思念の滝壺

山に登る。

蓼科山登山~山頂から見渡す日本アルプスフルコース~

はじめに

3/16(土)に蓼科山に登ってきた。

前回の霧ヶ峰からステップアップした雪山の経験を積みつつ、晴れた山頂から見渡す日本の屋根フルコースを存分に楽しめたので記録する。

 

 

登山計画

蓼科山は無理なく日帰りできる山とはいえ、3月の雪山ということもあって出発時刻は早ければ早いほどいい。

蓼科山登山口へのバスは冬期には運行していないので、早朝に登山開始しようとすると必然的にタクシーを使うことになる。

 

行動計画はこれで決まった。

  • 前日に高速バスで茅野駅入り、ホテルで一泊する
  • 早朝5時30分にタクシーで蓼科山登山口へ、そこから登山開始
  • 蓼科山ピストン
  • 下山後は路線バスで茅野駅まで戻る。冬期は蓼科山登山口までバスが来ないので、プール平あたりまで下る

 

ということで登山開始。当日の行程図は↓のようになった。

赤線が往路、オレンジが復路。帰りは信玄棒道を経由してプール平まで戻った

山行録

朝4時には起床してお湯を沸かしたり朝食を食べたりとてんやわんや。5時30分ぴったりにホテル前に迎えに来たタクシーに乗っていざ登山口へ。

 

今年はすさまじく暖冬らしく、茅野市街ではすでに雪が解け切って全く積もっていなかった。これでは山の方も雪が薄くなっていそうだ。

見上げる八ヶ岳は心なしか白に欠ける気がしたものの、さすがにまだまだ雪山だ、油断せずに備えるべし。

 

冬の蓼科山は雪山初心者向けで優しいということもあり、やはりこの時期は登山者が多いようだ。タクシーの運転手さんいわく、先週あたりは早朝の登山口駐車場が車であふれかえり、停めることもままならなかったらしい。

 

今回は幸いなことにさほど人は多くなく、同じく山頂を目指す数人の登山者の会話が聞こえる程度の適度なにぎやかさだった。

 

駐車場までタクシーでひとっ飛び

蓼科山は女神山と呼ばれることもあるらしく、周辺には女神にまつわる地名が多い

 

準備を済ませ、軽アイゼンはいったん付けずに出発。道のコンディションが分かるまで様子見だ。

 

6:15 蓼科山登山口 出発

雪はよく締まり、踏み跡も明瞭

気温は0度前後、晴れた良好な天気の中を歩きだした。

 

道は人気ルートだからだろう、踏み跡がこれ以上ないほど明瞭に刻まれていた。加えて雪質が固く締まっていることもあり、ザクザクと音を立てながら夏道の感覚で歩けて快適だ。ワカンもアイゼンもこの段階では全く必要なかった。その後斜度が上がっていった際も、軽アイゼンを付けるだけで十分にグリップが効き、それ以上は全く必要なかった。

 

なるほど、蓼科山が初心者向けとされるのは、斜度が一定で危険個所がないからというだけじゃなさそうだ。踏み跡がしっかりしていてラッセルが必要ないことも大きいのだろう。

 

明るい樹林帯を楽しく登る

7時ちょうどぐらいには2110m地点に到達。出発地点からの標高差400mを1時間足らずで登ったことになる。夏道も真っ青なハイペース!

 

一度斜度が緩む

目指すピークが木々の間から

次第に朝日が差し込みだし、雪道をキラキラと照らし始める。それに連動するかのように登っている自分のテンションも上がっていく。足元は確かだし、雪景色は清浄だし、天気も良い。すべてが最高だあ。登るのを決めたのはたった3日前のことだったが、まさかこんなにコンディションが良いとは。

 

山頂に近づくにつれて次第に樹林がまばらになり始める。そろそろかと思って後ろを振り返ると、期待通りふもとまでの景色が一気に開けていた。

振り返ると南アルプス

八ヶ岳も。ダイナミックな稜線

樹林帯が完全に終わるまでの区間が斜度の最も大きい核心部だった。それでも6本爪軽アイゼンで登れないものではなく、さして苦労を感じずに突破できた。

 

山頂へ、ラストスパート

この斜度も軽アイゼンで無問題(雪さえ締まっていれば)

樹氷っぽくなってる!

山頂の溶岩帯。吹きさらしで風が強い

そして登頂!

8:03 蓼科山山頂

先行者が一人いたらしく、風で埋もれた道の中でも一組走る踏み跡をたどって山頂へ。

これでも雪は少ない方だろう

山頂からの眺めには息を呑んだ。

蓼科山八ヶ岳主峰群からやや距離を置いた独立峰であることから、八ヶ岳も、北アルプスも、中央アルプス南アルプスも、日本の屋根のすべてを遮るものなく見渡すことができた

なんなら、先日歩いた霧ヶ峰と、中央分水嶺を挟んで対極にある美ヶ原も立体感をもって見下ろすことまでできた。贅沢すぎるフルコースだ。

 

風は強かったが、登る際に汗をかかなかったおかげで全く寒さを感じず、しばらくの間立ち止まって景色に見入っていた。

はてなブログにぎりぎり載るまでトリミングしたパノラマ。
八ヶ岳南アルプス中央アルプスー御嶽ー乗鞍岳穂高連峰後立山連峰
すべてが視界に...!

