思念の滝壺

山に登る。

伯耆大山登山~信仰と復活と展望と~

はじめに

5/19(日)に鳥取伯耆大山に登ってきた。

西日本の名山らしく、人間との深い関わりの歴史が伺えつつ、展望も楽しめるすばらしい山だったので記録する。

 

 

登山計画

東京→(夜行バス)→米子駅→(路線バス)→大山寺バス停(=大山登山口)

という行程をとった。路線バスはそれなりに本数が多く、7:20には行きの便が出ていて、帰りの便はある程度時間を柔軟に選べた。

https://www.nihonkotsu.jp/bus_local/yonago/pdf/time/daisen_kudari20220401.pdf

https://www.nihonkotsu.jp/bus_local/yonago/pdf/time/daisen_nobori20220401.pdf

 

大山自体は日帰りで無理なく登れる山なので、5/18(土)の夜に行きのバスに乗り、5/19(日)の夜に帰りのバスに乗るという形に。

 

大山頂上部の稜線縦走は崩落につき禁止されているとのことで、行程は弥山への往復。上りには夏山登山道を、下りには行者谷コースを選択した。

↓より引用

www.hotel-daisen.jp

 

山行録

6:40 米子駅到着

前日夜に夜行バスに乗って米子駅へ到着。

恥ずかしながら米子の読み方すら知らなかったのだが(「よなご」らしい)、ここは山陰の交通の要衝として発展を遂げ、また山陰鉄道の発祥の地でもあるらしい。

確かに、駅前のきれいさや発展度を見るに、ちょっとした地方の県庁所在地といっても遜色ないぐらいのところだ。

米子駅

山陰鉄道発祥の地

そんな米子駅で朝食を軽く食べながら路線バスを待機。

天気は曇り、とはいえ雲はそれほど厚くなく、雨の予報もない。悪くないコンディションのようだ。

 

7:20にやってきた本宮・大山線に乗っていざ大山へ!

バスに乗っていると、さっそく平地の中に抜きんでた山体が姿を現す。米子から大山寺への移動中は大山を北から見る格好になるため、必然目に入ったのは大山の北壁であった。西から見た大山が左右対称で最も美しく「伯耆富士」とも称えられるらしいが、北から見た大山もすごく面白い眺めだ。

大山北壁

西の裾野から山頂にかけてはそれこそ富士山のごとく妖艶なカーブを描いているが、山頂を越えて東側へ移ったとたんに稜線は激しい凹凸に変化する。これは究極の非対称とでもいうべき唯一無二の山容だと思う。


しばらくして大山寺バス停に到着。

ヒルクライムのイベントが開催中のよう

登山者向けの施設が充実

バス停周辺も眺めの良いところでおおよそ海まで見通せたが、せっかくなので山の上からダイナミックに見下ろしたいものだ。

山頂へ向けてさっそく出発した。

 

8:20 山行開始

出発直後は大山寺や大神山神社奥宮への参道となっている。広々と組まれた石畳の上を歩き、左右に旅館や飲食店が構える中を進んでいく。

大山寺への参道

上りは夏山登山道を使うので、途中で右に折れて通常の舗装道に入り、ほどなくして登山道入り口を発見。いよいよ本格的な山登りが始まった。

夏山登山道入り口

 

今回の山行のコンセプトは「ゆったり楽しく」だ。前回の山行が大峯奥駈道3泊4日であまりにもエクストリームだったので、山を気楽に楽しむ気持ちを取り戻す意味を込めてのことだった。

そういう意味では、獲得標高が900m程度、道のほとんどがよく整備されている大山は良い選択だったのかもしれない。

六合目までは丸木で組まれた階段が続いた。それも階段が途切れる区間が全くなく、とにかく徹底して整備されている。六合目から九合目こそ階段がなくなり人工物少なめの道になりはしたが、九合目から山頂にかけては今度は木道ががっちりと組んであった。

 

他の山では、丹沢とかですらここまでの徹底ぶりではないのでさすがに異様なものを感じていたのだが、大山の辿ってきた歴史を学ぶとその理由が分かった。1950年代から70年代にかけて、登山者が急増した結果として山頂付近の植生が失われて裸地となり、浸食溝も生じたそうだ。そんな大山が今にその美しい姿を復活させているのは「一木一石運動」をはじめとした懸命な努力の結果ということだ。

道の大半に渡って整備されている階段と木道もその不断の努力の一環と思うと胸が熱くなるものがあった。

標高1000mあたり。階段でゆったり楽しく

モノレールがちらり 農業用?

六合目には避難小屋

北壁。崩落が進んで険しい岸壁はさながら谷川岳のよう

六合目を超えると階段はまばらに

うっっっすらと隠岐諸島が見える

八合目あたりから植生は低木に

ダイナミック

木道に乗って山頂へ

低木も途切れ、草原地帯に

山頂デッキが見えてくる

弥山避難小屋を見下ろして

変わりゆく道や植生を眺めつつ登頂!


