はじめに
7/8(土)から7/9(日)にかけて、1泊2日で赤岳に登ってきた。真教寺尾根経由で。
全体として天気に恵まれず、険しい登山道と相まって試練の登山となったが、着実に乗り越えて経験を積むことができた。その中で反省点もあったので、それを含めて記録する。
登山計画
当初は一日目に赤岳まで登り、二日目は北へ縦走して横岳・硫黄岳・天狗岳を経由して稲子湯まで下山する予定であった。
そこで、
- 一日目は始発電車で清里駅からスタート、真教寺尾根を登って赤岳まで一直線に登って赤岳天望荘で宿泊
- 二日目は天望荘から縦走を始める
つもりで山荘の予約を行った。
これなら、最大の問題となる一日目の標準コースタイムが7時間。始発で清里駅に着くのが10時だが、そこからスタートしても十分に時間的余裕をもって山荘まで着けるだろうという期待のもと決定した。
結果的にその判断自体は合っていたが、八ヶ岳にアプローチするのは東側からより西側からの方がずっと良いっぽかったので最善の選択ではなかった。詳細は反省点の項目で後述する。
天気予報は一週間前から前日までずーっと曇り(やや雨)のまま。コンディションがあまり良くないというのは事前に予想されていたが、それはそれで自分の経験や力になるだろうということで予定は中止しなかった。
山行録
一日目
八ヶ岳って都心からかなり遠いと思っていたのだが、意外と現実的な時間で移動できてびっくりした。始発で朝早く出発したわけだが、前日は21時に寝たので睡眠時間は十分、登る準備は万端。
9:57 清里駅出発
天気はどんよりした曇り、濃い霧が立ち込めて雨が降ってもおかしくないコンディションであった。日差しが弱いおかげで涼しいという唯一の救いを噛みしめながら、舗装道からはじまる赤岳への道を踏み出す。
はじめは一般道(八ヶ岳高原ライン)をなぞるルートだが、写真からも分かるように道沿いに建物はほとんどなく、既に山の中といった雰囲気。清里駅を境界としてその南東が市街地、北西が山となっているらしい。そんな中をゆるやかな傾斜で登っていくため、ウォームアップとしてはちょうどいい。
美し森へは一般向けに整備された木道が続く。その後、羽衣池を越えたあたりから、道は少しずつ登山道の様相を呈し始める。
登っている最中、道沿いに開けた草原が現れて一気に気分も晴れる。登山道に草原なんて珍しい!晴れていたらしばらく寝っ転がっていたいぐらいだ。
と思っていたら、その先にスキー場のリフトがあったため、どうやらゲレンデだったらしい。確かに人工物以外であんな細長い草原はありえないか。
11:29 清里テラス
天気が優れないせいか、スキーリフト終点にある清里テラスにはほとんど人がおらず寂しい様子だった。それどころか、今回の登りでは終始全く他の登山者と出会わなかったので、ここですれ違った観光客だけが唯一の遭遇者となる。
主稜線上まで登ると他の登山者もある程度はいたので、たぶんこの真教寺尾根ルートがあまり人気ではない/一般的でないのだろう。その理由はルート終盤に思い知ることになる。
この辺から牛首山にかけては傾斜が大きくなり、一気に標高2000mを超えて高山の領域に突入する。
ここで一瞬だけカモシカを見かけた。かなり近い位置にいたらしく、物音がした方向を振り向いたらターンしながら奥へ消えていく黒っぽい姿が見えた。
曇りだけだったはずの天気は次第に悪化し、ついに強風が吹き始める。
風のせいで進みづらくなる物理的な被害よりも、激しい音で心を乱される精神的な被害の方が大きい。そんな中でも、樹林に入るたびに音が一気に小さくなるので、重なる葉の圧倒的防音効果に感心しながらすたこら登っていく。
