思念の滝壺

山に登る。

蓼科山登山~山頂から見渡す日本アルプスフルコース~

はじめに

3/16(土)に蓼科山に登ってきた。

前回の霧ヶ峰からステップアップした雪山の経験を積みつつ、晴れた山頂から見渡す日本の屋根フルコースを存分に楽しめたので記録する。

 

 

登山計画

蓼科山は無理なく日帰りできる山とはいえ、3月の雪山ということもあって出発時刻は早ければ早いほどいい。

蓼科山登山口へのバスは冬期には運行していないので、早朝に登山開始しようとすると必然的にタクシーを使うことになる。

 

行動計画はこれで決まった。

  • 前日に高速バスで茅野駅入り、ホテルで一泊する
  • 早朝5時30分にタクシーで蓼科山登山口へ、そこから登山開始
  • 蓼科山ピストン
  • 下山後は路線バスで茅野駅まで戻る。冬期は蓼科山登山口までバスが来ないので、プール平あたりまで下る

 

ということで登山開始。当日の行程図は↓のようになった。

赤線が往路、オレンジが復路。帰りは信玄棒道を経由してプール平まで戻った

山行録

朝4時には起床してお湯を沸かしたり朝食を食べたりとてんやわんや。5時30分ぴったりにホテル前に迎えに来たタクシーに乗っていざ登山口へ。

 

今年はすさまじく暖冬らしく、茅野市街ではすでに雪が解け切って全く積もっていなかった。これでは山の方も雪が薄くなっていそうだ。

見上げる八ヶ岳は心なしか白に欠ける気がしたものの、さすがにまだまだ雪山だ、油断せずに備えるべし。

 

冬の蓼科山は雪山初心者向けで優しいということもあり、やはりこの時期は登山者が多いようだ。タクシーの運転手さんいわく、先週あたりは早朝の登山口駐車場が車であふれかえり、停めることもままならなかったらしい。

 

今回は幸いなことにさほど人は多くなく、同じく山頂を目指す数人の登山者の会話が聞こえる程度の適度なにぎやかさだった。

 

駐車場までタクシーでひとっ飛び

蓼科山は女神山と呼ばれることもあるらしく、周辺には女神にまつわる地名が多い

 

準備を済ませ、軽アイゼンはいったん付けずに出発。道のコンディションが分かるまで様子見だ。

 

6:15 蓼科山登山口 出発

雪はよく締まり、踏み跡も明瞭

気温は0度前後、晴れた良好な天気の中を歩きだした。

 

道は人気ルートだからだろう、踏み跡がこれ以上ないほど明瞭に刻まれていた。加えて雪質が固く締まっていることもあり、ザクザクと音を立てながら夏道の感覚で歩けて快適だ。ワカンもアイゼンもこの段階では全く必要なかった。その後斜度が上がっていった際も、軽アイゼンを付けるだけで十分にグリップが効き、それ以上は全く必要なかった。

 

なるほど、蓼科山が初心者向けとされるのは、斜度が一定で危険個所がないからというだけじゃなさそうだ。踏み跡がしっかりしていてラッセルが必要ないことも大きいのだろう。

 

明るい樹林帯を楽しく登る

7時ちょうどぐらいには2110m地点に到達。出発地点からの標高差400mを1時間足らずで登ったことになる。夏道も真っ青なハイペース!

 

一度斜度が緩む

目指すピークが木々の間から

次第に朝日が差し込みだし、雪道をキラキラと照らし始める。それに連動するかのように登っている自分のテンションも上がっていく。足元は確かだし、雪景色は清浄だし、天気も良い。すべてが最高だあ。登るのを決めたのはたった3日前のことだったが、まさかこんなにコンディションが良いとは。

 

山頂に近づくにつれて次第に樹林がまばらになり始める。そろそろかと思って後ろを振り返ると、期待通りふもとまでの景色が一気に開けていた。

振り返ると南アルプス

八ヶ岳も。ダイナミックな稜線

樹林帯が完全に終わるまでの区間が斜度の最も大きい核心部だった。それでも6本爪軽アイゼンで登れないものではなく、さして苦労を感じずに突破できた。

 

山頂へ、ラストスパート

この斜度も軽アイゼンで無問題(雪さえ締まっていれば)

樹氷っぽくなってる!