八ヶ岳を見るのにこれほどいい位置もない

南アルプス。ここから見えるのは甲斐駒と仙丈だろうか

 

右奥に御嶽。このいかつさに惹かれる

北アルプス。大キレットも大槍もばっちり
下を見下ろすと左に白樺湖霧ヶ峰、右奥にトレイルが伸びた先に美ヶ原

北には浅間山。噴火警戒レベルが1になったら登りに行きたい

山頂には雪原の中にぽつんと蓼科神社奥の宮が。お参りしてからぼちぼち下山に入った。

冬でも溶岩がゴロゴロしていることがよくわかる



下山も軽アイゼンで全く支障を感じず、日が昇って気温の高い中をサクサクと下りていった。山頂でお話をした人は軽アイゼンどころかチェーンスパイクで登っていたので、コンディションに左右されるとはいえ蓼科山に重装備は必要ないとよくわかった。(12本爪アイゼンにピッケルでガチガチに固めて登っている人もちょくちょく見かけたが)

 

山頂から吹き降ろしているのだろう

明るい下り

9:46 蓼科山登山口 下山

想像以上に快適な道のりだったためあっという間に下山してしまった。

 

このままバスで帰っても不完全燃焼で終わるのは目に見えている。

...そうだ!バスに乗れるプール平までの移動を舗装道じゃなく登山道にしよう

 

ということで、蓼科山登山口から南へ向けて伸びる信玄棒道(信玄が信濃攻めのために作った軍用道)を辿ることに決めた。

踏み跡はなく、唯一スキーの跡が一組伸びるだけだったが、むしろそれは歓迎だった。前回の霧ヶ峰で紐が外れてうまく使えなかったワカンを今度こそ使いこなすチャンス。そしてラッセルで体力づくりだ!

 

信玄棒道へ踏み出す

ワカンリベンジ

途中からはスキー跡も別の方向へ消えていき、完全にノートレースの中を歩いていった。

 

自分だけの足跡を刻め

 

これもまた贅沢な時間で幸せだった。軍用道として作られただけはあり、道幅がとても広く日当たりが良い。武田家の軍勢が通った様子に思いを馳せながら、ほどよく締まった雪を踏みしめてのんびり下り歩いた。

 

ワカンも今回は大活躍だった。正しい装着法を実践したことで(振り返りで後述する)紐が外れることもなく、また緩むことも一切なく確実に浮力を稼いでくれた。

 

11:10 信玄棒道 終点

立ち入り禁止ねえ...

ほどなくして信玄棒道は終わりを告げる。厳密には終わっていないのだが、滝の湯川と並走し始めるあたりから先の区間は私有地となっており、立ち入りが禁止されている。

 

歴史にゆかりのある素敵な遊歩道を立ち入り禁止にすることに納得できない思いを抱えつつも、ここまでで満足はできたので舗装道に合流して残りの道を歩いた。

 

途中で見かけた蓼科諏訪神社にお参り。

第一の鳥居

第二の鳥居

帰りは15時ぐらいのバスに乗る気満々だったので、のんびり歩いて寄り道しつつ、残りの時間は蓼科温泉にでも入って過ごそうかな~と思っていた。

しかし、プール平にちょうど着いたあたりでバスが目の前に現れ、運転手さんが私に声をかけてくれた。なんと茅野駅行きの便であるという。そう、15時の便の一つ手前、11時50分あたりの便に間に合ってしまっていたのだ。

 

蓼科温泉に入りたい思いも少しあったが、バスを3時間待つよりはサクッと帰れた方がトータルで幸せそうだということで乗ることに決定。

 

17時には家に帰還するという圧倒的なスピードで行程を達成した。

茅野駅では鴨南蛮をいただく

霧ヶ峰クラフトハイボール。よかった

振り返り

ワカンの正しい使い方、習得

前回の山行で紐が外れてしまい使い物にならなかったワカン。

trthff.hatenablog.com

メーカーに装着法が合っているか問い合わせたところ、一つ大きな間違いをしていたことが判明した。

私は霧ヶ峰において、↓のような状態(工場出荷状態)のままワカンを装着して使った。その結果、力がかかるたびにバックルから紐が繰り出されていき、あっという間に緩んで最終的には外れてしまっていた。

正しくは、↓のように紐の終端を折り返してバックルに通し直さなければならなかったのだ。

これを実践して信玄棒道をラッセルしてみた結果、紐はガッチリ固定されて全く緩まず、最後まで確かな浮力を提供してくれた。

道具は正しく使ってこそだと改めて実感した顛末だった。

 

冬山で汗をかかないことの重要性

山頂では強風だが全く寒さを感じなかった。これはやはり、上りでほぼ汗をかかず、体が乾燥した状態で保たれていたおかげだと思われる。

冬山においては、激しく動いて汗をかきながらスピードを出すより、多少遅くても良いから汗をかかないように登ることが一番大事らしい。心得た。

 

ちなみに服装を記録しておくと、

  • 上半身は長袖インナー+ソフトシェル+ダウンコート
  • 下半身はスパッツ+3シーズンのトレッキングパンツ。

登っている際は暑くなったのでダウンコートを脱ぎ、リュックに吊るしていた。

 

ストックは自分には合わないかも

ストックを使わずに登ったが、支障がないどころか手ぶらの方が疲れがたまらず楽だった。信玄棒道をラッセルしているときもストックが必要とは全く思わなかった。

足で全体重を支え、手は重心のコントロールに集中した方がかえって重心バランスが崩れず、リズムも乱れないため疲れにくいのかもしれない。少なくとも自分にはストックは不要だということが分かった。

 

ツェルトを持っているなら支柱に使う用途もあるだろうが、今のところ持ってないからなあ。

 

その他個人的な反省

  • 前日夕方の高速バスに遅れかけた。ぎりぎり間に合ったので良かったが、バスは出発予定時間ぴったりに動き出し、遅れた者への慈悲が一切なかった。バスを使う際は(というか交通機関全部そうだが)時間に余裕を持たねばならない。
  • 山頂で手袋が風に飛ばされかけた。ストラップの類があると万全か

 

総括

山頂からの360度ビューを晴れの中楽しむことができ、道具や登り方に関する知見も確実に溜まった素晴らしい山行だった!