12:16 牛首山
息はそこそこ切れているが、涼しいおかげで頭は全くヒートアップしておらず冷静そのもの。ここからさらに700m、十分に登れそう。
ただ、吹き荒れる風と濃い霧でモチベはかなり下がっていた。どうやら当日の天気とその山への印象ってかなりリンクするらしい。早速もう「晴れてるときにもう一回来てこの山の真価を知りたいなあ」と思い始めてしまっている自分がいた。
こうも天気が悪いときに登っていると無性にあったかいものが飲み食いしたくなってくる。温かい食事をとることは粘り強さに直に影響してくることを実感する。山小屋泊をするなら夕食朝食をつける、テント泊をするならバーナーを持って行くのはほぼ必須だなあ。
牛首山~赤岳の行程を半分消化したあたりから、真教寺尾根の核心部に差し掛かる。
極めて傾斜が急な岩場の中を、何度もクサリが連続しながら猛烈に登っていく。中にはほぼ垂直といってもよい区間もあり、あまり写真を撮っている余裕がないほどにヒヤヒヤした。
奥穂高岳の重太郎新道でもこれほどに激しい道じゃなかった。
なるほどこのルートに人が少ないわけだ、こんな半分クライミングに足を突っ込んだ登山道を登るくらいなら西側・南側からの安全なアプローチを選ぶのだろう。
まあ、自分としては、ビビりつつもスリリングで楽しい部分もあったのでかなり満足した。三点支持を徹底して、クサリにはなるべく体重を預けないよう、支点の一つとして扱いながら慎重に登っていった。
傾斜がゆるい区間では、油断して鎖に全体重を預けた場面があったのでそこは反省したい。
そうしてほぼ崖の区間を登り切り、ついに主稜線に到達!
西側からの風の吹き上げがすさまじく、コンディションはさらに悪化していた。
尾根を歩く途中、微妙に道を誤って目の前に歩けない崖が広がり、引き返す。私自身尾根歩きの経験があまり多くないこともあり、また視界が通らず進路が見通せないことも原因だったろう。
時間に十分に余裕を持っていたためにここで焦らずに済んだ。「最悪17時ぐらいに着いたっていいんだ、じっくり歩こう、迷ったら引き返そう」というメンタリティで進み、ついに赤岳山頂へ到達。
14:16 赤岳山頂
幸い宿泊地の赤岳天望荘まではさほど距離がない。20分ほど尾根沿いを下りていって頼もしい見た目の建物までたどり着いた。
14:38 赤岳天望荘着
快適に過ごせてありがたい山小屋だった。
- 温かいお茶が無限に飲める。
- 談話室が充実。こたつがある。マッサージチェアを試しに使ってみたら快適すぎて一瞬で意識が消えた。
- ご飯もおいしい。今回は体力に余裕をもって登れていたのでしっかり食べられたし、気持ち悪くもならず宿泊を満喫できた。
夕食後は談話室で明日のルートを検討していたが、このまま天気が荒れ続けるなら縦走は諦めて下山するのはありだなあと思い始めていた。風が酷い中でやせた峰を進むのは心もとないし、何より見晴らしがよくない状況で縦走したところで全然楽しくない。
ここでルートを再検討していて初めて、八ヶ岳へのアプローチは西からの方が良いっぽいことに気付いた。
東京から遠い側なので選択肢に入れていなかったのだが、よく考えるとJR中央本線での移動時間は大して変わらないし、そこから追加で登山口までの移動が必要なのは東でも西でも同じ。つまり登山開始時刻は西からでもそれほど遅くならないし、コースタイムは西からの方が明らかに短い。自分の検討不足に反省...
横にはロッククライミングの講習をやっている集団がいた。やろうと思えること自体がすごいよ岩登り、いや登山をやっている時点で自分も同類なのかもしれないが...