山頂の溶岩帯。吹きさらしで風が強い

そして登頂!

8:03 蓼科山山頂

先行者が一人いたらしく、風で埋もれた道の中でも一組走る踏み跡をたどって山頂へ。

これでも雪は少ない方だろう

山頂からの眺めには息を呑んだ。

蓼科山八ヶ岳主峰群からやや距離を置いた独立峰であることから、八ヶ岳も、北アルプスも、中央アルプス南アルプスも、日本の屋根のすべてを遮るものなく見渡すことができた

なんなら、先日歩いた霧ヶ峰と、中央分水嶺を挟んで対極にある美ヶ原も立体感をもって見下ろすことまでできた。贅沢すぎるフルコースだ。

 

風は強かったが、登る際に汗をかかなかったおかげで全く寒さを感じず、しばらくの間立ち止まって景色に見入っていた。

はてなブログにぎりぎり載るまでトリミングしたパノラマ。
八ヶ岳南アルプス中央アルプスー御嶽ー乗鞍岳穂高連峰後立山連峰
すべてが視界に...!

八ヶ岳を見るのにこれほどいい位置もない

南アルプス。ここから見えるのは甲斐駒と仙丈だろうか

 

右奥に御嶽。このいかつさに惹かれる

北アルプス。大キレットも大槍もばっちり
下を見下ろすと左に白樺湖霧ヶ峰、右奥にトレイルが伸びた先に美ヶ原

北には浅間山。噴火警戒レベルが1になったら登りに行きたい

山頂には雪原の中にぽつんと蓼科神社奥の宮が。お参りしてからぼちぼち下山に入った。

冬でも溶岩がゴロゴロしていることがよくわかる



下山も軽アイゼンで全く支障を感じず、日が昇って気温の高い中をサクサクと下りていった。山頂でお話をした人は軽アイゼンどころかチェーンスパイクで登っていたので、コンディションに左右されるとはいえ蓼科山に重装備は必要ないとよくわかった。(12本爪アイゼンにピッケルでガチガチに固めて登っている人もちょくちょく見かけたが)

 

山頂から吹き降ろしているのだろう

明るい下り

9:46 蓼科山登山口 下山

想像以上に快適な道のりだったためあっという間に下山してしまった。

 

このままバスで帰っても不完全燃焼で終わるのは目に見えている。

...そうだ!バスに乗れるプール平までの移動を舗装道じゃなく登山道にしよう

 

ということで、蓼科山登山口から南へ向けて伸びる信玄棒道(信玄が信濃攻めのために作った軍用道)を辿ることに決めた。

踏み跡はなく、唯一スキーの跡が一組伸びるだけだったが、むしろそれは歓迎だった。前回の霧ヶ峰で紐が外れてうまく使えなかったワカンを今度こそ使いこなすチャンス。そしてラッセルで体力づくりだ!

 

信玄棒道へ踏み出す

ワカンリベンジ

途中からはスキー跡も別の方向へ消えていき、完全にノートレースの中を歩いていった。

 

自分だけの足跡を刻め

 

これもまた贅沢な時間で幸せだった。軍用道として作られただけはあり、道幅がとても広く日当たりが良い。武田家の軍勢が通った様子に思いを馳せながら、ほどよく締まった雪を踏みしめてのんびり下り歩いた。

 

ワカンも今回は大活躍だった。正しい装着法を実践したことで(振り返りで後述する)紐が外れることもなく、また緩むことも一切なく確実に浮力を稼いでくれた。

 

11:10 信玄棒道 終点

立ち入り禁止ねえ...

