はじめに
2/10(土)から2/11(日)にかけて霧ヶ峰へ行ってきた。
これが私にとって初めての本格的な雪山登山だった。当初の目的(霧ヶ峰と美ヶ原をつなぐ)は達成できなかったものの、雪に包まれた山々の雄大な景色を楽しみつつ、雪を漕いで歩くハードワークの経験も積めた貴重な山行になったので記録する。
計画
計画はかなり野心的だった。
霧ヶ峰と美ヶ原は「中央分水嶺トレイル」という登山道で結ばれているので、そこを踏破したい!と思っていた。そこで、1日目は霧ヶ峰の車山を登ったのちにヒュッテみさやまで宿泊し、2日目にトレイルを歩きぬく計画とした。冬季の美ヶ原はバスがない&タクシーも上まで登ってきてくれないため、ふもとの三城牧場まで下りてタクシーで帰るつもりだった。
冬にほとんど歩かれない道だからトレースもないはずで、そんな道が20kmほど続く中を雪山初心者が行けるのかという大きな大きな問題が横たわっていたが、やってみないことにはわからない。危ないと感じたら並走する道路(ビーナスライン)を利用するつもりで出発した。
雪少なめ&標高低めとはいえ、初めての本格的な雪山であることには変わりないので、最低限必要だろう装備を新調した。
- 軽アイゼン。マウンテンダックスの6本爪。
- ワカン。エキスパートオブジャパンのHSスノーシューズL。
- ストック。LEKIのシェルパ FX.ONE カーボン。
- 手袋。Black Diamondのグリセード。
- ゲイタ―。ISUKA製
一方で以下のような装備は買わなかった。いずれもべらぼうに高いので、買うにしても次シーズンになりそうだ。
- 冬用登山靴。
- 夏用登山靴でも代用できると判断。今回程度の山行なら防寒機能がなくても凍傷になるようなことはない
- 12本爪アイゼン。
- 買うなら冬用登山靴とセットだし、今回使う機会は絶対にない。
- ハードシェル。
- 普段使いのダウンコートで代用した。重量はちょっとかさんだが許容範囲だった。
山行録
1日目
車山高原スキー場のふもとにはバス停があり、こちらは冬期でも路線バスが運行している。
茅野駅から最初の便に乗り込んで10:30ごろに到着。
なお、バスは現金支払い限定なので注意されたい。
10:50 車山高原バス停出発
3連休で天気も晴れだからだろう、スキー場は大盛況でリフトの待ち行列が延々と連なっていた。
それを横目にもくもくと登り始めた。私は自分の足で位置エネルギーを稼ぐんだ...!
車山までの道はある程度踏み跡がついていたとはいえ、登山靴で雪を踏みしめるのは初めての経験なもので、想像以上に体力をもっていかれた。
足を踏み出して体重をかけるたびに、雪が沈み込んで足場の高さも角度も変わっていく。そんな中でバランスを保って持続的に登っていくためには踏み込み時に体重をかけ過ぎないようにしなけらばならない。
自然と歩幅は狭くなり、スピードを上げるためには回転数を稼ぐ必要が出てくる。筋肉の疲れはそれほど感じないのに、心肺への負担が重くのしかかってきた。これが雪山の洗礼か。
そして夏道のありがたさというものを思い知った。夏道を速く歩けるのは、道の確かさ・固さを信頼して思いっきり踏み込めるおかげなんだと実感しきりであった。
途中からはゲレンデと並走する道を登ったりしつつ登頂!
12:10 車山
快晴で無風の絶好コンディションで、車山山頂の見晴らしも良い。慣れない雪中歩行の疲れを癒しながらしばらく景色を見つめていた。
雪化粧した八ヶ岳や富士山、北アルプスは夏山登山では見られない貴重な眺めだろう。
今日の宿泊地であるヒュッテみさやまへ向けて、西に車山を下りていった。
13:25 ヒュッテみさやま到着
ヒュッテみさやまは落ち着いた雰囲気のきれいな山荘で、ここで何泊でもしたいくらいに居心地がよかった。個室でゆったりできるし、ロビーや談話室の内装も素朴ながらほっこりとするしつらえ。
予約時に和室と洋室を選べるのだが、和室は埋まっていたため消去法で洋室にしていた。だがこれは結果オーライだったといえる。
洋室はログハウスの趣ある広々とした部屋でベッドも快適、懸念だった寒さもファンヒーターが備え付けられていたので全く問題なかった。そして翌日になって気づいたがロフトがあった。使えばよかったな。
蔵書にあったブルージャイアントを読みつつリラックスして就寝した。
2日目
6:30に朝食、トーストとコーヒーをいただいた。コーヒーもうまい。ずっといたい。
でも今日の行程は長いので名残惜しくも出発。
7:25 ヒュッテみさやま出発
玄関口に置いておいた登山靴が朝に凍り付いているという初めての経験。靴紐を意識的にきつく結んで歩きだすと、次第に溶けて柔らかくなっていった。
今日はこれから中央分水嶺トレイルを歩いて美ヶ原を目指すわけだが、トレイルには主要なピークが3つある。
- 鷲ヶ峰
- 三峰山
- 茶臼山
まずは八島ヶ原湿原のほど近くにそびえる鷲ヶ峰へ向けて登り始めた。意外なことに、鷲ヶ峰山頂までは踏み跡が続いていて、夏道ほどではないが楽に上がっていくことができた。こうも楽だとアイゼンもワカンもいらない。
