思念の滝壺

山に登る。

武尊山登山~信仰に思いを馳せる修験道~

はじめに

10/28(土)に日帰りで武尊山に登ってきた。

 

ルートは上ノ原登山口から沖武尊へ登り、前武尊から不動岳を経由して川場温泉へ下山するもの。

もともとはピストンや武尊神社へ下る周回ルートも視野に入れていたが、当日順調に進んだので、結果的にフルで縦走することができた。

 

このルートにはいくつも見どころがあり、

  • 上ノ原登山口は武尊神社側と比べて使われていないらしく、閑静な沢を遡っていく登りが楽しめる。
  • 山頂~前武尊~不動岳~川場尾根の下山ルートは古くから修験道として親しまれていて、像や社がそこここに祀られている。
  • 修験道らしく、多数の鎖とロープとハシゴが待ち受けている。

と盛り沢山。実際すごく楽しめたので、記録を残す。

 

 

山行録

川上駅では谷川岳方面と武尊山方面のバスが出ているが、谷川岳行きの便がとてつもなく混んでいた。

谷川岳行きの列。

それを横目にガラガラのバスに乗って上ノ原入口へ。谷川岳だけ人気が偏り過ぎじゃないか、ロープウェイがあって格の割に簡単だから?

 

武尊山は公共交通機関でのアクセスがかなり悪く、どこから登ろうとしてもバスの終点から登山口まで距離がある。

仕方ないがマイカーを持たぬ身、バス停から登山口まで舗装道を歩いていくつもりで出発した。ところがなんと、出発した直後、軽トラックのお兄さんが現れて声をかけてくれた。お言葉に甘えて助手席に乗せてもらい、登山口までひとっ飛び。

おかげで山行の一番退屈な部分をスキップし、タイムも大幅に短縮することができた。親切に感謝。

9:10 登山開始

上ノ原登山口

林道がしばらく続いてから登山道に入る

軽トラのお兄さん曰く、上ノ原登山口はあまり使われないらしい。ほとんどは少し南の武尊神社から登るのだそうだ。

 

だからだろう、登山道はやや不明瞭で、道標はごくたまに巻いてあるピンクテープのみ。浅い沢と何度も交わりながら人気のない谷間を遡っていく静かな道、先々週の谷川岳の混雑を味わった後では非常に心地よい時間だった。本来登山はこうあってほしい。

 

踏み跡が消えかけるぐらいには使われていないようだ

麓では紅葉がピーク

やっと現れたピンクテープに安堵

平地に出て一息ついた後、尾根へ取り付く登りが始まる。この登りはありふれた斜度だが、足掛かりが少ない土ベースの道でグリップを利かせづらい。登山靴がおろしたてなのもあって若干苦戦した。

目指せ尾根

尾根へ出たら看板が。ここから右へ

尾根をしばらく進んでいくと展望が開けてくる。

剣ヶ峰山と西峰

ここで武尊神社からのルートと合流。武尊神社から登る人はやっぱりそれなりにいるようで、一気に人気が増えた。これはこれで安心感はある。

手小屋沢避難小屋はこぢんまりしていた。あくまで緊急避難用

、木漏れ日の尾根

そして、穂高山頂(沖武尊)へ向けた最後の上りが始まる。

ここは鎖やロープが連続する区間だったのだが、特徴として岩の表面がなめらかでホールドが少なく、鎖を両手でつかまなければならない場面が多くて困った。できれば鎖だけに体重を預けることはしたくないが仕方ない。せめてもの抵抗として、あらかじめ鎖の強度を確かめながら登っていった。

なお、このホールドの少なさは山全体で共通しているらしく、川場剣ヶ峰近くの鎖場でも不動岳でも苦戦を強いられた。

最初の鎖場

ロープは体重預けたくないから見なかったことにする

ロープは体重(以下略)

見た目がいかつくてもホールドさえ多ければ楽

岩の裂け目に垂れた鎖をほぼ垂直に登る最後の上り(撮り忘れた)をクリアし、登頂!

登れ~


11:54 登頂

普寛行者が開いたことで武尊山御嶽信仰に組み込まれたそうだ

剣ヶ峰山・西峰方面

尾根のアップダウン・まばらに生える木・細長い池塘ジオラマのようなワクワク感

登山口からスタートできたこともあって体力はまだまだ十分にある。ここから前穂高までの稜線歩きと不動岳までの鎖場を満喫しに山行を再開。

日本武尊

この細長い池、風景のいいアクセントだよな・・・ん?