 

来週には屋久島遠征も控えている。そちらも楽しみだ。気温こそ高いだろうが防水対策は万全にしなければ。

冬の霧ヶ峰登山~中央分水嶺トレイル敗退、美ヶ原ははるか遠く~

はじめに

2/10(土)から2/11(日)にかけて霧ヶ峰へ行ってきた。

これが私にとって初めての本格的な雪山登山だった。当初の目的(霧ヶ峰と美ヶ原をつなぐ)は達成できなかったものの、雪に包まれた山々の雄大な景色を楽しみつつ、雪を漕いで歩くハードワークの経験も積めた貴重な山行になったので記録する。

 

計画

計画はかなり野心的だった。

霧ヶ峰と美ヶ原は「中央分水嶺トレイル」という登山道で結ばれているので、そこを踏破したい!と思っていた。そこで、1日目は霧ヶ峰の車山を登ったのちにヒュッテみさやまで宿泊し、2日目にトレイルを歩きぬく計画とした。冬季の美ヶ原はバスがない&タクシーも上まで登ってきてくれないため、ふもとの三城牧場まで下りてタクシーで帰るつもりだった。

冬にほとんど歩かれない道だからトレースもないはずで、そんな道が20kmほど続く中を雪山初心者が行けるのかという大きな大きな問題が横たわっていたが、やってみないことにはわからない。危ないと感じたら並走する道路(ビーナスライン)を利用するつもりで出発した。

計画ルート図

雪少なめ&標高低めとはいえ、初めての本格的な雪山であることには変わりないので、最低限必要だろう装備を新調した。

  • 軽アイゼン。マウンテンダックスの6本爪。
  • ワカン。エキスパートオブジャパンのHSスノーシューズL。

  • ストック。LEKIのシェルパ FX.ONE カーボン。

  • 手袋。Black Diamondのグリセード。

  • ゲイタ―。ISUKA

一方で以下のような装備は買わなかった。いずれもべらぼうに高いので、買うにしても次シーズンになりそうだ。

  • 冬用登山靴。
    • 夏用登山靴でも代用できると判断。今回程度の山行なら防寒機能がなくても凍傷になるようなことはない
  • 12本爪アイゼン。
    • 買うなら冬用登山靴とセットだし、今回使う機会は絶対にない。
  • ハードシェル。
    • 普段使いのダウンコートで代用した。重量はちょっとかさんだが許容範囲だった。

山行録

1日目

車山高原スキー場のふもとにはバス停があり、こちらは冬期でも路線バスが運行している。

茅野駅から最初の便に乗り込んで10:30ごろに到着。

なお、バスは現金支払い限定なので注意されたい。

車窓の白樺湖

スキー場のふもとなので施設が充実している
10:50 車山高原バス停出発

3連休で天気も晴れだからだろう、スキー場は大盛況でリフトの待ち行列が延々と連なっていた。

それを横目にもくもくと登り始めた。私は自分の足で位置エネルギーを稼ぐんだ...!

車山へ向けて伸びるリフト

登り始めて振り返ると大行列に

車山までの道はある程度踏み跡がついていたとはいえ、登山靴で雪を踏みしめるのは初めての経験なもので、想像以上に体力をもっていかれた。


足を踏み出して体重をかけるたびに、雪が沈み込んで足場の高さも角度も変わっていく。そんな中でバランスを保って持続的に登っていくためには踏み込み時に体重をかけ過ぎないようにしなけらばならない。

 

自然と歩幅は狭くなり、スピードを上げるためには回転数を稼ぐ必要が出てくる。筋肉の疲れはそれほど感じないのに、心肺への負担が重くのしかかってきた。これが雪山の洗礼か。

 

そして夏道のありがたさというものを思い知った。夏道を速く歩けるのは、道の確かさ・固さを信頼して思いっきり踏み込めるおかげなんだと実感しきりであった。

 

雪道を登る

八ヶ岳の北端、蓼科山

途中からはゲレンデと並走する道を登ったりしつつ登頂!

12:10 車山

快晴で無風の絶好コンディションで、車山山頂の見晴らしも良い。慣れない雪中歩行の疲れを癒しながらしばらく景色を見つめていた。

雪化粧した八ヶ岳や富士山、北アルプスは夏山登山では見られない貴重な眺めだろう。

車山神社

レーダー観測所

こっそり富士山

八ヶ岳の全容

北アルプスは雲をかぶり気味

今日の宿泊地であるヒュッテみさやまへ向けて、西に車山を下りていった。

ころぼっくるひゅって

ゆったり雪原歩き ゴールが近いと気楽
13:25 ヒュッテみさやま到着

ヒュッテみさやま

ヒュッテみさやまは落ち着いた雰囲気のきれいな山荘で、ここで何泊でもしたいくらいに居心地がよかった。個室でゆったりできるし、ロビーや談話室の内装も素朴ながらほっこりとするしつらえ。

落ち着くロビー

蔵書は山荘あるあるだが、これは結構多い方かも(ほかの部屋にもある)

予約時に和室と洋室を選べるのだが、和室は埋まっていたため消去法で洋室にしていた。だがこれは結果オーライだったといえる。

洋室はログハウスの趣ある広々とした部屋でベッドも快適、懸念だった寒さもファンヒーターが備え付けられていたので全く問題なかった。そして翌日になって気づいたがロフトがあった。使えばよかったな。

蔵書にあったブルージャイアントを読みつつリラックスして就寝した。

冬の洋室もぜんぜんOK

ロフト!

