思念の滝壺

山に登る。

谷川岳登山~ロープウェイなんて知らない~

はじめに

10/14(土)に谷川岳に登ってきた。

 

せっかくなのでロープウェイを使わず、日本三大急登の一つとされる西黒尾根を登り、一ノ倉岳、武能岳を経由して蓬峠から下山した。

 

紅葉と急峻な稜線の組み合わせを存分に楽しめた山行だったので記録する。

 

山行録

 

始発で出発すると、東京からでも8時半ごろに土合駅に着ける。丹沢並みのアクセスの良さでびっくりした。公共交通機関だと、アクセスの良さは直線距離とまったく比例しないのがよく分かる。

 

谷川岳の登山基地である土合駅はホームがトンネル内にあるため、日の光を浴びるために長大な階段を上る必要がある。

ウォーミングアップ

二番乗りで階段をクリア

「日本一のモグラ駅」

合計で500段弱の階段を登り切った先にようやく駅舎が。

今日は急登の西黒尾根から稜線歩きまでを日帰りでこなすのだから、これぐらいはむしろ良いウォーミングアップだ。登山口へ向けて意気揚々と出発。

 

8:55 土合駅出発

ロープウェイ...?知らない子ですね

ロープウェイは体力の消費を抑えて山をゆるく楽しんだり、稜線上の行動距離を伸ばしたりするのに有用ではある(私も旭岳に登ったときにロープウェイを使っている)が、今回は上りそのものを楽しみたいのでスルーだ。

 

ロープウェイ駅を横目に舗装道を奥へ進むと山岳資料館が、そのさらに先でようやく西黒尾根登山口が姿を現す。

西黒尾根登山口、もう傾斜が急

登山口に一歩足を踏み入れた瞬間から既に急登が始まる。しかもこの急登、前半部では緩む区間がほとんどなく、「ここで休憩しよう」と思える区切りになる場所がなかった。

その割にあまり疲れを感じず、「上りのきつさは北岳とか甲武信ヶ岳とかと大して変わらないな~」なんてのんきに考えながら登れたのは、果たして本当にこの登山道がその程度なのか、それとも自分が成長しているだけなのか。

 

ロープウェイを回避する物好きは少ないだろうと予想していただけに、登山者がなかなか多いのも意外だった。この尾根を登るだけあって、ストックを使わないストロングスタイルの割合が高かった。同志よ。

 

私は日帰り軽装でぶっ飛ばしていたため、20~30組ぐらいはごぼう抜きできてなかなか爽快だった。

 

送電塔から覗く太陽

南に見えるはロープウェイ終着点のビューテラスてんじん

正直ここまでは、西黒尾根が日本三大急登と呼ばれていることについて疑問を感じていた。が、後半訪れる怒涛の岩場・鎖場ラッシュによって思いを改めることになる。

これから始まる鎖場の前兆

刺激的なアスレチック

傾斜の大きい鎖場が何度も続くというだけでなく、岩の表面がツルツルしていて油断すると滑る。集中力も体力も要する後半部は、赤岳の真教寺尾根を彷彿とさせる激しさであった。

鎖場になると必然的に追い越しができなくなり、前の人が進むのを待ちながら景色を眺める時間が増える。北方向の展望はなんともダイナミックで、山頂付近で紅葉が始まっていることもあって見惚れる眺めだった。

2000mとは思えない威容

北東には朝日岳。手前に笠ヶ岳(左)と白毛門(右)が重なる

.

 

高度感も出てくる

北海道の大らかな山々にすっかり慣らされていたので、尾根が急峻さを増して久々の高度感を味わうとなかなかにスリルがあった。

 

物好きが多い

ラクダの背、いいネーミング

剱岳別山尾根を思い出す眺め

右には断崖絶壁

天神尾根からも意外と距離はあるようだ

登りは続く

ザンゲ岩。怖くて懺悔してる暇なさそう

黄金

怒涛のラストスパートを抜けると、傾斜は緩み、突然辺りは笹原となる。

そして登頂!

11:14 谷川岳(トマの耳)登頂

後半の岩場を経て、西黒尾根が確かに日本有数の急登であることを実感した。

前半部の樹林帯を登る道、後半部の鎖場のどちらも、それだけでいえば匹敵する登山道は他に多くある。だが、登山口から稜線に至るまでずっとそのレベルが続く尾根となるとなかなかない。

3kmしかない水平距離で1200mもの標高差を上り切る、最初から最後まで全力の道、それが西黒尾根だった。

にょきっと生えるオキの耳

西へ向かう稜線には万太郎山仙ノ倉山。彫りが深く陰影がはっきりしている

この稜線が2000mないは嘘では

さてここからはお楽しみの稜線歩きに移るわけだが、ロープウェイ終点の天神尾根と合流したこともあって山頂付近はとてつもない渋滞だった。

 

真夏の富士山や立山にこそ及ばないが、秋の谷川岳は恐るべき人気のようだ。

人多すぎぃ!