8:25 鷲ヶ峰
ここまでは踏み跡があったので楽々だったが、さすがにこの先に踏み出す人はいないだろうなーと思って北の尾根へ歩き出してみると、案の定ノートレース(踏み跡なし)で少しがっかり。ここまでで予想以上に時間が経っていることも合わせて、ここで引き返す選択肢が頭をよぎった。
だが、せっかくの初めての雪山、踏み跡のあるルートだけ歩いていてももったいない。まっさらな雪原に自分だけの足跡を刻んでいこうじゃないかという思いで、少なくとも和田峠まではチャレンジすることに決めた。和田峠では冬期通行止め道路(ビーナスライン)に合流できるので、最悪そこをたどって八島ヶ原湿原まで戻ってくることができる。
鷲ヶ峰からの下りは、北向きで日光を受けていないせいか雪質が新雪に近く、膝ぐらいまで沈み込む中をラッセルしながらどしどし下りていった。和田峠手前では100mほどの登り返しもあり、ラッセルしながらの登りのきつさを初体験しながら突破した。
9:37 和田峠 撤退決定
トレースのない道、こんなにきついんだなあ。すでにかなりスタミナを消費している。このまま美ヶ原を目指すと、三峰山と茶臼山のそれぞれで500mほど、合計1000mは登ることになるのだが、さすがにそれはきつそうだ。目の前にある三峰山の高さに心折れたこともあり、ここで撤退することに決めた。
ここが引き返せる最後の地点、一度三峰山へ踏み込んだら美ヶ原まで行かなければならなくなる。その最中に動けなくなったらまずかった。そして、どの程度の体力消費で動けなくなるかの見通しも初めての雪山で立っていなかった。
迷ったら安全側を選ぶ。ソロ登山の鉄則。
ここから鷲ヶ峰を登り返すと、体力的にも撤退を決めた意味がないしバス時間にも間に合わなそうなので、横を走るビーナスラインを辿って戻り始めた。
冬期通行止めなので雪はそれなりに積もっていたのだが、幸いスキーの跡が走っていたのでそちらを利用させてもらいながら歩いた。
しかし、このビーナスライン撤退路が今回の山行の中で一番きつかった。足が沈み込む中延々と歩き続けて距離を稼がなければ、目的地は一向に近づいてこない。アップダウンが緩やかなので、上りはダラダラと長く続くし、下りは勢いで降りていけるほどの傾斜がなくて地道に歩いていかないといけない。
疲労もたまっていたので息が切れやすくなっており、頻繁にガードレールに座って休憩を取りながら粘り続けた。体力的にも精神的にもしんどい過程が2時間続いたので、八島山荘が見えたときには心底ほっとした。生きて帰れる~。
ここまで無事に戻ってこれさえすれば、遭難のリスクはまずない。時間にも余裕があったので、蝶々深山を経由してバス停まで戻ることに決めた。
13:02 蝶々深山
別のピークに寄るには時間も体力も足りない。車山乗越を越えて下山することに。
車山乗越からバス停までの下りは、ゲレンデと並走していることもあって勢いで降りていけて最高に気持ちよかった。足を思いっきり投げ出して踵で雑に着地すればいい、なんて幸せだろう。
13:47 車山高原バス停
バスまで1時間を残して帰還することができた。
レストランは大繁盛していて提供まで1時間待ちということで断念。
広々とした更衣室があったので悠然と着替えてからバスに乗れた。登山口には更衣室がないことがほとんどなので、トイレの個室や人目に付きにくい野外で着替えてばかりいるから新鮮だった。
バスで座れなかった分、電車は特急あずさにしてパパっと帰宅した。
振り返り
実際に通ったルートは以下のようになった。そのまま進んでたら美ヶ原着いてたんじゃない?という歩行距離だが、獲得標高とトレースの有無を考えると無理だった気もする。
ワカンの紐が緩んですぐに外れた
今回デビューしたワカンだが、力がかかるたびに下図の部分の紐が繰り出されて緩んでいき、すぐに外れてしまって使えなかった。トレイル断念の理由には、このワカンが使えないという不安要素も含まれていた。
メーカーにも問い合わせているところだが、この金具だけだと固定不足なのでなにかしら別の固定手段が必要そうだ。
山スキーに興味がわいた
ビーナスラインを延々と歩く間、目の前を伸びるスキー跡を見て、「この人は私みたいな苦労をせず楽々通っていったんだろうなあ」と思ってうらやましくなった。高低差の少ない長距離を踏破するツールとしてスキーがあってもいいのかもと思い、興味がわいた。
装備に関するもろもろ
- 手袋はかさばるせいか、ポケットに入れても一度落ちて紛失しかけた。しまうなら確実に
- スマホを取り出して写真を撮るときなどにまごつかないよう、ストックのひもにはちゃんと手を通しておく
- ストックワークは難しい
- 足の回転数に合わせようとすると疲れるし、かといってそれ以外に適したリズムがない
- どうするのがいいのか調べてみるか
- 雪山を登ると登山靴がめちゃくちゃきれいになることが分かった
- 新品みたいでうれしい
総括
冬の霧ヶ峰を存分に楽しめ、雪山入門を堂々と果たせた実りの多い山行だった!
(YAMAPでも日記をつけてみた)