2日目

6:30に朝食、トーストとコーヒーをいただいた。コーヒーもうまい。ずっといたい。

でも今日の行程は長いので名残惜しくも出発。

7:25 ヒュッテみさやま出発

玄関口に置いておいた登山靴が朝に凍り付いているという初めての経験。靴紐を意識的にきつく結んで歩きだすと、次第に溶けて柔らかくなっていった。

 

八島ヶ原湿原。一面の雪原と、奥には車山

 

今日はこれから中央分水嶺トレイルを歩いて美ヶ原を目指すわけだが、トレイルには主要なピークが3つある。

まずは八島ヶ原湿原のほど近くにそびえる鷲ヶ峰へ向けて登り始めた。意外なことに、鷲ヶ峰山頂までは踏み跡が続いていて、夏道ほどではないが楽に上がっていくことができた。こうも楽だとアイゼンもワカンもいらない。

目指せ鷲ヶ峰

振り返って

御嶽信仰、ここにも発見
8:25 鷲ヶ峰

ここまでは踏み跡があったので楽々だったが、さすがにこの先に踏み出す人はいないだろうなーと思って北の尾根へ歩き出してみると、案の定ノートレース(踏み跡なし)で少しがっかり。ここまでで予想以上に時間が経っていることも合わせて、ここで引き返す選択肢が頭をよぎった。

 

だが、せっかくの初めての雪山、踏み跡のあるルートだけ歩いていてももったいない。まっさらな雪原に自分だけの足跡を刻んでいこうじゃないかという思いで、少なくとも和田峠まではチャレンジすることに決めた。和田峠では冬期通行止め道路(ビーナスライン)に合流できるので、最悪そこをたどって八島ヶ原湿原まで戻ってくることができる。

 

鷲ヶ峰からの下りは、北向きで日光を受けていないせいか雪質が新雪に近く、膝ぐらいまで沈み込む中をラッセルしながらどしどし下りていった。和田峠手前では100mほどの登り返しもあり、ラッセルしながらの登りのきつさを初体験しながら突破した。

ルートおまかせ選び放題、ノートレース

北アルプス、雲が晴れた
9:37 和田峠 撤退決定

トレースのない道、こんなにきついんだなあ。すでにかなりスタミナを消費している。このまま美ヶ原を目指すと、三峰山と茶臼山のそれぞれで500mほど、合計1000mは登ることになるのだが、さすがにそれはきつそうだ。目の前にある三峰山の高さに心折れたこともあり、ここで撤退することに決めた

 

ここが引き返せる最後の地点、一度三峰山へ踏み込んだら美ヶ原まで行かなければならなくなる。その最中に動けなくなったらまずかった。そして、どの程度の体力消費で動けなくなるかの見通しも初めての雪山で立っていなかった。

迷ったら安全側を選ぶ。ソロ登山の鉄則。

和田峠までは届いた

未練はある

ここから鷲ヶ峰を登り返すと、体力的にも撤退を決めた意味がないしバス時間にも間に合わなそうなので、横を走るビーナスラインを辿って戻り始めた。

 

冬期通行止めなので雪はそれなりに積もっていたのだが、幸いスキーの跡が走っていたのでそちらを利用させてもらいながら歩いた。

スキー跡。獣の足跡がいくつも並走している

しかし、このビーナスライン撤退路が今回の山行の中で一番きつかった。足が沈み込む中延々と歩き続けて距離を稼がなければ、目的地は一向に近づいてこない。アップダウンが緩やかなので、上りはダラダラと長く続くし、下りは勢いで降りていけるほどの傾斜がなくて地道に歩いていかないといけない

 

疲労もたまっていたので息が切れやすくなっており、頻繁にガードレールに座って休憩を取りながら粘り続けた。体力的にも精神的にもしんどい過程が2時間続いたので、八島山荘が見えたときには心底ほっとした。生きて帰れる~。

やっと見えた、八島山荘

ここまで無事に戻ってこれさえすれば、遭難のリスクはまずない。時間にも余裕があったので、蝶々深山を経由してバス停まで戻ることに決めた。

 

登るぞ~もう体力ほぼないけど

緩やかなピークなのに、ずっと遠くに感じる
13:02 蝶々深山

右奥の爆裂火口を囲むように連なるピーク

別のピークに寄るには時間も体力も足りない。車山乗越を越えて下山することに。

車山乗越からバス停までの下りは、ゲレンデと並走していることもあって勢いで降りていけて最高に気持ちよかった。足を思いっきり投げ出して踵で雑に着地すればいい、なんて幸せだろう。

きもちいい~
13:47 車山高原バス停

バスまで1時間を残して帰還することができた。

レストランは大繁盛していて提供まで1時間待ちということで断念。

広々とした更衣室があったので悠然と着替えてからバスに乗れた。登山口には更衣室がないことがほとんどなので、トイレの個室や人目に付きにくい野外で着替えてばかりいるから新鮮だった。

昨日にもまして列が伸びているような

バスで座れなかった分、電車は特急あずさにしてパパっと帰宅した。

 

振り返り

実際に通ったルートは以下のようになった。そのまま進んでたら美ヶ原着いてたんじゃない?という歩行距離だが、獲得標高とトレースの有無を考えると無理だった気もする。

実際にとったルート。赤が1日目、青が2日目前半、緑が2日目敗退後

ワカンの紐が緩んですぐに外れた

今回デビューしたワカンだが、力がかかるたびに下図の部分の紐が繰り出されて緩んでいき、すぐに外れてしまって使えなかった。トレイル断念の理由には、このワカンが使えないという不安要素も含まれていた。

メーカーにも問い合わせているところだが、この金具だけだと固定不足なのでなにかしら別の固定手段が必要そうだ。

山スキーに興味がわいた

ビーナスラインを延々と歩く間、目の前を伸びるスキー跡を見て、「この人は私みたいな苦労をせず楽々通っていったんだろうなあ」と思ってうらやましくなった。高低差の少ない長距離を踏破するツールとしてスキーがあってもいいのかもと思い、興味がわいた。