ほどなくして信玄棒道は終わりを告げる。厳密には終わっていないのだが、滝の湯川と並走し始めるあたりから先の区間は私有地となっており、立ち入りが禁止されている。

 

歴史にゆかりのある素敵な遊歩道を立ち入り禁止にすることに納得できない思いを抱えつつも、ここまでで満足はできたので舗装道に合流して残りの道を歩いた。

 

途中で見かけた蓼科諏訪神社にお参り。

第一の鳥居

第二の鳥居

帰りは15時ぐらいのバスに乗る気満々だったので、のんびり歩いて寄り道しつつ、残りの時間は蓼科温泉にでも入って過ごそうかな~と思っていた。

しかし、プール平にちょうど着いたあたりでバスが目の前に現れ、運転手さんが私に声をかけてくれた。なんと茅野駅行きの便であるという。そう、15時の便の一つ手前、11時50分あたりの便に間に合ってしまっていたのだ。

 

蓼科温泉に入りたい思いも少しあったが、バスを3時間待つよりはサクッと帰れた方がトータルで幸せそうだということで乗ることに決定。

 

17時には家に帰還するという圧倒的なスピードで行程を達成した。

茅野駅では鴨南蛮をいただく

霧ヶ峰クラフトハイボール。よかった

振り返り

ワカンの正しい使い方、習得

前回の山行で紐が外れてしまい使い物にならなかったワカン。

trthff.hatenablog.com

メーカーに装着法が合っているか問い合わせたところ、一つ大きな間違いをしていたことが判明した。

私は霧ヶ峰において、↓のような状態(工場出荷状態)のままワカンを装着して使った。その結果、力がかかるたびにバックルから紐が繰り出されていき、あっという間に緩んで最終的には外れてしまっていた。

正しくは、↓のように紐の終端を折り返してバックルに通し直さなければならなかったのだ。

これを実践して信玄棒道をラッセルしてみた結果、紐はガッチリ固定されて全く緩まず、最後まで確かな浮力を提供してくれた。

道具は正しく使ってこそだと改めて実感した顛末だった。

 

冬山で汗をかかないことの重要性

山頂では強風だが全く寒さを感じなかった。これはやはり、上りでほぼ汗をかかず、体が乾燥した状態で保たれていたおかげだと思われる。

冬山においては、激しく動いて汗をかきながらスピードを出すより、多少遅くても良いから汗をかかないように登ることが一番大事らしい。心得た。

 

ちなみに服装を記録しておくと、

  • 上半身は長袖インナー+ソフトシェル+ダウンコート
  • 下半身はスパッツ+3シーズンのトレッキングパンツ。

登っている際は暑くなったのでダウンコートを脱ぎ、リュックに吊るしていた。

 

ストックは自分には合わないかも

ストックを使わずに登ったが、支障がないどころか手ぶらの方が疲れがたまらず楽だった。信玄棒道をラッセルしているときもストックが必要とは全く思わなかった。

足で全体重を支え、手は重心のコントロールに集中した方がかえって重心バランスが崩れず、リズムも乱れないため疲れにくいのかもしれない。少なくとも自分にはストックは不要だということが分かった。

 

ツェルトを持っているなら支柱に使う用途もあるだろうが、今のところ持ってないからなあ。

 

その他個人的な反省

  • 前日夕方の高速バスに遅れかけた。ぎりぎり間に合ったので良かったが、バスは出発予定時間ぴったりに動き出し、遅れた者への慈悲が一切なかった。バスを使う際は(というか交通機関全部そうだが)時間に余裕を持たねばならない。
  • 山頂で手袋が風に飛ばされかけた。ストラップの類があると万全か

 

総括

山頂からの360度ビューを晴れの中楽しむことができ、道具や登り方に関する知見も確実に溜まった素晴らしい山行だった!

 

来週には屋久島遠征も控えている。そちらも楽しみだ。気温こそ高いだろうが防水対策は万全にしなければ。