はじめに
6/17(土)から6/18(日)にかけて、一泊二日、テント泊で大菩薩嶺を登ってきた。
全体として、テント泊を経験する、という第一目的は十二分に達成できたが、出発地点は間違うわ熱中症にかかるわでなかなかに危ない山行だったので、楽しかったことも反省すべきこともひっくるめて記録する。
登山計画
今回の山行の第一目的として、「テント泊を初体験すること」があった。そのため、
- 難易度のあまり高くない山で、
- ふもとに近い、すぐに下りられる場所でテントを設営できる
ところとして、大菩薩嶺を選んだ。東からのアプローチは長めだが、いざ山頂に至ってしまえば、西へ下山するのはあっという間。おあつらえ向きなことに西側ふもと近くにテント場を利用可能な山荘が複数ある。
当初の計画として、
としていた。この通りに行けば、1日目のコースタイムは6時間40分、余裕たっぷりで我ながら完璧な計画だと思っていたのだ、当日に違うところでバスから下ろされるまでは...
山行録
初のテント泊ということで、リュックはこれまで使ってきた37Lのもの(TELLUS 35)をそのまま流用した。容量に不安はあったものの意外とぴったり収まった。なお、これは寝袋下に敷くシートを持って行かないという荒業によって実現できた。宿泊の快適さが必要ならもっと大きいリュックを新調する必要がありそうと思いつつ、家を出発。
大菩薩への東からのアプローチは、バスの便がかなり少ない。今回は8:50に上野原駅を発して松姫峠へ行く(はずの)便に乗った。
が、いざやってきたバスに表示されていたのは「鶴峠行き」。方向としては明らかに間違ってはいなかったからそのまま乗りはするものの、乗ってから地図で確認すると鶴峠は松姫峠よりも大菩薩嶺から遠ざかった位置にある。
おかしいなあと思ってバス運行情報を調べ直すと、同じ路線でも、
- 8:50発の便は鶴峠行き、
- 9:12発の便は松姫峠行き
だったらしい。交通機関の運行情報ってこういう分かりづらさある。単に自分の下調べ不足といえばそうなんだけど、でもちょっと納得しきれない不満もある...!
ここで山行時間は1時間以上増えることが確定、獲得標高も300mほど増え、当初期待していたゆるめの山行は望めなくなった。気合を入れていくしかない。
10:20 鶴峠出発
鶴峠では予定外の出発地点に戸惑って登山道入り口を見誤ったり、別のバスから続々下りてくる謎の集団(ボランティア?)を横目に見たりしながら出発した。
出発地点こそ押さえてしまえば、あとはひたすら尾根をなぞっていくルートなので迷うことはまずないだろう。
梅雨の時期であるものの天気は快晴、むしろ暑くすらあるので、涼しい森林の中を進む道がありがたい。
テント(エアライズ2)と寝袋(モンベル ダウンハガー800#3)を背負って2kgほど増えた荷物は、たしかにちょっと重いなと感じはするものの、足運びに大きく影響するほどではなかった。なるほどテント泊装備ってこんな感じなのか、これならやり通せそう。
鶴峠からしばらくは上りが続き、奈良倉山に到達したあたりからほぼ平地になる。それ以降は林道を沿うようにゆったりとした道が続き、松姫峠まではほぼ消化試合だった。
11:03 奈良倉山
ここまでのウォームアップで心拍が一番のネックだと感じていた。肺・筋肉に関しては調子が良いのだが、鼓動の速さがやけに気になる。そして、後々になってこれが大きく響いてくる。
11:27 松姫峠
ここまで、森の匂いが本当に良い。これまで登ってきた他の山でも同様の森林に囲まれていたはずだが、これほど際立っているのは初夏という季節柄だろうか。ちょっと焦って登りながらも確実に癒されている。
盛大に響くセミ達の鳴き声も、田舎で杉林が近くにあった実家を思い出して落ち着かせてくれていた。
そして、ここから榧ノ尾山まで、標高1400mほどをほぼ平坦に進む牛ノ寝通りが続くことになる。ずっと尾根沿いで高い標高を進み続ける道なのだが、残念ながら景色はずっと木々に覆われて開けなかった。まあそんなことは調べればすぐわかる情報だけど、なんとなくネタバレな気がして交通機関の運行情報ほど調べる気にならない。
道中で大マテイ山へ登る分岐があったが、ただでさえスタート地点が遠くなって時間が足りないのでスルーすることに決めた。現時点での体力でいえば登れるのだが、それで圧迫されたスケジュールの中、大菩薩嶺ピークまで500m以上の標高を、さらに慣れないテントまで背負ってやり通すとは思わない方がいいと感じた。
13:17 榧ノ尾山
地図を見ると、ここから石丸峠にかけて一気に500mを登ることになっているようで、ずいぶん偏った斜度配分だな~と思うが、自然に愚痴っても仕方がないのでいよいよエンジンをかける、ペース出して一気に登り切るぞ!