装備に関するもろもろ

  • 手袋はかさばるせいか、ポケットに入れても一度落ちて紛失しかけた。しまうなら確実に
  • スマホを取り出して写真を撮るときなどにまごつかないよう、ストックのひもにはちゃんと手を通しておく
  • ストックワークは難しい
    • 足の回転数に合わせようとすると疲れるし、かといってそれ以外に適したリズムがない
    • どうするのがいいのか調べてみるか
  • 雪山を登ると登山靴がめちゃくちゃきれいになることが分かった
    • 新品みたいでうれしい

総括

冬の霧ヶ峰を存分に楽しめ、雪山入門を堂々と果たせた実りの多い山行だった!

 

(YAMAPでも日記をつけてみた)

yamap.com

秦野駅から大山&塔ノ岳登山~試練の獲得標高3000m~

はじめに

2/3(土)に丹沢へ行ってきた。主目的は大山への登山だったが、それだけだと物足りないことは明らかだった。そこで思い切ってルートを前後に膨らませたところ、1日の行動量としては歩行距離でも獲得標高でも自己ベストのエクストリーム登山になったので記録する。

 

ルート

ルート計画はこんな感じ。

ルート図

主目標はまず大山である。今までも丹沢には合計3回登りに来ているが、大山にはまだ登ったことがなかった。

でも大山は標高1200m強、それだけ登ってもたぶん物足りない。

 

唸りながら大山周りの地形図を見ていると気づくことがあった。

 

まず大山の手前だ。秦野駅のほど近くから大山に向けて長い尾根が連なっている。市街地近くの市民に親しまれる低山から次第に標高を上げていくのは楽しそうだ。

 

次に大山に登った後。大山からはヤビツ峠に降りることができ、ヤビツ峠とはすなわち塔ノ岳表尾根の入口である。塔ノ岳にはいつも大倉尾根から登っていたので、表尾根経由で登れるのは新鮮だろう。

 

以上を踏まえて、秦野駅から歩き始めてアップダウンを繰り返しながら大山に登り、ヤビツ峠に下りてからダメ押しに塔ノ岳へ登るというルートに決定した。

 

まあ、日没前までには完走できるでしょ(楽観)。

 

山行録

6:52 秦野駅出発

いつもは駅でバスに乗り換えて登山口へ直行するわけだが、今回は趣向を変えて駅から歩き始める。秦野駅前はすっかり市街地なので、ここから山深い景色への変化を楽しめそうでワクワクしてくる。

天気は雲のほとんどない快晴で朝焼けが映える、ただし全体的にややかすみがかった感じ。

秦野駅、改装中のよう

朝焼けの中出発

今日のルート最初のピークは、駅からほど近い距離にある権現山だ。上の写真の中央左に見えているのがそれのはず。

山体が道路の間近にせり出した個所に入口を発見、さっそく山へ分け入っていく。

低山とはいえ、しっかり登る

気持ちの良い朝日

最初のピークにはさっくりとたどり着いた。地図を見る限りここが権現山だと思っていたのだが、現地の看板には「浅間山(せんげんやま」と書いてある。権現山の手前に、地図には書かれていないながら別のピークがあったというわけか。

 

そこから少し上ると真の権現山に着いた。こちらには展望台もあってよく整備されている感じ。

権現山

展望台が

富士山with秦野市

次のピーク、弘法山までもさして時間はかからない。この辺の山は分かりやすく信仰に紐づいた名前をしている。修験道にしては楽すぎる気もするが、麓の住民による山岳信仰の対象になってきたのだろうか。

 

庭園の趣

 

ここまではよく整備された低山、という感じだったが、次のピーク念仏山へ向かう道は少しずつワイルドになっていき、本格的な登山の様相を呈し始めた。この辺から市街地との距離が開き始めるようだ。

標識も山頂の整備具合も露骨に変わって面白い

高取山。奥には今日の第一目標、大山が

高取山の時点で標高はまだ556mでしかないのだが、意外と疲れを感じた。

ちょっと寝不足気味+予想以上にこの低山エリアにもアップダウンがあったことが影響していそうだ。でもその程度でへたれない体力はついているし自信もある、当初の行程を突き進むぞ~

尾根には送電塔や電波塔といった設備が多かった

ここまでの尾根歩きでも意外と時間は食うもので、気づいたら9時を回るころ。ここでようやく大山への登山道に差し掛かる。

杉材のいい匂い

荒れるを通り越して崩壊した道、何があった

 

大山頂上には阿夫利神社があるのだが、それに対応する形で、ふもとには阿夫利神社下社が構えている。今回のルートでは若干の遠回り(頂上に直接上った方が早い)なのだが、せっかくなので下社へも寄っていくことにした。

9:33 阿夫利神社下社

案の定、ここで人が爆増。低山歩きでは、地元の日課で山歩きしているっぽい人しか見かけなかったものだから、それとのギャップが大きい。

神社という大きな観光スポットもあるし、下社まではケーブルカーで楽々上ってくることができるからこその賑わいだろう。

90分もかからないぞ!

頂上登山口にはセルフお祓いシステム(?)もあって面白かった。100円払って置いてあるお祓い棒を振っていってねというやつ。

せっかくなので思い切りよく振ってから出発。

 

観光地化が激しいので階段が整備されてそうと勝手に予想していたが、意外にも山頂までの道のりは登山道然としていて登りがいがあった。登っている人はカジュアル勢の割合が高く、必然何度も追い越しを重ねながら登頂した。

 

10:30 大山

人が多い!塔ノ岳よりも丹沢山よりも鍋割山よりも多いよ。2月なのにこれって。いや、2月だからこそなのか?

