思念の滝壺

山に登る。

四国遠征② 石鎚山登山~避けてもいいのさ、鎖の試練~

一日目

trthff.hatenablog.com

 

 

はじめに

四国遠征、二日目の記録。

この日は石鎚山に登りつつも、それで飽き足らず瓶ヶ森と伊予富士に登り、おまけに松山城も訪れたみっちみちの一日となる。

 

旅の記録

アラームを設定するのを忘れていたようで、爆睡の末起きたのは5時半を過ぎたころ。夏至の近いこの時期、本来4:30にはヘッドライトなしでも登山を始められるぐらいだから、若干遅れをとった。

 

そそくさと駐車場を移動し、6:00ごろに石鎚山登山道へ踏み入った。

登山口近くにあるレストラン&カフェ

石鎚神社中宮

登山口

土小屋登山口からの登山道は、はじめに尾根を忠実にたどって西へ登っていく。途中から、北に崖を向けている山頂部を迂回する形で北回りにトラバース、最後に鎖場と迂回路が並列するラストスパートの末に山頂へ到達することになる。

楽しい尾根歩き

前半の尾根歩きは特に爽快で楽しかった。尾根の植生は案の定笹原がメインとなっており、常に見晴らしが良い。最初こそ早朝特有のガスで視界が開けなかったものの、次第に折り重なる山塊が見えるようになってきた。

 

尾根歩き

爽やか~



尾根歩きの後に訪れる山頂部のトラバース区間は、崖面を見上げる位置にある。そのため、落石注意との看板が掲げられていた。いくつかの沢を通過する中で最近落ちてきたらしい岩が足元にゴロゴロしていて、確かに危険地帯のようだった。

 

ヘルメットは持ってきていなかったが、落石の兆候はなく無事に歩き切ることに成功。ここからは山頂に向けたスパートだ。

 

険しい岩峰である山頂部

鳥居をくぐって最後の区間

試練の鎖へ

石鎚山最後の試練として、二ノ鎖三ノ鎖という、2つの長大かつ急峻な鎖場が登山者を待ち構えている。

どちらも迂回路を選ぶこともできるのだが、体験しないのももったいない。興味本位で二ノ鎖に取り付いた結果のレポートをお届けする。

 

登り始めてすぐ「アッこれ覚悟が要るやつだ」と直感を得て冷や汗が出だす。傾斜のきつさ、岩の大きさともに厄介で、ほぼ全区間に渡って二本渡してある鎖を頼らなければ登ることが難しい。リュックの重さのせいでスムーズに登れず、荷物をデポしてくればよかったと後悔する。

そして二ノ鎖も後半になった地点で、ホールドのない大岩とオーバーハング気味の大岩が二択を迫ってくる。どちらも鎖に全体重をかけて力づくでいかなければ登れなさそうだ。

個人的なポリシーとして、鎖にすべてを預けるのは嫌だった。そして、別に鎖場を突破することを目標にしているわけではない。体験としては十分に満足だったので、素直にUターンしてここまで登ってきた区間を降りた。

試練に挑むのもいいことだが、別に回避したっていいのだ。水のごとき柔軟なメンタリティで迂回路を登り始めた。

迂回路は階段がメイン

(なお、三ノ鎖は二ノ鎖よりもさらに過酷そうだったので颯爽とスルーした。崖に刻まれた溝に二本の鎖が垂れているんだ、そんなの登りたいわけがない)

登頂後に上から見下ろす三ノ鎖

そして登頂!