オキの耳。順番待ちの間の一瞬に遠目から撮影

人が少なくなって静かな山を楽しめるようになるのは、ようやくオキの耳を越えたあたりからだった。

いざ一ノ倉岳へ

富士浅間神社奥の院へお参り

これ以上前に出たくない断崖絶壁

谷川岳を振り返って

12:33 一ノ倉岳


渋滞に思った以上に時間を取られたので、若干の焦りが生じる。茂倉岳に着いた時点で13時ちょうどぐらい、そこから茂倉新道を通って土樽駅まで直接下山するルートも頭をよぎった。

 

だが、今日は無風の秋晴れ、不安要素は若干道が滑りやすいということのみ。後半は林道なので、最悪そこで日が暮れても安全に帰りつける。標準コースタイムの2/3以下のタイムを安定して出せる自分を信じて、当初のルートである蓬峠を貫き通すことにした。

 

13:43 武能岳

武能岳も立派

武能岳が今回最後の大きな上り。見た目からも分かるように結構な急登で、西黒尾根の蓄積もあって何回か足を止めたが、それでも全体としてはかなりいいペースで登頂できた。

 

武能岳から蓬峠を見下ろす眺めは壮観、笹薮のみずみずしい緑が尾根の一面を覆い、その中にくっきりと一本登山道が走っていた。

遠くから見ると草原

14:05 蓬峠

新蓬ヒュッテ

蓬峠からの下山道である蓬新道はなかなか面白かった。蓬沢に沿う形で少しずつ標高を下げていくのだが、蓬沢に流れ込む小川がいくつもあり、それらを渡っていくのはヒートアップした自分にちょうどよい。

 

沢の水はきれいそうだったので、途中で少し飲んでみた。今も腹を下してないので大丈夫そうだ。

 

渡渉点。ロープも飛び石もあるので濡れずに渡れる

この積み石は人の手によるものか

河岸崩落につき、高巻きに迂回する区間があった

並ぶススキ、麓でも秋が始まっている

日の高いうちに林道に辿り着けた

関越自動車道、こんな険しい中を通っているのか

そして土樽駅へ無事帰還。

 

15:53 土樽駅到着


上越線の運行間隔はかなり長く、次の便が18時なのは誤算だった。かといって15時24分の便に間に合わせるのはまず無理なので諦めもつこうというもの。十分がんばった。駅舎でまったりしてぼちぼち帰宅したのだった。

 

実はこの週末、もともとは白峰三山を縦走するつもりで準備していた。だが、日曜日の天気がピンポイントで崩れ、南アルプスの稜線上は強風の予報。急遽日帰りできる谷川岳に予定を変更したが、紅葉も始まっていて稜線の立派さも南アルプスに劣らない、すばらしい山だった。

 

振り返り

まずはコースタイム。

土合駅の出発が8:55、土樽駅への到着が15:53なので行動時間は6時間58分になる。

標準コースタイムは11時間55分なので、今回の山行は標準コースタイムの0.58倍のタイムを記録したことになる。稜線歩きのアップダウンでも足を回し続けられたし、下りもいいペースを維持したから納得だ。

山頂付近の渋滞がなかったらもっと速かったかもしれない。

 

 

次にヒヤリとしたできごと。

やっぱり事故は下山後半に起こりやすいようで、今回も蓬峠を越えた先で

  • 足が崖側に滑って登山道を踏み外した。幸い木が密集していたので落ちることはなかった。
  • 水たまりの前でふと立ち止まってスマホを取り出そうとしたが、滑って水たまりに全身落ちかけた。踏ん張った結果、被害は足とリュックの底部に収まった。

といったことがあった。

 

どちらも滑ったことに端を発しているが、これは登山靴の消耗が原因の一つと思われる。帰りの土樽駅で靴の様子を確認していたが、もう限界に近い様子だ。

アウトソールの起伏が無くなってきている

アウトソールの剥離が進んでいる。アッパーも擦り切れたりほつれたり。

そろそろ買い替え時が来てしまったようだ。

二年前に初めて買った登山靴、ミドルカットで初心者に履きやすい作りながら、硬めのソールで岩場も難なく歩ける頼もしい相棒だった。感謝に堪えない。

ちなみにモデルはキャラバン、グランドキングのGK25スポーツ用品店で買ったのだが、ネットで情報を探してもほとんど見つからないので一部店舗限定みたいな特殊モデルなのかもしれない。

 

次に買うモデルに求める条件は

  • 次もキャラバンが良い!幅広めの私の足にぴったり合っている。デザインも好きだし価格も手を出しやすい。
  • 高耐久・ハイカットの本格的な登山靴にしたい!登山にある程度慣れてきた今の自分なら、アッパーをあまり傷つけずに使えると思う。アウトソールを貼り替えて長く使えたらいいな。

www.caravan-web.com

www.caravan-web.com

候補に挙がったのはGK85とGK88だったが、オールレザーのGK85はうまくメンテナンスして履き続ける自信がなかったので、今のGK25と使用感が近いであろうGK88を購入することにした。

 

新しい相棒と山に出るのも楽しみだ。

 

おわりに

急登後の稜線歩きも難なく楽しむことができ、ステップアップを実感した山行だった!

 

そろそろ高山は雪に包まれだすので、日本アルプスはまた来年。次は奥多摩の山に登るのを検討中。