寝る際に、枕の真横ぐらいの位置に雨漏りしていたのだけ不満だった。フリースの袖は濡れるし音が気になって熟睡できないしでなかなかのストレスだった。山荘の人に言えばよかったか。
二日目
二日目、目覚めた瞬間に強烈な風の音が耳に入る。あ、だめそう。
ということで下山することにした。地蔵の頭から地蔵尾根を西に下り、行者小屋を経由して南沢をたどり美濃戸口バス停を目指すエスケープルートを選択した。
風は西から吹き上げていたので、西へ下りるのは不利ではあったが、コースタイムの短さ・帰りのバスの充実という条件が勝った。
7:00ごろ 出発
フリースジャケットの上からレインウェアをガチガチに着込んで出発!
真教寺尾根よりもずっとやさしい道で、特にヒヤッとすることもなく行者小屋までたどりつく。
行者小屋に着くあたりで、風が収まって少しだけ晴れ間も見え始める。山の天気はやっぱり気まぐれである。
だからといって尾根の天気が回復しているとは限らないし、景色が見渡せないことに変わりはないので、下山の選択は妥当だったと思おう。
その後は増水して少し難易度の増した南沢沿いを下りつつ美濃戸口まで帰還した。
9:40 美濃戸口帰還
八ヶ岳山荘ではお風呂に入ることができた、しかも貸し切り状態。当初のルートは完遂できなかったが、風呂に入るという目的は別の形で達成!
その後は10:20のバスに乗って茅野駅へ移動、特急あずさで帰宅した。
振り返り
一日目コースタイム
清里駅から赤岳天望荘までを計る。
- 標準コースタイムは7時間。
- 今回の山行は4時間41分。
よって、今回は標準コースタイムの0.67倍で登ったことになる。コンディションが悪い中、慎重に登ったのでこのぐらいになるだろう。満足。
反省点
西から登った方が良かった案件
先にも書いたが、西の美濃戸口からアプローチした方が
- コースタイムが短い
- 出発時刻もさして変わらない
- クサリ場などの高難度区間がない
で確実だった。
今回は傾斜のきつい岩場・クサリ場を登る覚悟を持って真教寺尾根に臨んだので問題なかったが、事前のルート検討はもっと幅広い可能性を見ておくべきだと感じた。
下山中、南沢でのルート間違い
南沢の渓流に沿って下りていくルートで道を間違えた。
途中で明らかに岩場の高低差が激しくなり、道も不確かになってきたため不信感が募っていった。最後に、下りたら登り返せなそうな段差に直面していよいよ「ここは正しい登山道じゃない」というアンテナが働いた。
一瞬「このまま進んでいけば登山道に合流するから下りてもいいんじゃない?」という魔が差しかけて本当に危なかった。登り返せないところを不用意に下りてはいけない。
そこで下りないという選択ができたのは良かった。
登山地図を見る限りでは、登山道は渓流の右側、さほど離れていない位置にあるはずだ。試しに右側の土手を少し登ってみたところ、すぐに正しい登山道に合流できてほっとした。
上の写真はどこで間違えたかを確かめるために引き返して撮ったものである。
この事故から反省することは
- (良い点)道の異常さに気付くアンテナはしっかり備わっていた。
- (悪い点)視野が狭くなっていてピンクのテープに気付かなかった。下山も後半になって油断していた。
といったあたりか。
滑りそうな岩を踏み、案の定滑る
飲食物
- 飲み物はいつもの2L+600mL+600mL構成。山頂付近が寒くて水分消費が抑えられたせいか、これで二日目の下山まで足りた。
- 食べ物は以下。
- 出発前に家でうどん
- 山荘での夕食・朝食
- ミルク飴をずっと口に入れながら登った
- 行動食としてカロメ・アミノバイタル
総括
山を楽しむという意味では不完全燃焼だが、貴重な経験が積めた山行だった!もっと天気が良いときに来て八ヶ岳の真価を知りたいところ。
8月に登る山の計画をそろそろ立てるべきか。