なお、阿夫利神社社殿は耐久性重視といった風貌をしていた。立派さでいえば下社の方に軍配が上がるが、置かれた環境を考えたらそれは仕方ない。

強風に強そう

奥の院

今日の第一目標は大山登頂で達成されたが、ルート的にはこれでようやく折り返しといったところだ。ここからイタツミ尾根を経由してヤビツ峠へ下りる。まだまだ足は温存できているので、塔ノ岳表尾根もなんとかなりそうな見通しが立ってきた。

 

すばらしい富士山。表尾根も一望できる

丹沢名物、木道が出現

ヤビツ峠はローディも多く通るらしく、レストハウスにはサイクルラックが

想定よりも水分消費が多いのでヤビツ峠でコーラを買う。登山をしていると基本的にエネルギーが枯渇するのでコーラが五臓六腑に染み渡る。

ヤビツ峠から菩提峠までは、岳ノ台を経由して移動した。100mほどプラスして登ることになるが、踏めるピークはありったけ踏んでいきたいよなあ!?

11:45 岳ノ台

岳ノ台には展望台があり、確実に溜まっている疲労の中いいリフレッシュになった。

大山を振り返る。きれいな三角形だあ

奥に見えているのは蛭ヶ岳だろうか?きわどくて判別がつかない

菩提峠ではパラグライダーの影を見かけて楽しい気分に。

後で調べたら、ちょうどここにパラグライダーの滑走台があったようだ。

私もいつかやってみたいな何かしらのスカイスポーツ。

グライダーを準備しているよう

気分転換も済んだところで、いよいよラスボス、塔ノ岳へ向けた表尾根がここから始まる...

尾根への入口が分かりづらいので注意。この「日本武尊足跡」しか目印がない

二ノ塔から三ノ塔を見る

三ノ塔から塔ノ岳への道のりを一望。なかなかに絶望感がある

鳥尾山荘。大雪山忠別岳避難小屋と似た佇まいで親近感

三ノ塔から落ちた標高が新大日でようやく回復する

木ノ又小屋。立ち寄って休みたい誘惑に駆られる

振り返って。あんな遠くに見える大山から歩いてきたんだなあ

表尾根は、大倉尾根よりも登山の醍醐味を味わえるルートだなあというのが第一の感想だった。

大倉尾根ほどには階段や木道が整備されてはおらず、自然を歩いている感じが強い。そして、アップダウンが多い。大倉尾根は下り区間というものがほぼ存在せず、塔ノ岳へ向かって一直線に上っていく。それと比較すると表尾根は、三ノ塔で一度大きなピークに達したのち、それよりも低いピークを何度も上り下りしながらようやく途中で高度を回復する。

こういった要素は普段の自分にとっては非常に好ましく映るものだが、今回ばかりは違った。三ノ塔に登り切ったあたりでさすがに体力を使い果たしたのか、足に力が入らなくなってきた。その後にアップダウンがあるたび「勘弁してくれ~」といった気分でひいひい言いながら歩き、塔ノ岳へ向けた最後の上り区間ではいよいよ10歩歩くたびに立ち止まるような惨状であった。

大腿四頭筋が攣りかけるというのは初めての経験だった。いつもは最後までへばらずに粘ってくれる筋肉なのに。

 

それでも今日の第二目標塔ノ岳、きっちり登頂成功!

14:34 塔ノ岳

これを撮るのも3度目だ

ああ蛭ヶ岳

すべてを出し尽くした感がある。これ以上はもう登れん。体温もあまり上がらないので止まっていると冷える。すぐ下りへ移ろう。

 

そんな満身創痍の状態だったからこそ、下りルートにとった大倉尾根はまさに救いの尾根であった。

上り一辺倒ということは、裏を返せば下りに使えば一切の登り返しがなく、体力を消費しないということ。階段や木道が整備されつくしているということは、疲労が極まった状況でも足を踏み外すようなリスクが少ないということ。

その単調さが揶揄されてもいる大倉尾根だが、長大な行程を消化した後の下山道として使うと他の道では替えられない真価を発揮するということを思い知った山行だった。

 

なお、途中で足を捻挫しかけてひやりとした。被害が軽微で済んだのは靴紐をガチガチに締めて足首を固定していたおかげだろう。

前提として下りは紐をきつめに締めた方がよいというセオリーがあるし、それに加えて疲労で筋肉による制御が効きにくいだろうなと思ったので塔ノ岳山頂で締めなおしていた。

16:16 大倉バス停到着

自分で選んだルートながら、最終盤には「なんだこのルートは」「過酷すぎるだろ」などと口走っていた。でも、疲労の極致に達するほど力を出し切れる機会はそうそうないので、そういう意味では貴重で楽しい道のりだったことは間違いない。

帰ってきた...!

大倉バス停は便数が豊富なのですぐ帰れる

振り返り

30km歩いたし、3000m登った

厳密には2989m

行動時間も、歩行距離も、獲得標高も自分史上最高となった狂気の山行だった。

結果、消費カロリーも歩数も意味の分からない数値になっている。

なお心拍数はあてにならない。ランニングの時は正確に測ってくれるのに、登山になった瞬間ガバガバ計測になってしまう。

 

ルートを決めたときは獲得標高2000mぐらいだろうと思い込んでいたのだが、予想が大きく外れたことになる。序盤の低山や表尾根三ノ塔からのアップダウンが想像を超えていた。

 

冬の水分消費量じゃない

900mlの熱いお茶+500mlペットボトル×2本で足りると思っていたが、まったくもって足りなかった。

ヤビツ峠でコーラを一本追加補給したにもかかわらず塔ノ岳登頂時点で全水分を使い果たし、残りの水分量ゼロの状態で下山していた。

3000mも登ればそれはそうかという感じだし、気温が2月のわりに高めだったこともあるのかもしれない。

 

総括

秦野駅をスタートして2つの大ピークを踏むという変則ルートだったが、市街地から変わっていく風景と全体力を使い果たす経験を楽しめた新鮮な山行だった!