と意気込んだはいいものの、石丸峠までの行程を半分終えたところあたりで足が回らなくなってきた。少し負荷をかけて登るたび、心拍が急上昇して気分が悪くなり、立ち止まって小休止を取らないといけないほどに体調が悪化していた。
後から振り返れば、明らかに軽度の熱中症の症状である。思えば症状が本格的に出始める前から兆候はあった。普段は登っている最中でも比較的冷静で、今回はブログに何書くかとかサブタイトルどうしようかとか、いろいろなことが頭をめぐっている。が、今回はそういうことを考える余裕がなく、ずっと必死に足を動かしてばかりだった。
どうして登っている時点で気付かなかったのかといえば、主に以下の理由が考えられると思う。
- 装備がいつもより重いので、若干のしんどさは装備によるものだと思い込んでいて、自分の体調のせいだとは考えなかった。
- 水分はちゃんととっていた。だが、6月かつ快晴の低標高のため気温が高く、雲取山や甲武信ヶ岳に登った時よりもっと注意が必要という考慮ができていなかった。
この区間を登っているときは本当にしんどくて、山頂までたどり着けるか不安になるほどであった。写真を撮る余裕もないほどだったので明らかに写真の数が少なくなっている。
だが、ここまでの頑張りでタイムは稼いでいた。ここからコースタイム通りのゆっくり歩きに切り替えてもなんとか間に合うと判断、体が警告を出すたびに立ち止まって休みながらだましだましで石丸峠まで登り切った。間違いなくこの区間が牛ノ寝ルートの核心部だろう。
14:53 大菩薩峠
石丸峠からもそれなりに上りはあったが気合でこなし、ヘロヘロの状態で大菩薩峠に到達した。
なお、大菩薩峠と大菩薩嶺は別の存在。大菩薩嶺が最高地点だが、山頂は林に覆われて展望がない。景色という意味では大菩薩峠が優れている。
この辺で自分が熱中症であることに気付いてはいたのだが、ここにあった山荘(介山荘)に救われた。
日陰で座れるベンチと冷たい飲み物(太陽光発電で冷やしているとのこと)のコンボがめちゃくちゃ体調に効いたのだった。一気に復活してその後は足を軽快に動かせるようになったので、やっぱり自分の体力不足とか装備が重すぎたとかじゃなく、単純に暑さにやられていた。
そうして艱難辛苦の行程を乗り越え、ようやく目的の山頂に到達した。
15:40 大菩薩嶺山頂
山頂は見晴らしが効かないので、しばしの達成感に浸った後はすぐに下山行程へと移った。日が長いとはいえ、できるだけ早めに行動を終えなければ!
16:27 ロッジ長兵衛
暗くなる前に今夜の泊地までたどり着くことができた。介山荘での回復+下山のクールダウンもあって体調は回復し、テント設営を冷静にテストできる状態。第一目的は無事に果たせそうだ。
買ったテントはエアライズ2、フライシートの色はフォレストグリーン。
いざ設営してみるとあっという間、アンダーシートを敷いてからフライを張るまで10分ちょっとしかかからなかった。これなら、ペグダウンまでフルでやっても20分程度で済みそう、こんなにテント設営って手軽だったのね...!
着替え、荷物整理も済ませていよいよご飯タイム。
今回持ってきたご飯は尾西の五目ごはん、熱湯を入れたら15分で食べられるようになる。
これはかなり好みの味でおいしかった。米はアルファ化米というから味が落ちるかと思いきやしっかりと米を感じて、出汁の香りは控えめながら確かにあって食が進む。
なにより温かい米を山中で食べられることがありがたい、活力が出た。高山の尾根上なんかでこれを食べたら本当に頼もしそうだ。
ボリュームもそこそこあり、安心して眠りにつけるぐらいに満足することができた。
コンパクトで軽くてちゃんとおいしい。尾西のご飯シリーズ、これからもお世話になりそう。
食事も終えたのでテントに入ってまったり本を読んでいたら寝落ち、起きたころにはすっかりあたりも暗くなっていたので、寝袋を展開してそのまま眠りに落ちた。
日中の暑さから打って変わって夜はかなり涼しく、寝袋に加えて長袖シャツを装備してようやく丁度良い温度感になった。寝袋下に敷くシートはなかったが、幸いテント場の土が柔らかめで平坦だったので、少し寝つきは悪いもののしっかりと休むことができた。
おやすみ!
