思念の滝壺

山に登る。

剱岳・立山登山録 ①一日目:剱岳アタック

はじめに

 

8/11(金)から8/13(日)にかけて、室堂を起点として剱岳立山・奥大日岳を登ってきた

 

一日目に剱岳、二日目に立山縦走、三日目に奥大日岳ピストンで帰還という日程だった。

 

行程図。なにせ初めてなので下手

 

全部まとめると長くなりそうなので、日ごとに分けてエントリを書いていくことにする。今回は一日目、剱岳アタックの記録!

 

(なお、事前の登山計画は以下のエントリに書いていた。計画通りに運んでびっくり。)

trthff.hatenablog.com

 

 

一日目山行録

 

前日夜から高速バスに乗り、はるか室堂まで辿り着いたときには午前7時。

 

室堂ターミナルは施設がよく整備され、登山の拠点というよりは観光地として大きく栄えているようであった。

 

一大施設、室堂ターミナル

登山届を出しがてら係員の方の話を聞くに、連日15時くらいから夕立が激しく降っており、剱岳に挑戦するなら気を付けてということであった。自分は15時に剱沢に戻る前提で予定を立ててきているので、それを聞いても挑戦の意思は揺らぐことはなかった。日々のトレーニングはここでタイムを稼ぐためにある。

 

7:30 出発

 

日焼け止めもそこそこに出発すると、朝7時にも関わらず圧倒的な日照り!サングラスも帽子も無しでここに来たら酷いことになりそう。

 

目前に立山がお出迎え

室堂から雷鳥沢にかけての道は、石畳と石階段がよく整備された遊歩道になっていた。周囲のおおらかな景色と合わせて牧歌的な雰囲気を醸し出し、まさしくアルプスの様相だった。

 

広い石畳、ぜいたくだあ

ただし、そんな中に煙をモクモクと吐き出し続ける地獄谷、硫黄化合物をふんだんに溶け込ませていると思しきミクリガ池が混じって風景に変化をもたらし、散策して飽きないフィールドになっている、それが室堂のようだ。

 

ミクリガ池、綺麗だが生物が住めなそうな色をしている

地獄谷。近くは常にゆで卵の匂いが立ち込める(硫化水素)。奥には大日岳&奥大日岳も。

 

雲が全くないおかげで、室堂からは立山、奥大日岳をはじめとして周囲の山々が360°一望できた。あまりにも快晴のため全く遠近感がなく、なんだかミニチュアかジオラマのようにでも見えてくるから不思議である。

 

雷鳥沢キャンプ場から伸びる剱御前小舎への道。

十字の移動路が特徴的な雷鳥沢キャンプ場の先には上りが待ち受ける。ここを越えなければ、剱岳はそもそも見ることすらかなわない。テント泊装備は重いがはりきっていくしかない!

 

登る途中に振り返って。ダイナミックな地形で面白い

奥大日岳と富山湾。堂々たる山容

なにせ景色が良いので登りが苦にならない

夜行バスでそれなりに寝れたこともあって足はよく動き、かなりタイムを短縮して剱御前小舎に到着。この時点で8:56。

 

 

そして、尾根に上りつめたことによってついに剱岳を視界に収める!

 

ついに見えた剱岳...!ラスボスの風格

改めて正面で剱岳を見るとかっこいいことかっこいいこと。

まさしく針山のような鋭利で峻険、威圧感を放つ山容。そして室堂からは直接見えず、ある程度の上りをクリアして初めて見ることができるその立ち位置。まさしく室堂山域のラスボスだ。

 

多くの高山は植生の中に岩稜がアクセントとして走っているイメージだが、剱岳はその真逆、岩が全てを支配し、かろうじて植生が張り付いているといった様相である。

 

しばらくその威容に見入りつつも、剱岳アタックの拠点となる剱沢キャンプ場へ向けて下っていった。

 

山頂へ続く道が見えるが、あまりに激烈で笑ってしまう。本当にこれを登るのかw

剱沢キャンプ場。剱岳を一望できる、あるいは剱岳に見下ろされている

9:20 剱沢キャンプ場


剱沢キャンプ場に辿り着くやいなやテントを張る。ここから剱岳山頂までは一直線のピストンなので、アタックザックに切り替えて大幅に軽量化を達成。困難と聞く多数の鎖場、少しでも突破しやすいように工夫していく必要がある。

 

3回目にして完璧なテントの張り方をマスター

 

設営そのものは20分ほどで完了、9:54に出発。最高のコンディション、剱岳へ挑戦するまたとない機会を最初に与えてもらった幸運を最大限に生かす!

 

と意気込んだのも束の間、一つハプニングが発生。水を入れていた2Lペットボトルに穴が空き、水が全て流れ出してしまったのだ。ペットボトル、アタックザックのどちらも底が薄いため、地面に置いた際に傷がついてしまったのだろう。

 

今までなかったことなので一瞬焦ったが、ちょうど剣山荘に着いたタイミングだったことが救いだった。500mLの飲み物を3本買うことでなんとかリカバリーに成功した。今回は助かったが、ペットボトルの扱いについてちょっと考え直す必要がありそうだ...