丹沢主脈縦走RTA 6時間47分 (大倉入口ー蛭ヶ岳ー焼山登山口)

 

はじめに

丹沢主脈ーー。それは、塔ノ岳に端を発して最高峰の蛭ヶ岳を通り、そのまま尾根を北になぞって焼山へ至る長大な稜線である。

 

前回丹沢山に登った時は、途中で主脈を外れて丹沢三峰の縦走に入ったので、蛭ヶ岳への未練が残っていた。

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今回こそは、一切の未練が残らぬよう丹沢主脈を駆け抜ける!

自分の体力試しも兼ねて、日程は日帰り、休憩も最低限の全力タイムアタックに挑む。ハードな登り初めになりそうだ。

 

レギュレーション

  • ルートは下図とする。
    • 大倉入口バス停をスタートして大倉尾根を北上、塔ノ岳から丹沢主脈を北に縦走する。焼山登山口バス停をゴールとする。
    • 黍殻山は分岐を見つけられなかったのでスルーした。
  • 装備はトレラン用ではなく普通の登山スタイルとする。ストックは使わない。

 

山行記録

1/13(土)に決行。

7:01 大倉入口バス停出発

朝焼けの丹沢山

登山口直結の大倉バス停でなく、登山口からちょっと遠い大倉入口バス停が出発点なのはただのミスである。

バス停の名前もう少しどうにかしておくれ。

 

当日の天気はおおむね晴れ、ただし気温はかなり低いのでレインウェアをアウターとして重ねて出発した。夕方からは寒気が流入して天気が崩れる予報なので、天候が持っているうちに駆け抜けたいところ。

 

塔ノ岳までの登りは木階段や木道の斜面をひたすらに登り続ける単調さから、巷ではバカ尾根と呼ばれているらしい。その名に違わず、とにかく体力だけを要する道だ。ここ2年間で登る力は鍛えてきているのだが、それでもきついのだからつくづく恐ろしい尾根である。

平坦地もちょくちょくあるのが救い

木道といえば丹沢、丹沢といえば木道(?)

9:15 塔ノ岳

あれが蛭ヶ岳かと思いきや、その手前にそびえる不動ノ峰だった

 

かなりペースを出せていたので多数の登山者を追い越した。試しにカウントしてみたのだが、山小屋周辺で休憩している人を除いて48組追い越していたごぼう抜きの爽快感はたまらない。

 

ここに至るまでに1200mほど標高を獲得しているが、その間無休憩(水を飲むときも歩きながら)なのでさすがにしんどい。

 

今回から導入したTHERMOS山専ボトルで熱いお茶を楽しみつつ、ブラックサンダーで糖分補給してから再出発した。タイムアタックなので時間が惜しい、飲食や物の出し入れもできるだけ時間をかけないようテキパキと済ませた。

 

丹沢山頂までは一度下ってやや上るが、塔ノ岳までに比べればなんということはない。蛭ヶ岳に備えて足を温存しながらサクッとこなす。

 

快晴の稜線歩き

10:03 丹沢山

 

塔ノ岳の時点で登山集団のほぼ先頭に立っていたのだろう、追い越し数は激減して塔ノ岳ー丹沢山間では2組に留まる。

それでも、登り全体の合計で50組追い越しという大台には乗ったことになる。だからなんだという話だが。

 

幸い塔ノ岳ほどは疲れていない、休憩は最低限にとどめ、いよいよ主脈の核心部である蛭ヶ岳へ向けての稜線に取り掛かる!

 

ここの稜線がかなりの曲者で、間に不動ノ峰というピークが一度挟まる関係上、下ってからの上りが2度も必要だった。足の疲労を最小限に抑えながら登ってきて本当に良かった。なにせここでもあまり足を止めずに歩き通すことができたのだから。

 

ようやくお目見え、最高峰蛭ヶ岳

11:11 蛭ヶ岳

 

やったぜ。

 

蛭ヶ岳は、最高峰という肩書きがありながらも登山者の姿が丹沢山に比べて少ない。やっぱり山塊の最奥部にあって気軽には登りづらく、山域を代表する名前を丹沢山に持っていかれているせいだろう。

 

正午を回る前にここまで来れているので、帰りのバス時刻には余裕をもって間に合う。とはいえタイムアタックなので、ほどなく下り区間に移っていく。

 

蛭ヶ岳からの下りも木階段

姫次まではそこそこ上りがあってきつかった、気持ちは下りモードゆえ

主脈最後のピーク、焼山

林道だあ~

13:48 焼山登山口バス停到着

14時も回らないうちにゴールできるとは思っていなかった。

うれしい誤算だが、帰りのバスは3時間後。

この時期の屋外でじっとしながらバスを待つのはかなり厳しいものがあった。自販機で温かい飲み物を買ったり近くのコンビニに入って暖を取ったりしながら寒さをしのいで帰還したのだった。

 

なお、バスに乗った直後に雪混じりの雨が降り出す。危なかった。

雨の車窓

タイム

7:01出発、13:48到着なので、タイムは6時間47分

標準コースタイム12時間55分の0.53倍のタイムとなった。

 

上り・下りの区間タイムも見てみると、

  • 上りは4時間10分で、標準コースタイム8時間の0.52倍
  • 下りは2時間37分で、標準コースタイム4時間55分の0.53倍

となった。ペースがほぼ一定で乱れていない。

 

