思念の滝壺

山に登る。

伊吹山探訪~名山を散歩する贅沢~

 

はじめに

5/25(土)に伊吹山を訪れてきた。

「登った」じゃなく「訪れた」なのはドライブウェイを車で駆け上がったからなのだが、車を足にしたおかげで関ヶ原彦根城をついでに回ることができ、実り多い旅となったので記録する。

 

行動計画

伊吹山にはもともと山頂近くまで車で上がることのできる有料道路「伊吹山ドライブウェイ」が開通しており、そちらは歩行が禁止されているため、麓からの登山道は正面登山道の一本に限られていた。

しかし、その正面登山道も2023年の大雨により大規模に崩壊してしまった。もはや「麓からは登山するな」という旨のお達しが出ている

www.city.maibara.lg.jp

ということで、不本意ではあるがレンタカーでドライブウェイを登ることにした。

 

伊吹山のほど近くに新幹線の停車駅である米原駅があるので、新幹線で往復、米原駅でレンタカーを借りる日帰り行程となった。

 

旅の記録

米原上陸

朝一番の新幹線で米原駅へ上陸。天気は気持ちの良い晴れ、快適な一日になりそうだ。

米原駅周辺

さっそくレンタカーを借り、目的地を伊吹山山頂にセットして出発した。1年前は全くのペーパードライバーと化していた私だが、北海道1週間旅行と鹿児島遠征の徹底した実地トレーニングによって鍛えられてきた。

 

途中コンビニに立ち寄りつつ目の前に見えた伊吹山を撮影。市街地にほど近いところに立ち上がり、豊かな広がりを持った山容をひとしきり眺める。確かにこのなだらかさなら山頂近くまで自動車道を通せようというものだ。

広がりを持った山頂。ただ禿げ気味なのが気になる

30分ほどのドライブののちに伊吹山口へ到着、料金(一般車3140円)を払って伊吹山ドライブウェイへエントリーした。

 

道は一般的な山を行く舗装道といった感じで、道幅はそれほど広くなく、急カーブが連発するので速度は出せない。全線で30km/hに制限されているのも納得の道だったが、平気で飛ばしてこちらに追いついてくる車やバイクが結構多かった。幸い待避所もそれなりにあったので、追いつかれるたびに先を譲ってのんびりと登っていくのだった。

 

そして山頂駐車場へ到着。駐車場はかなり広々としていて、中央部にはなぜか大量のマツダ車が集まってオフ会をしていた。

来た道を振り返って

展望台から見下ろせる

琵琶湖がちらり

ここから伊吹山山頂までは遊歩道となっているので、そちらを登っていくことに。涼しい風が適度に吹き付けているので、多少運動してもあまり汗をかかずに済みそうだ。

 

悠々の伊吹山逍遥

登山装備は持ってきていないし靴はランニングシューズだったが、それで全く問題ない程度には快適な道。森林・低木はあまりなく、山頂付近は一帯が草原となっている。道端にはいくつか花が咲いており、事前にもらったパンフレットで花の種類を特定しながら歩くのがなかなか新鮮だった。植物や花に詳しい人の楽しみ方が分かった気がした。

悠々の散歩

ヤマブキソウ

イブキハタザオ 伊吹山の固有種らしい

タチツボスミレ

菜の花はさすがにすぐわかる

道の途中には治山施設と表記してある防風・防雪柵らしきものが。冬には日本海側からの風をもろに受ける山だからこそだろうか。

治山施設

尾根をなぞる柵と、下には琵琶湖

また、伊吹山は全周への視界が開けていることもあり、周辺の地形が手に取るようにわかる。そこが面白さでもあった。

北を見ると伊吹山から尾根が伸び、国見岳・大禿山・御座峰とピークが連なっていく。そこからさらに遠くに目をやると名だたる高峰たち、白山や御嶽が視界に入る。

南を見れば今度は鈴鹿山脈や養老山地が立ち上がり、それらと伊吹山によって挟まれた格好の関ヶ原は、東の濃尾平野と西の近江盆地を隔てるまさに関門となっている。

冠雪の白山

ぎりぎり見える御嶽

濃尾平野(左)と近江盆地(右)を隔てる関門、その名を関ヶ原

琵琶湖南部へも視界が通る

小屋群が見えてきた

そして登頂。

日本武尊

弥勒

三角点

山頂にはいくつもの小屋に加え、日本武尊像や弥勒堂などの信仰の証が見受けられ、この点はやはり西日本の名山らしい特徴だろう。

しばらくのんびりした後に上りとは違う道を選んで下っていった。東回りで下り専用とされている道だったが、こちらは登山道然としていて歩きごたえがあった。

庭園のような道を下る

さて、伊吹山の散歩を終えて時間は13時。レンタカー返却の18時まで時間は十分あるので、ここからは観光タイムだ。

 