 

気を取り直して剣山荘を出発、いよいよ道が険しさを帯びはじめる。

 

剱岳への挑戦は早朝に出発する人がほとんどなのだろう、下ってくる人と大勢すれ違う一方、上りの人はかなり少なかった。

1番鎖。ここは鎖を使わずに登れる

2番鎖。トラバース気味で高度感も少しある

一服剱を振り返って。ほっと一息つける数少ない場所

4番鎖。まだ優しい

正面に剱山頂、左に前剱

6番鎖は下り。アップダウンが激しい

7番鎖からは、いよいよ剱岳が本領を発揮し始める。

ほぼ垂直でとっかかりも少ない一枚岩を、鎖と鉄棒の足場を頼りに登っていく。

7番鎖、平蔵の頭。3点支持、3点支持、3点支持...

8番鎖にいたっては写真が残っていない。7番鎖よりは怖くなかったはずだが、撮っている余裕がなかったのだろう。

 

そしてついに、9番鎖「カニのたてばい」が眼前に立ちはだかる。

カニのたてばい。一般登山道の究極形

7番鎖を三回り険しくしたような垂直の岩場!これの存在を知っているから覚悟して臨めるものの、知らずに直面したらやばすぎて登るのを諦めそう。

 

鎖に全体重を預けず、どこまでも三点支持を徹底しながら下を見ず(ここ重要)、目の前のホールドだけに意識を集中してゆっくり登っていった。

 

それだけ慎重にやってもやはりこの険しさ、完璧とはいかないようで、途中で一度鉄棒にかけようとした足が滑った。もう一度踏ん張って足をかけなおすか、それとも一段下に降りて仕切り直すかの選択を迫られ、はじめは一段下に降りることを選択した。

しかし、足を降ろして下を探ってもホールドは心もとなく、体勢が安定する保証がなかった。

ここで方針を転換、力を入れて体を再度持ち上げ、なんとか一度滑った鉄棒に足をかけ直した。

筋力に余裕があったから複数の選択肢を冷静に探れたが、一度目で滑らないよう確実に足をかけられるのが本来のベストなのだろう。

 

そんな出来事はありつつも、なんとかカニのたてばいを突破!それ以降は山頂までゆるやかな道で助かった。

 

進んできた尾根を振り返る。険しすぎるって

とんでもなく急登らしい早月尾根

そして登頂!

 

12:15 剱岳山頂

剱岳神社。参拝の最も困難な神社なのでは?

真正面に立山

北アルプスの山々が見渡せる。こういう山座を同定できるようになりたい

剱岳神社へのお参りを達成し、しばらく休んでから下りへの道に移った。

 

下りに入ってさっそく訪れる10番鎖場、「カニのよこばい」はカニのたてばいと並んで称される難所、再度集中力を全開にして臨む。

 

はじめにほぼ垂直に下り、次に断崖絶壁を鎖を頼りにトラバース

後半のトラバース区間へ入る直前が特に危険だ。鎖をつかみながら崖の向こうへ足を降ろしていき、足場を確保する。確保さえできてしまえば、あとは両手で鎖を掴み、両足で足場を踏んでまさしくカニが横へ這うように進んでいくのみである。

 

確かに高度感はあったし、足場を確保できるまでの不安はあったが、個人的にはカニのたてばいの方が怖かった。これは個人差がありそう。

 

その後は、めっちゃ長いハシゴを下りたり

 

トイレというにはあまりに心もとない建物を横目に通り過ぎたり

 

12番鎖・13番鎖は前剱へ向けて登り返す区間だったり

 

して剣山荘まで帰還した。

人間の生きられる場所に戻ってきた

14:30 剱沢キャンプ場帰還

自分のテントに帰還してほっとする。

 

大いに活躍したヘルメットとアタックザックに感謝を込めて

ビール、美味くなるに決まってる

剱岳への挑戦に成功して思うことは、まず一番に感謝だった。

素敵な天気の中登らせてくれてありがとう、威容を惜しげもなく見せてくれてありがとう、岩場を登る経験を積ませてくれてありがとう...

感謝と敬意が行き着いた結果、これ以降、心の中で剱岳を剱先輩と呼ぶ謎のムーブメントが発生した。

 

日没まで、時間帯とともに表情を変えていく剱岳を見ながらまったりしていた。剱沢キャンプ場は塩素消毒した水を提供してくれているため、飲料水に事欠かないありがたいキャンプ場であった。

雲に包まれ、さながらラピュタ

夕焼けもまた良い

早朝、剱岳を登るライトの列

放射冷却で冷え込む中、明日の立山縦走へ向けて眠りについた。

 

二日目へ続く!

 

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