二日目朝
おはよう!
5時ぐらいに起き出して、かねてからやりたいと思っていた「山で淹れたてのコーヒーを飲む」を実行する!
清浄な空気の中、ちまちますすりながら味わうコーヒーは本当に美味かった。山登りは日常から離れる楽しさが注目されることが多いが、こうして自分の日常を持ち込んでギャップを楽しむのもまた一つの良さだと感じる。
残念ながら食事は昨日の分で切らしていたのでコーヒーだけで我慢、テントの撤収を始める。撤収には40分ほどかかった。たたんでバッグに詰めなおす作業が必要なので、やはり設営よりも時間がかかる。
6:46 出発
ロッヂ長兵衛からの下りは車道もからんで気楽な行程だった。昨日が過酷だっただけに、山行の反省に思いを巡らしながらゆるゆる歩けたのがありがたかった。
7:48 大菩薩峠登山口バス停
塩山駅からは特急かいじでササっと帰った。特急券分を支払うことに躊躇がなくなってきて、ああ自分も時間の方が優先順位高くなってきたんだなあと実感した一幕。
振り返り
コースタイム
二日目はほぼないに等しいので一日目だけ計算する。
標準コースタイムは8時間50分。
10:20出発で16:27着なので今回のタイムは6時間7分。
標準コースタイムの0.69倍のタイムになった。
熱中症によりペースがガタ落ちした区間もあり、身軽な日帰り山行よりも確かにペースが落ちているようだ。
テント泊、どうだった?
初のテント泊でテストしたい項目は主に以下の4つだった。
- 設営時間:山行時間の見積もりにもかかわってくる
- 寝心地:寝袋下のシートが必要かどうかに影響してくる
- 炊飯時の水消費:水の必要量見積もりにかかわってくる
- バーナーの持続時間:1缶でどれぐらいもつのか知っておきたい
それぞれの結果はこうなった。
- 設営にはペグまで含めても20分程度で済みそう。撤収は急いで30分、40分は見積もっておきたい
- 柔らかい土ベースのテント場なら、シートがなくてもしっかり眠れる
- 尾西のご飯は160mL、コーヒーには250mL程度なので、1Lも確保しておけば十分すぎるほど余る
- 出発前の試験運用+夜のご飯+朝のコーヒーまでは余裕でもった。ガス缶を振ると軽めでさらさらと音がするので、たぶん半分以下になっている
飲食物
- 飲み物
- いつもの500mL+600mL+2L構成。大菩薩峠で500mLペットボトルを追加で買い、ロッヂ到着時には1Lほど余らせた。
- 食べ物
反省点
- 第一反省点:出発地点の勘違い
- 第二反省点:熱中症に気付かなかった
第一反省点と第二反省点に共通するのは、テント泊の経験という第一目的にばかり目がいった結果、重要な「無事に山を登り切る」ことを軽視していた自分の油断だと思う。
ここまでそれなりに多くの山に登ってきて自信がついてきたが、それが慢心につながった初めての経験になった。これだけは二度とないように気を付けたい。そんな中でも、大マテイ山をスルーしようという決断ができたことに関しては不幸中の幸いだった。もし登っていたら大菩薩嶺の登頂は厳しかったかも。
その他こまごまとした反省点
- 今回サングラスを買い直し、グラスストラップをつけて首からぶら下げたのだが、ぶら下げながら登ると汗がついて使い物にならなくなった。
- 拭けるものが必要。
- 少なくとも登る間はつけっぱなしか頭にかけるかしまっておくかしないといけなそう。
- 虫が多かった。これまでは虫が少ない季節・場所にばかり登っていたため対策を意識しておらず、テントにも大量に侵入された。
- 防虫スプレーの類は必要。
- テントは少し外出する間でも網戸を閉めておくべき。
- 食べ物の量が若干足りなかった。アルファ化米やカップ麺のようながっつり食べられるものは2つ持って行きたいし、行動食もアミノバイタル2本+グミ程度ではエネルギーが切れた。
- 朝ごはんを家でがっつり食べて補填するのが荷物を増やさない良い解決法だと思う。
総括
アクシデントはありつつも最終的には無事にやり通した山行、大菩薩峠の景色は本当にきれいでおおらかな山だった!テント泊も想像以上に快適だった!