まずは伊吹山の麓、天下分け目の決戦の舞台、関ヶ原を訪れることにした。

 

関ヶ原を見て回る

関ヶ原町のあちこちに合戦に関連する史跡があり、到底すべては回り切れない。石田三成陣跡と決戦地に絞って訪れてきた。

関ヶ原合戦戦没者慰霊碑

石田三成陣跡 小高い笹尾山へ登っていく

 

陣跡から関ヶ原を見下ろす

決戦地

決戦地そばにある旧関ヶ原北小学校。現在は観光施設として再利用されている

ぽかぽかした春の陽気の中ということもあり、水田や野山の広がる関ヶ原決戦地は、ここでかつて日の本の運命を決める戦いが起こったとは想像できないようなのどかさであった。

 

ついでに関ヶ原の景勝を調べてみると、関ヶ原鍾乳洞があるらしい。鍾乳洞へ行く道の途中にある旧陸軍火薬庫跡も合わせて寄ってきた。

第五洞窟式火薬庫跡。この地が火薬庫に選ばれたのは、交通の結節点かつ洞窟が造りやすい地形だったからとのこと

 

関ヶ原鍾乳洞入り口 天井が低い!

こぢんまりとした洞窟といった印象

「巨人の足」

「昇竜の間」

後半の水路にはニジマスが住んでいる

関ヶ原鍾乳洞は鍾乳洞としては小規模だったが、施設の古さや客の少なさも含めてローカル観光地といった雰囲気を楽しめた。割と求めていたものだ。

関ヶ原観光はおおむね満足。時間は15時ごろ、最後に彦根城を訪れることにした。

 

ボーナスステージ彦根城

彦根城は入場締め切りが16時30分、営業終了が17時だったため、滑り込みでの入場となった。

 

かつて鐘楼があった鐘の丸
子供たちが虫取りをしている

天秤櫓。左右対称な見た目が天秤に似ていることから
修繕により左右で石積みの方式が違うらしい

天秤櫓の中も見学できた

一方の壁は柱を埋める形で防御力を高めている

そして天守

急な階段!

耐震工事中

天守から見える夕方の琵琶湖沿岸、素晴らしい

多景島も見える

伊吹山

帰還

天守から伊吹山が見えたことで今日の行程としてはなんだか一周した気がする。時間もいいところになったので、米原駅へ戻り、駅周辺を少しうろついてから新幹線で帰宅したのだった。

北陸道中山道分岐点


帰り際、米原駅でこんなポスターが目に入った。

確かに、伊吹山は美しい輪郭線に比して山肌の禿げ具合が目立ってしまっているなとは思った。花畑は柵で守る努力がなされつつも、かなり小規模になっていた。山頂付近では、いろいろなところで保全や植生復元のための協力金が募られてもいた。

 

最初は「山頂付近まで車道を通してしまったせいなのでは?」と思ったが、ドライブウェイの開通は1960年代、伊吹山の状況悪化はもっと最近のことのようだ。どうやらシカが増えたことによる食害が深刻らしい。登山道の崩壊もそれに起因して必然的に起こった現象とのことでいろいろ合点がいった。

かつて登山者の増加により山頂の荒廃を経験した伯耆大山とはまた違った苦境に立たされている伊吹山、私に貢献できることは協力金を納めることぐらいだったが、ここからどうやって復活を目指していくのか注目したいところだ。

 

総括

伊吹山の散歩に関ヶ原彦根城の観光と、凝縮された濃厚な一日を楽しめた!

 

 

少しずつ雪解けの季節が近づいている。登る山の標高を上げていきたいな。