思念の滝壺

山に登る。

赤城山登山~足取り弾む外輪山巡り~

はじめに

12/16(土)に赤城山に登ってきた。

11月末の金峰山が今年最後の登山かな~と思っていたのだが、12月をじっと過ごしている間に我慢ならなくなってきた。

もともと赤城山には雪山入門として冬に訪れるつもりだったのだが、無雪期に登って地形感覚を掴む予行演習をしておこう、ということでこのタイミングでの山行に踏み切った。

 

ルート

当日のルート

ルートは赤城山ビジターセンターを出発して、大沼、小沼をとりまく主要なピークを一通り踏んで一周するもの。特に、赤城山最高峰の黒檜山と展望良好の次鋒である地蔵岳はきっちり押さえることができた。

鈴ヶ岳は西に孤立しており、コースタイムが爆増してしまうので今回は断念した。

 

山行録

交通手段には前橋駅から出る赤城山直通バスがとても便利だ。冬にも冬季専用ダイヤで休みなく運行してくれるのがポイント高い。

前橋駅の表示が親切なバスターミナルから乗車し、行く手にやや雲をまとって見える赤城山を見据えながら移動した。

乗客の数は少ない。紅葉と雪山の狭間にある微妙なシーズンだからだろう。

天気は薄曇り。雨の心配はなさそうだ

前橋駅高崎線や新幹線が通らないのを今回初めて知った。県庁所在地なのに行くのに乗り換えが必要なの、ちょっと切ない。)

 

鳥居の向こうに赤城山

10:00 赤城山ビジターセンター出発

ビジターセンターに到着。

センター内ではヤマノススメのパネルを見かける。気になる作品ではあるのだが、自分がまだ登っていない山の回を見たらネタバレされた感がありそうなので手を出せていない。

赤城山ビジターセンター

このイラスト、すごく好き

 

それはそれとして自分の山行は始まる。舗装道を少し北へなぞった先に駒ヶ岳・黒檜山登山口。さっそく赤城山最高峰へ駆けあがっていくぞ!

コンディションは良好だった。雲の量は朝よりも少なくなって、晴れ間も若干見えるぐらいに。風もそよ風程度、全然寒さを感じない。

登山道も快適そのもの。長大な鉄階段が2つも掛かっていて、その間の区間にも木階段がきっちり整備されている。全く疲労をためずに稜線に出ることができて、これから外輪山周回を控える身にはうれしい限りだ。

木からはすっかり葉が枯れ落ちて寂しい見た目になっているが、これはこれで日当たりが良く開放的な山行が楽しめる。

鉄階段第一陣

狭間の木階段

鉄階段第二陣

稜線では景色が一気に開けて開放感は最高潮!思わず足取りも弾んでくる。

南には小沼と、それを取り囲む長七郎山や小地蔵岳が見え、火山ならではの趣を醸し出していた。小沼は大沼より結構高い位置にあるんだな。

また、スリムな印象の駒ヶ岳と、その奥にどっしりと構える黒檜山のコントラストもこの稜線歩きの面白さの一つのようだ。

足取り弾む

東には雲海

小沼と、それを見下ろす長七郎山&小地蔵岳

駒ヶ岳(右)と黒檜山(左)

黒檜山頂手前では黒檜大神が祀られていたのでお参り。山に登っていると神社に出会うことは多い。お参りするのが結構好きな身としてはお得感がある。

そして登頂。

11:15 黒檜山

山頂から少し北に行くと展望の開けるスポットがあり、南西から北にかけて広く景色が見渡せた。(このへんから気づかないうちに写真のアスペクト比が16:9になっている)

大沼から離れてすっくと立つ鈴ヶ岳

北にも尾根が伸びる。先には北黒檜山が

北アルプスもそれなりに見える

見えそうで見えない、雲に隠れた皇海山

最高峰で遮るものもなかったが、風は優しくさわさわと吹くのみ。赤城山自身のユニークな山容と北の山々をひとしきり眺め終わった後にゆったりと行動を再開した。

 

ここからはいったん大沼まで下山し、そこから改めて陣笠山・薬師岳の尾根へ歩を進めることになる。

黒檜山から直接大沼へ降りるルートは、駒ヶ岳経由のルートよりもきつかった。とにかく岩が大量にごろついていて、そしてそのどれもが斜めを向いていて足を置くことを拒否してくる。岩の一つ一つと対話し、無理そうなら間の土で妥協することをひたすら繰り返して地道に下りて行った。

 

大沼の対岸向こうには立派なピークの地蔵岳が見えていた。道中に地蔵岳を「アンテナ山」と書いている標識を見かけて少しムッとしたが、カッコ書きで「(地蔵岳)」と後から書き足されていて胸がすいた。山は伝統と威厳ある名前で呼びたい、アンテナ山じゃあんまりだよなあ。

