思念の滝壺

山に登る。

北海道1週間レンタカーの旅!登山もあるよ ④休憩&十勝岳登山編

はじめに

北海道レンタカーの旅、4日目&5日目。

 

3日目はこちら。

trthff.hatenablog.com

 

4日目はここまでの疲れをとるために登山は中断、ゆったり観光に充てる。

5日目は大雪山を南に回り、十勝岳連峰主峰の活火山、十勝岳へチャレンジする!

 

 

4日目:9/19(火) 旭川ラーメン、牧場、そして青い池

 

この日は山に登らないので、しばらく車内でぐだぐだ二度寝。11時ぐらいから活動開始。長旅ではダラダラできる時間も必要だなあ。

旭川市内を流れる忠別川。いたるところにアイヌ語由来の地名があって良い

朝食兼昼食は、旭川ラーメンの老舗である『青葉』まで歩いていった。人気店だけあって、開店すぐの時間かつ雨模様の天気でもそこそこ人が並んでいた。

こういうクラシカルなラーメン、好きだけど東京だとなかなか見ない

昔ながらの王道醤油ラーメンという感じで見た目からそもそも好きだったが、スープの旨味がふくよかでかなり癖になる味わいだった。麺も適度な硬さで良い。

 

 

腹ごしらえが済んだら、明日登る十勝岳のふもとである美瑛方面へ向けて進んでいこう。

 

旭川の南、富良野との間にある美瑛町では農業が基幹産業ということで、牧場に寄りたいな~と思っていた。調べたら美瑛ファームの美瑛放牧酪農場という施設があった。

 

美瑛放牧酪農場

のんびり牛

柵付近に草が豊富に残っているからだろう、こっちに来てくれる

遊歩道が丘の頂上まで伸びている。一直線で象徴的。
(この旅で一番北海道を感じる写真かも)

丘から見下ろすパノラマ。

十勝岳連峰のいかつい山容も見える

なお、この後に牛たちを牛舎に戻す作業が行われていたが、戻されると分かったとたんに牛たちが一斉に放尿を始めるのが面白い光景だった。いや賢いけども。


一通り眺めた後は牛の恵みを享受する。

直売される牛乳はレベルが違うし飲むヨーグルトも傑作

店内ではラクレットトーストも提供されているらしいのだが、残念ながらこのときは品切れだった。

 

車内で飲んだ牛乳のおいしさにテンションを爆上げしながら、次は「青い池」を見に行くぞ!

 

美瑛の市街地方面から離れて南東の山奥へ入っていくと、ほどなくして「道の駅びえい 白金ビルケ」に辿り着き、その近くに「青い池」がある。なんとも身も蓋もない名前であるが、確かに見た目に関してはそうとしか形容しようがなかった。

うーん、青い

白樺林の窪地に後から水が流れ込んだ感じか

天気こそあまり良くはないが、その程度ではくすまない美しさをたたえた池だった。が、観光客の数こそもうすこし少なければもっとよかった...

 

さて、そろそろ観光も終えて明日への備えに入る。

ここまで毎日温泉に入っているので、なんだか風呂に入らないと気が済まなくなってきた。美瑛市街地にある銭湯に寄る。

美瑛唯一の銭湯、松の湯。

なかなかこういった町の小ぢんまり銭湯に入らないので、ボディソープやシャンプーが備え付けられていないのをすっかり失念していた。まあ今日は体を汚していないので、それでも十分清潔になった。

 

そもそも登山をしてたら入浴できない宿泊が常態化するので、入浴できるだけで幸せに違いない。

 

旭川富良野という有名地に挟まれた立地のせいだろうか、寂れ気味の美瑛中心市街地を横目に白金ビルケまで戻って夜を明かした。

美瑛駅。郷里の駅に似ていて親近感

待ってろ十勝岳

 

5日目:9/20(水) 台風上陸でもしてるのかい?十勝岳

 

十勝岳については、できるなら美瑛岳までの稜線歩きも楽しめればいいが、コンディションが悪ければピークまでの最短ピストンになるだろうな~という計画だ。

 

1日休んでパワーを充填、めちゃくちゃ張り切っているので3時ごろに起床。

 