 



石鎚山、山頂が険しい岩峰でその道のりも過酷。おおらかに登山者を迎え入れてくれる剣山とは対照的な山という印象だ。霊山として信仰を集める理由もよくわかった。道中、ときおり法螺の音が聞こえてきたり、修行僧の服装で登っている人々とすれ違ったりと、信仰は現代にも生きているようだ。

 

そして、頂上山荘のあるピーク、弥山からの眺めは抜群だった。

特に東方向は、痩せた険しい稜線が連なる先に天狗岳・南尖峰と激しいピークが続き、神々しい威厳を放っている。タイミングが良かったおかげでガスも晴れ、その堂々たる山容をまじまじと眺めることができた。

 

信じられないほど尖った天狗岳

こちらの方が剣って感じする。
剣山と石鎚山、名前を交換しませんか

ガスに包まれる姿もまた良い

剣の如く尖ったピークである天狗岳だが、どうやら登れるらしい。もちろん、見た目の通り痩せた稜線を渡るので相応に注意が必要だが。

なんだかんだで二ノ鎖・三ノ鎖を登らなかったことによるフラストレーションはあったので、リュックをデポして天狗岳へ向けて歩を進めた。

 

天狗岳に登れたので全部チャラで

リュックから解放されて身軽になり千人力、もはや私を止めるものはない。というのは言い過ぎだが、実際天狗岳までの道のりはさして苦労しなかった。ただし、両側に切れ落ちた馬の背状の岩を渡る箇所が2か所あり、そこは結構な高度感であった。

 

スリリングだぜ

弥山を振り返って。仙界のごとき風景

そして天狗岳へも登頂!

金属板の穴で文字を表現するの、かっこいいし文字が消える心配もない

鞍部とは異なり、天狗岳山頂部はそれなりの広がりを持ち、達成感に浸りながらゆったりと休憩することができた。

ただし、登頂後あたりからガスが多くなってきた。あまり長居せず、視界が閉ざされる前に戻ることにしたのだった。

雨の日は通りたくないねえ

手前の岩稜と向こう側の笹原のギャップ

天狗岳に登ることができた達成感で晴れ晴れとした気持ちだ。石鎚山を存分に楽しめたので悔いはない、ピストンで下山した。


ちなみに、9時ぐらいになるとツアー客・団体客の巨大パーティが急増してきた。混雑を避けたいなら早朝に登るのが吉のようだ。

下山ならなおさら楽しい尾根歩き

土小屋登山口へ下山が完了した時点で時刻は9:30。まだまだ時間は無限にあり、他の山に登ることも十分できそうだ。

猪肉コロッケバーガーで一息

 

ということで、昨夕に宿から見えて気になっていた「瓶ヶ森」へ登ることに決定!

瓶ヶ森にも登山口に駐車場があるので、そちらへレンタカーを泊めて再び歩みを進めた。

レッツ瓶ヶ森

瓶ヶ森登山口駐車場

駐車場の標高が高いこともあって、瓶ヶ森まではかなりあっさり登ることができた。石鎚山の後に登る山としてちょうど良い感じだ。そして、四国山地の立派な稜線とそれを貫く瓶ヶ森林道のライン、麓に2つあるキャンプ場といったものを眺めながらの道中はとても目を楽しませてくれた。

 

瓶ヶ森林道(UFOライン)の軌跡が見える
よく道を通したものだ

やっぱり見晴らしが良い!
四国山地縦走は絶対楽しいだろうな

広く豊かな山肌

昨夕目の当たりにした山頂がここだ。張りのある曲線

登頂

瓶ヶ森山頂は剣山的だね

瓶ヶ森から下山し、時刻は11:30。

正午も回っていない、もう一座ぐらいはいける!