大沼にはちょっとした観光施設と浜があるが、この季節は閑散としている

対岸の向こうには地蔵岳。放送局のアンテナが複数立つ

そんなこんなで一度大沼まで下りることに成功した。

さて、これで今回の山行は終わらない。次に赴くは陣笠山~薬師岳の尾根だ。

一度舗装道に合流し、しばらく道なりに進んだ先、前橋市沼田市の境界である五輪峠から目的の尾根に足を踏み入れた。

ここの尾根歩きは、黒檜山の稜線にも増して爽やか、なおかつ起伏もほとんどないので散歩感覚で楽しめた。

そして、ここから振り返った黒檜山が最も格好良く見えた。全容が見え、なおかつそれなりに近い距離なので迫力がある。

黒檜山

12:39 薬師岳

どんどんピークを踏んでいく

陣笠山→薬師岳→出張山とさくさく越えていき、出張峠まであっという間の尾根歩きだった。

出張峠から、大沼周辺の全体像が一望できる。

鈴ヶ岳。大沼の外輪山とは別の古い噴火でできたから孤立気味らしい

鈴ヶ岳へ登るのはコースタイム上断念するので、出張峠からは素直に大沼へ下りる。

この日2度目の大沼下山である。

孤高のカルガモ

今日の山歩きはまだまだ終わらない。次は大沼沿いにやや南下したのち、スキー場の斜面を登って見晴山へ。ゲレンデだけあって、すっきり開けたなだらかな斜面を自由な経路で登っていける。

山の内側へ滑り降りるスキー場って新鮮

牧歌的な見晴山、先にはアンテナの立つ地蔵岳

東屋の向こうに荒山

見晴山を越えた先では一度舗装道に合流し、改めて地蔵岳への登山道に入っていった。素直なピークなだけあって、登山道もまっとうに素直で、ほどよい斜度の道をほどよい時間登り続けて登頂。

14:09 地蔵岳

地蔵岳には様々な放送局が立っている。確かにこの山、見晴らしがよいので電波を飛ばすのにはちょうど良いし、山頂が広いので施設を建設するのに十分な土地がある。放送局にはこの上ない適地のようだ。

地蔵岳という名に違わず、山頂には地蔵も見かけることができた。地蔵を撮るのはなんとなくはばかられるので写真は残っていないが。

アンテナ群

小沼がはっきり見える。地元の蔵王御釜を思い出す眺め

地蔵岳をクリアしたので、いよいよ今日最後の行程へ移っていく。それは赤城山南部エリア、小沼周辺の尾根周回だ。

地蔵岳からは南へ向けて下りていき、さっそく小沼に出た。

小沼は、端的に言ってちょっと怖いところだった。周り全体が緩い尾根に覆われ、そして舗装道や建物の類がまったくないので人里から隔絶されている。良く言えば秘境感が手軽に味わえる一方で、囲まれて逃げ場のない場所で静かな沼と対峙する不気味さもそこにはあった。

春に来たらもっと印象は違うかもしれない。

小沼。大沼よりも人気がない

不気味な撮り方もできる

小沼の南端にある鞍部から尾根に取り付き、長七郎山と小地蔵岳へ。

最後の尾根歩き

14:55 長七郎山

ここまで何度もアップダウンを繰り返してきたにもかかわらず、長七郎山・小地蔵岳へ向けた最後の上りも苦ではなかった。今年は去年までと比べ物にならないほど山に登ってきたから、その成果が出ているなあと思うと感慨深い。

皇海山もちょっと姿を見せてくれる。抜きんでた山体

地蔵岳からほどなく舗装道に出て、今回の山行も無事に終了した。

見下ろすは覚満淵。表日本には珍しい高層湿地とのこと

15:36 赤城山ビジターセンター帰還

バスが来るのは16:40。だいぶ時間があるので、ついでに覚満淵を回る遊歩道を歩いた。

がっちり木道

張り出している半島部分が2.5m~3mの泥炭層を形成しているミズゴケ・ツルコケモモ群落(受け売り)

16時を過ぎるころにはあたりは暗くなりだし、めっきりと冷え込んできた。赤城山ビジターセンターは15:45に閉まってしまうらしく、屋外に締め出されて寒さに耐えながらバスを迎え帰還したのだった。これも寒冷順化の一環と思おう。

振り返り

  • 12月の赤城山は雪もなく寒すぎず、それでいて登山者も少ないので、地形や見晴らしを純粋に楽しむだけなら最適期といってもいいくらい。ただし植生には期待しない。
  • 大沼と小沼の読み方問題。山と高原地図では「おの」「この」と書かれてるけど、現地の標識では徹底して「ONUMA」「KONUMA」と表記されている。どちらを信じればいいんだ
  • ポケットに入れた家の鍵を紛失した。常にコンパスと同じ側に入れているので、コンパスが手元にある限り、取り出すことの少ない鍵もちゃんと手元にあるだろうと思い込み、まさか無くすとは思っていなかった。やらかした。今度からは行動開始前にちゃんとリュックにしまう。

総括

大沼・小沼をとりまくいくつものピークを楽しく歩き回れる、さながら遊園地のような楽しい山行だった!

積雪期、雪山入門としてもう一度訪れてみたい。