十勝岳登山口である望岳台へ移動して登山を開始したときにはちょうど4時であった。

晴れの日中にここから眺めたい

望岳台からしばらくは広くて開けた砂&石の道、傾斜も緩やかでとっても優しいウォーミングアップだ。

 

少し登ってから後ろを見ると、見下ろした先に旭川・美瑛・富良野の夜景が直線状に並んで点在し、道北の地理を一瞬で把握できる乙な光景。

 

次第に日が出てくると、天気としては曇り模様だが、ガスは少なく登っていく先まで見通せる状態だった。旭岳よりも希望があるかもしれない!期待が胸に渦巻く。

 

 

十勝岳避難小屋ではちょっと怖い話があった。


私はこのとき、iPhoneの音声入力メモを試しに使っていた。念のため避難小屋を覗くと、早朝の薄暗さの中でも誰もいない様子がうかがえる。そこで「十勝岳避難小屋は無人」と口に出したのだが、メモに入力されたのは「十勝岳避難小屋は六人」。

 

音声認識の精度は高いけど、こんな間違いをすることもあるんだな~と思ってもう一度入力し直すも、またしても表示されるのは「六人」。何度試しても変わらない。小屋には誰もいないのに。

 

背筋が寒くなり、ちょっと急いで避難小屋を離れた。不安になって振り返るたび、そこには黒々とした小屋がひっそりと佇み、動くものは一つとしてなかった。

 

*1

 

 

ここまで登ってくる中で他の登山者はまったく見かけない。駐車場には複数車が停まっていたので、私が一番早く出発したということだろう。先の怪現象もあって心細いが、山を独占しているようで嬉しくもある。

 

植生が皆無で噴煙が吐き出され続ける、ワイルドな山々

 

途中で溶岩ベースの道に切り替わったりしつつ、着実に高度を上げてようやく稜線上に到達した。

 

ガスを縫ってかろうじて見える稜線。神々しい

左の旧火口らしき地形を見下ろす

前十勝らしききれいな三角と、その後ろに連なるいくつものピーク

 

横から吹き付ける風がガスを纏う


曇り模様の中でも、ここでは稜線の向こうまである程度見渡すことができ、十勝岳連峰のワイルドな山容を間近で堪能することができた。残念ながら十勝岳のピークは見通せなかったが。

 

そしてこの景色が今回の山行のピークである。稜線上では猛烈な風が西側(向かって右側)から吹き抜け続けていて、山体にぶつかった風が一気に高度を上げて大量のガスを生み出していた。

 

進むほどに見通しは効かなくなる。風に至っては体を煽られてまっすぐ歩けず、取り出したレインウェアが飛ばされかけて、着るのにも苦労するほどの強さだった。ついでのように鳴る轟音が不安を掻き立ててくる。

 

十勝岳までのピストンという短い行程ですら断念しかけるほどにすさまじいコンディションの悪さで、明らかに一昨日の旭岳を超えていた。それでも続行を決めたのは、風こそ強いがきっちり着込みさえすれば寒くはなく、短期決戦上等の軽い荷物で軽快に動けたからだった。

 

一度強くなった風はもはやまったく弱まる様子を見せず、当初の美瑛岳までの稜線歩きという予定は泡と消え去っていた。ピークだけは踏んで帰るという闘志に突き動かされ、6:17に登頂。

台風上陸でもしてるのかい?

山頂では岩陰に隠れることでようやく風から少し逃れることができ、そこでグミとカロリーメイトを食べて精神力とエネルギーを充填、休むのもそこそこに下山に入った。

 

湿った風が強く吹き付けるせいでレインウェアの表面は濡れ、少しずつ生地に沁み込みだしていたのだ。あまり休んでいると体が冷えるしより濡れも悪化する。さっさと人里に帰るのが吉だ。

 

下山に際しては、紛らわしい溝に誘導されて道を間違いかけたりしつつも、ルートを修正して上りよりもずっとマシなペースで稜線を脱出。これで風から逃れられる!と思ったら、どうやら麓でも早朝より天気が悪化していたらしい、霧と風は私に付きまとい続けた。

 