9:50 弥山山頂

山頂には北方向(日本海側)を見下ろせる広々としたデッキが組んであり、多くの登山者がそこで食事しながら休憩していた。


ロープで隔てられた向こう側を覗いてみると、案の定、東へ続く細い稜線と立ち入り禁止の標識。縦走できる時代に生まれたかったができないものは仕方ない。

崩落が進みやすい地質なのね

そもそもゆったり楽しくがコンセプトなので、デッキに腰かけてグミを食べながら呑気に景色を眺めていた。意外と風もそこそこ吹いて寒いため、長袖を着用。

デッキからの眺め 米子とその先の中海がよく見える

山陰中央部の地形をじっくり眺め終わってから下山を開始した。隠岐諸島も水平線近くにほんのうっすらとだが見えてよかった。

 

眺めが良いので下山が楽しい

 

六合目までは来た道と同じだが、そこから先は夏山登山道と別のルート、行者谷ルートを通って下山した。

行者谷ルートへ分岐

整備度合いでは行者谷ルートも同じぐらいしっかりしていたが、尾根を行く夏山登山道と違って谷側を通るこちらは全体的に森深い印象を楽しめた。個人的にはこちらの道が好き。

 

途中、元谷を横切る個所ではそびえ立つ北壁を見上げることができ、大迫力に唸った。

 

北 壁

立派な杉も

そんなこんなで大神山神社奥宮までたどり着き、登山道としては終わりとなった。

11:30 山行終了

さて、登山は終わったが、時間はまだまだあるので観光タイムである。

参道を逆行する形の変則的なルートにはなるが、まず大神山神社奥宮だ。

大山の古名は大神山であり、神社の名前にその名残があるらしい。

本社は修復工事中

大神様は隣の下山神社に仮遷座

参道を逆行していくスタイル



参道を下っていくと分岐に合流。そちらを上っていくと大山寺のようだ。

ということで大山寺にも参拝。

謎の撮影をしている人々も

割と神仏習合の雰囲気

大山寺

檀家がいない!?維持できているのは奇跡では

大神山神社・大山寺と主要二か所の参拝を終えて時刻は13時ごろ。

次はリフレッシュの時間だ!ということで日帰り温泉へ浸かることに。

今回選んだのは「豪円湯院」というところだ。

豪円湯院。豆乳や豆腐も推していてソフトクリームなどが楽しめる

温泉!温泉!

良い雰囲気 大山の写真がたくさん飾ってあって愛を感じる

いい湯だった。露天風呂と室内の風呂が1つずつあり、泉質は還元力が非常に強いものらしい。還元力が強いとどう体に良いのかはよくわからないが(というかもっと一般的に温泉の成分が人間の体調にどのような機序で作用するのか全く想像がつかない)、気持ち良いのでそんなことはどうでもいいのだ。

 

湯に浸かってリフレッシュした後は、併設で食堂もあったのでそちらの定食を食べた。

そばとおこわは、それぞれ大山寺周辺が牛馬市で栄えていた江戸時代・明治時代の名物だったようだ。豆腐と卯の花は豪円湯院の推しかな。セルフサービスで好きに豆腐を食べられたので3杯ほどいかせてもらった。

豆腐と卯の花はおかわり自由

 

さて、おおむね大山寺周辺は楽しみつくしたので、最後に大山自然歴史館で展示を眺めながらバスを待ち、15:20の便で米子駅へと戻った。

ヒルクライムのイベントをやっているまさにここ、牛馬市の指定地だったんだ

 

16:30 米子駅

夜行バス復路便の出発は20:15なので、まだ4時間ほども残っている。

せっかく米子駅という鉄道の結節点にいるのだから、鉄道に乗って今しか行けない場所に行こうと思い立つ。

米子からしか行けない場所といえばそう、日本海と中海を隔てる弓ヶ浜半島だ。米子を出発点として弓ヶ浜半島を北上し、境港駅を終点とするJR境線に乗った。

 

目玉おやじ列車が。そうか、行き先の境港は水木しげるゆかりの町か

境港駅。鬼太郎を中心とした町おこしに水木しげる自身が積極的に関わったとのこと。あたたかい

対岸は山がち

境港は水木しげるゆかりの町ということで、商店街の通りには「水木しげるロード」という名前が付けられ、道端にはいくつもの妖怪の銅像が飾られている。


商店街の店々や水木しげる記念館は17時には閉まってしまうらしく、残念ながら入ることはできなかったものの、道を散策するだけでも町と水木しげるゲゲゲの鬼太郎とのあたたかいつながりが感じられる穏やかな時間だった。

 

水木しげるロード

鬼太郎&目玉おやじ

水木しげる記念館。最近リニューアルしたらしいが、残念なことに営業時間外

1時間ほどの散策を終えて境線で再び米子駅に戻り、夜行バスで帰還したのだった。

平日の朝に東京へ帰還するというスケジュールは初だったが、バスでそれなりに寝付けたのでなんとかなった。

 

振り返り

  • 前回の反省を踏まえて持って行った耳栓、夜行バスで寝付くのに役立って大活躍だった。有用of有用。
  • 土質のおかげもあるが一度も滑らなかった。この調子で丁寧な下山を意識していきたい

総括

大山をいろいろな角度から味わうことができ、温泉も観光も満喫できた充実の旅だった!