実は道だった

奥に見える川場剣ヶ峰、ピークが鋭角なんだが

川場剣ヶ峰の手前にもちょっとしたピークがあり、一度はチャレンジした。だが、鎖無しで細い岩場を何度も登らされるので、途中で怖気づいて巻き道へ戻った。

この地点で撤退。この先はちょっと危なそう

幸い、巻き道を進んでいった反対側からの登りは比較的短かったので、そちらから登ることに成功した。登った先には社が。

ピークから見た川場剣ヶ峰。ひええ

肝心の川場剣ヶ峰の方は、道らしき箇所がロープで封鎖されていたので大人しく巻き道へ。反対側には笹薮が広がっており、そもそも道が無かったので巻いて正解だった。

道が無い。それでも上りたいなら藪を漕げって感じか

実質通行禁止なのに地図には破線ルートが引いてある。最新版の地図なんだけどな。

 

なお、別角度からみた剣ヶ峰は山頂が異様に平らで、ツェルトのごとき形をしていて面白かった。

水平

ただならぬ威圧感のある稜線を圧倒されながら歩き終わり、ようやく前武尊に到達。

 

13:18 前武

前武尊にも日本武尊像が

ここからは不動岳へ向かって岩峰群の鎖場を辿りながら下りていく。人生で初めての破線ルートチャレンジだ!

 

待ち受ける岩峰

 

このルート、たしかに破線ルートである理由はよく分かった。沖武尊への登りを超える険しさの岩場、しかもホールドがほとんどないところを鎖を頼りにガシガシ乗り越えていく必要がある。それなりに高度感もあり、終始気を抜けない区間だった。

 

正面の大岩。直接登るわけではないが、圧迫感で威圧してくる

鎖一本目からこれ

登り終えても気は抜けない、今度は下り

岸壁をトラバース。手がかりが鎖しかない

振り返って

最後の上り。一枚岩の急坂

無事クリア!
破線ルート初踏破に成功だ。

(これが破線ルートなら剱岳別山尾根はどう考えても破線だよな・・・)

ここを突破したのか

不動岳のピークは分からないまま過ぎてしまったらしい。たぶん↑の写真を撮った見晴らしの良い岩だったと思われる。

 

その後は川場尾根の下りに移った。

秋の川場尾根、本当におすすめだ。

緩やかで木の根や石につまづかない歩きやすい道、木々の紅葉が楽しめ、そしてところどころにある地蔵や碑で山岳信仰の雰囲気を肌に感じられる。険しい岩場で肝を冷やした後だからこその安堵感もあって穏やかな時間だった。

鮮やかな紅葉

素敵な下り

そして登山道の終点、旭小屋に到着。山行は概ね完了した。

旭小屋

橋の先は車道

15:00 車道に出る

ここから川場温泉までの歩きが本当に長かった。

おろしたて登山靴の硬いソールによる疲労が溜まっていてもうペースが出せず、1時間半かけてようやくバス停に辿り着いた。

さすがに上りのときのように車に乗せてくれる人が運よく現れることもなく。登山後の汚れた装備の人を乗せたくはないだろうし、国道のど真ん中だし。

 

途中で日帰り温泉をやっている小住温泉も見かけたが、最後の楽しみにするためにスルーして歩んでいった。

 

16:24 川場温泉口バス停

川場温泉センターいこいの湯へ。

温泉でリフレッシュ。その後はちょっとしたミスで沼田駅行のバスを逃してしまったため、道の駅田園プラザまで歩いて行って買い物をしてから帰還したのだった。結果、この日の歩行距離は34.2kmに。もうちょいでフルマラソンだ。

見惚れる月。iPhone SE2ではうまく写せないのが残念

沼田駅に辿り着いたころにはすっかり日は暮れ

 

振り返り

おろしたて、GK88

今日が初陣だった登山靴GK88だったが、初めて履いたとは思えないぐらいに足に馴染んでいてほとんど違和感がなかった。

先代と同じキャラバンだし、なんならアウトソールもヴィブラムの同じ型だからだろう。ハイカットに関しても足を邪魔する感じはなく、適度に足首をサポートしてくれて安定感が増すのを感じた。

思惑通りスムーズに移行できてよかった。

 

ただ、完璧とはいかないもので、問題点がないではなかった。

  • ソールのガッチガチさで足が疲れた。先代も最初はこんな感じだったので、しばらく履き慣らせば軽減するだろう。
  • 足先に若干の遊びがあり、タンの布が余って足に当たった。付属のハーフインソールを入れて足先を狭くしてみようと思う。

工夫して変化に適応しつつ使い込んでいこう。

 

総括

武尊山のたくさんの側面を味わうことができ、大満足の山行だった!

 

先々週の谷川岳といい今回の武尊山といい、上州の山は稜線も展望も優れていて、しかも東京から電車で行きやすくて大好きになった。

 

次はどこに登るか。金峰山瑞牆山は今年中、雪が降る前に行けるかな。