避難小屋あたりからは他の登山者とすれ違うようになり、先の様子を聞かれてはコンディション最悪ですと答えていった。途中でリタイアした人もいるらしかった。この状況では賢明な選択だと思う。

 

そして8:15、下山。またしても試練の登山であった。

 

 

あまりにも、あまりにも不完全燃焼だ。最初に登った羊蹄山こそ展望を楽しめたが、その後登った大雪山系の旭岳と十勝岳はどちらもガスの中。

まだ自分は大雪山の真価を見ることができていないのだ。晴れた展望の一つでも拝めなければ、満足して帰ることなど到底できない。

明日はトムラウシ山をピストンで登る予定だったが、今、体力は十分にあるし明日も明後日も登山指数はA、秋の好天だ...

...そうだ、トムラウシ山で止まらず、稜線を北へ北へ、今の自分に歩けるありったけの距離を進んだところで宿泊しよう!1泊2日の長大ピストンだ!

 

ということで予定を変更、明日・明後日は自分の力試しも兼ねたトムラウシ起点縦走チャレンジとなった。


 

明日の予定は決まったが、今日もまだまだ時間がある。

 

トムラウシ山登山の拠点となるトムラウシ温泉東大雪荘は、富良野から大雪山系を一気に南に回り込み、十勝川を北に遡上した先にあるため、他の大雪山系登山口からかなりの距離がある。

 

そちらへドライブしながら、道中の施設に寄る形をとった。

 

富良野ではワイン工場へ。

富良野市ぶとう果樹研究所。

施設の説明文に妙なユーモアが効いている


ロゼワインを買って後で飲んだが、かなり好みの味だった。なんなら白ワインよりも赤ワインよりもロゼが一番好きかもしれない。他の産地のロゼも試しに飲んでみたいところだ。

 

 

十勝川を遡上していく道では、全体的に土木施設のスケールが大きくて感動した。十勝岳連峰と東大雪に挟まれた山深い地形の中に、巨大な十勝ダムといくつもの橋や覆道やトンネルが張り巡らされているのだ。本当によく建てたと思う。それで進んだ先は行き止まり、観光地としてはトムラウシ温泉ぐらいに限られるから、採算が付くのかは微妙なところだけど、そういう問題じゃないのだろう。その先に暮らしてる人々は確かにいるし、なんならトムラウシ小中学校もあったからね。

トムラウシ小中学校、校舎が綺麗。総児童数20人くらいと予想

小中学校のあるあたりは、道の駅や宿泊用のコテージもあり、小ぢんまりしながらもよく整備されていた。

郵便局も兼ねる交流館

 

トムラウシ温泉へ進むにつれて道は次第に細くなり、そしていよいよ舗装すらなくなって砂利道になった。

 

砂利道の本格的な運転は初めてだったが、対向車がなかったので助かった。ガタガタ揺られながら東大雪荘へ到着。

堅牢そうな頼もしい建物

トムラウシの厳しい自然環境を悠々と耐え抜きそうな頼もしい宿舎で温泉に入る。

この旅で入った風呂の中で、ここの温泉の満足度が一番高かった。

浴室は広々、備え付けの馬油シャンプーは好きな香り、露天風呂は開放的で湯温もちょうどよい。こんな山奥にある秘湯がこれほどの高レベルだったとは、世界は分からないものだ...

 

夜を明かしたのは、ここからさらに奥へ進んだトムラウシ山短縮登山口だった。林道はさらに過酷を極め、30分ほど走ってようやく到達した。

 

この日の冷え込みはすさまじく、持ってきた車中泊用の寝袋では全く歯が立たずに寒さで目が覚めた。幸いフリースジャケットはじめ防寒着は豊富だったので、それらを着込んでからはなんとか休めたのだった。

 

⑤へ続く!

trthff.hatenablog.com

 

*1:せっかくのネタなので大げさに書いたけど、音声認識の誤学習が原因だと思う。何度も発音しても変換が変わらなかったということは、「むじん」という音の並びは正確に認識されていて、ただそれを「無人」に変換する辞書がなかったor「六人」の方が優先度が高かったのだろう。とはいえ、あまりにも状況に合致してる誤変換なものだから割と本当に怖かった。日の出前で薄暗いし。