ということでさらにおかわりを決定。次は瓶ヶ森のさらに奥にある「伊予富士」へ突貫だ。富士と名付けられるからにはきっと左右対称で美麗な山容を持っているに違いない、楽しみだ。

 

レッツ伊予富士

伊予富士登山口には五台ほどの車が停められるスペースがあり、私の先に駐車していたのは一台だけ。首尾よく駐車に成功して登り始めた。

 

伊予富士登山

伊予富士登山口からは、東西に延びる稜線を西方向へトラバース気味に登っていき、稜線に取り付いた時点で進路を反転、東の伊予富士ピークへ向けて稜線を辿っていく道になっている。こちらも瓶ヶ森同様、山頂までさほど時間はかからず、見晴らしの良い中の気楽な上りとなった。

 

そして見えてきた伊予富士の山容は、まさしく秀峰。コンパスを広げたかのような角度をなす山頂は確かに対称的。やや膨らみを持った笹原の山肌が全体の印象を柔らかくし、三本の爪痕のような形状で覗く岩肌が今度はアクセントになっている。

 

見れば見るほど均整の取れた美しい山で、これは讃えたくなるのも頷ける。ただし「富士」ではないよなあという感想だけは残ったが。富士というなら成層火山じゃないと(富士原理主義者)

 

伊予富士

伊予富士へ続く稜線。楽しい

振り返って

そして登頂!



伊予富士山頂からは全周に視界が開けている。東に目をやると寒風山・笹ヶ峰と連なっていくトレイルが、西に目をやると隣接するピークである東黒森が見え、ここ縦走したら絶対楽しいだろとの思いをさらに強くしてくれた。いつかやりたい。

 

また、稜線部の笹原が南面を中心に広がっていて。逆に北面は森林になっている箇所が多いことに気づいた。日照量とか関係あるのだろうか。

 

東へ続く稜線

西には東黒森(ややこしい)
その先には瓶ヶ森石鎚山があるはずだが、ガスで見えず


伊予富士から下山して時刻は13時を回り、ようやく登高意欲もある程度満足した。

空港への移動には余裕を持ちたいこともあり、そろそろ石鎚山を離れ、観光モードに切り替えながら松山への移動を開始した。

 

観光モードへチェンジ

登山を終えたら何はともあれ温泉だあ、ということで東温市の「ふるさと交流館 さくらの湯」へ。

公営の複合施設のようで、温水プールやジム、食堂も併設されている充実ぶり。近所に欲しいぐらいだ。

肝心の温泉は、色こそあまりついていないがすごくヌルヌルな感触で面白かった。よくわからないが肌にも良いかもしれない。

 

 

リフレッシュも済ませたので、本日の最後の行程として松山城にも行ってみた。

到着したときには天守の最終入場時刻を過ぎていたので、残念ながら天守内部に入ることはできなかった。ただし、リフトに乗って本丸を散策しつつ、天守を眺めることは叶ったので報われた。

 

松山城は、下見板の黒と漆喰の白により、コントラストのくっきりしたモノクロで全体がまとまっていて、それがモダンさを醸し出している素敵な城だった。

一度の旅で二つのリフトに乗ることになろうとは

芸術的な線を描く石垣

本丸が非常に広大

天守とそれを守る櫓たち

松山城隣に祀られる東雲神社

帰還

日程をあまりに詰め込んだことで、空港までの移動はちょっと慌ただしくなった。が、いざ空港についてみると帰りの便が30分遅延。今まで予約した便がだいたい40%ぐらいの割合で遅延してるんだけど、これが普通なのだろうか...

 

そんな急ぐ必要なかったなあと思いつつ、空港内で道後ビールとじゃこ天という強力コンビを味わってから帰還したのだった。

 

反省点

  • 土小屋から瓶ヶ森へ移動する途中、急カーブで対向車とすれ違おうとして車輪を側溝にはめてしまった。近くで停車していた方に助けてもらい、側溝も浅かったおかげで車体を傷つけず脱出できたのが本当に幸いだった。
    • ハンドリング感覚に慣れていない車種だったこと・余裕をもってすれ違おうとして端に寄り過ぎたことが原因だった。無理に動きながらすれ違おうとせず、ちょうどよいところで停車して対向車が通るのを待つ方が安全。

総括

四国山地の想像以上の懐の深さ・名山の多さを思い知って目を開かれる新鮮な旅だった!四国の山はぜひまた登りに訪れたいところだ。