。

空港の売店はいつだって助かる

また会う日まで、利尻島

ついでとばかりに札幌観光

あとは羽田への帰還を残すのみなのだが、新千歳-羽田の便はかなり遅い時間のものをとっていたので札幌で自由時間が発生。

以前北海道に1週間滞在したときも札幌には行けていなかったので、意気揚々と徒歩で街に繰り出して観光した。まあ、やっぱり札幌は広いらしく回れる箇所には限度があったが。

何はともあれ札幌時計台

大通公園から見えるさっぽろテレビ塔

赤れんが旧庁舎は耐震工事中

取り外された換気塔

スープカリー ヒリヒリ2号」で夕食
ブロッコリーと舞茸が特においしかった

 

旅の反省

  • 飛行機移動でガス缶が持ち込めないことをすっかり失念してバーナー一式を持ち込むというポカをやらかす。ガス缶は保安検査場で廃棄してもらった。
    • 当初の予定通りテント泊していたら火がなくて若干寂しい思いをしていたかも

 

総括

雨風に苦しめられつつも、利尻島でしか見られない花々を愛でながら涼しい登山を楽しめた山行だった!

展望が開けなかったという意味では利尻富士の真価を見られなかったので、もし機会があれば再訪したいところだ。そのときは礼文島も行きたいなあ。できれば花畑の季節に。注文が多いぞ。