完走した感想

けっこういいタイムが出せて嬉しい!というのが一番の感想。

普段の山行では標準コースタイムの0.6倍~0.7倍になることが多い。景色に見入ったり、写真を撮るために立ち止まったり、ゆったり休憩したりする影響でタイムが間延びしている。これらを最小限に留めて全力で飛ばしたらどれぐらいになるのかというのはかねてから気になっていた。

かといって、初見の山で景色を楽しまず飛ばすのはもったいない。なので、二度訪れたことがあり景色には馴染みがある丹沢山域でやったのだった。

 

初めて丹沢山を登った1年半前よりも持久力が格段に伸びていることも嬉しいポイントだった。当時は丹沢山頂で足がほぼ売り切れていたのだが、今回はそれよりも速いタイムで登っていたにもかかわらず、蛭ヶ岳を越えて下山しきるまで足が売り切れることがなかった。とはいえ疲れたは疲れたし、翌日は筋肉痛になったが。

 

 

積算上昇2264m!なお心拍数は計測値がおかしい区間が多かったのであてにならない(平均150ぐらいは行ってるはず)

 

反省・総括

  • いくら冬といえども、主脈縦走の長距離を900mLの熱いお茶+1100mLの水でやり過ごそうとするのは無理があった。もう1本500mLペットボトルがあると安心。
  • 冬は下山後のバス待機時間を考慮に入れる必要がある。暖を取れる場所は下調べしておく方が良いし、乾いた暖かい着替えも不可欠。

馴染みのある山なら、タイムを求めて全力で飛ばすのも一つの楽しみ方だと実感できた、新鮮な山行だった!

2023年の登山、全部振り返る

はじめに

年末企画、今年の山行をぜんぶ振り返る!

 

振り返り

1. 4/28 雲取山

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1~3月は完全に冬眠していて、4月も末になってようやく覚醒した。

初登山で行ったのは雲取山、そして鴨沢からの日帰りピストンである。

 

とにかく行程が長すぎて足が取れそうになった。冬のブランクがあったからなおさら。

 

尾根が若干禿げ気味なのが気になったが、春も始まったばかりで木の葉が落ちてるからなおさらそう見えやすいというだけかもしれない。

 

2. 5/4 甲武信ヶ岳

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雲取山に登った次の週には日帰り甲武信ヶ岳にチャレンジ。

雲取山で起こした深刻な靴擦れが治らないまま登るという無茶をやったがなんとかなった。人間頑張ればどうにかなる(精神論の発露)

 

奥多摩の山としてみると、山格では金峰山の方が、標高では奥千丈岳の方が上なので地味めな存在だということを後で知った。けどそんなこと関係ないね。登って楽しかったから。三州の境目の分水嶺という意義も名前の圧倒的なセンスの良さも他にはない。

 

3. 6/17-6/18 大菩薩嶺

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ここでついにテントを買ったので、初テント泊として大菩薩嶺へGO。

 

テント泊向けのリュックはまだ買っていなかったので、ここまで使ってきた日帰り/山小屋泊用の35Lリュックに強引に詰め込んでいった。なんとかはなったが流石に余裕がなさ過ぎたので、結局後に50Lを買うことになる。

 

途中で軽い熱中症になったり、初めてのテントが重かったりと山自体に集中できなかったのが少し後悔ポイント。でも大菩薩峠小屋で見晴らしの良い中飲んだ冷えたコーラがたまらなくおいしかったことはしっかり覚えているぞ。熱中症から一気に復活した。

 

4. 6/24 天城山

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ひたすら道が荒れていた!というのが悲しいながら第一印象になってしまう。

山頂がめちゃくちゃガスっていたのもある、景色が見えていたらもっと違った印象もあったかもしれない。

 

東京からギリギリ日帰りできる距離にあり、なおかつ登りやすい低山でありながらあまり人気がないのがなんとも不思議な山だった。地味なのはまあ否めないんだけど。

 

万三郎岳へ登るだけだと歯ごたえがなさすぎるので、縦走路を制覇するのが山好きにはちょうど良い楽しみ方だと思われ。

 

5. 7/8-7/9 赤岳

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稜線の天気が大荒れ!しかもよりによって八ヶ岳登山道の中で最高難易度を誇る真教寺尾根を(そうと知らずに)選んだので、まあ過酷な行程だった。

 

景色こそ楽しめなかったが、ガスった高山の岩稜を歩きとおす経験が積めたのは自分の糧になった。

 

赤岳天望荘の中から、荒れに荒れる外の様子を他人事のように眺めながら優雅に楽しむマッサージチェアのなんと気持ちよかったことか。山小屋はやっぱりありがたいとしみじみ思い知った夜だった。

 

6. 7/29-7/30 鳳凰三山

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ほんとうに、ほんとうに綺麗な山だった!!

 

初夏の鮮やかな緑をたたえる植生を縫って広がる白い砂地に、絶妙な間隔で配置された岩々。天然の日本庭園だった。

 

それを朝焼けの雲海とともに見ることができたもんだから、忘れられない山行になった。鳳凰山愛してる。

 

7. 8/11-8/13 剱岳立山・奥大日岳

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室堂で過ごした三日間も最高だった!!

 

一般登山道最高難易度とも言われる剱岳別山尾根は、快晴にも助けられて無事クリア。剱沢キャンプ場で自分を快く迎え入れてくれた剱先輩を眺めながらの一泊目はたまらなかった。このキャンプ場、日本で一番素晴らしいキャンプ地なんじゃないか。

 

立山は、大人気なだけはある登りやすさと眺めの良さだった。良いんだけど、人多すぎ!!富士山かよ。むしろ一の越を越えた先、龍王岳あたりを歩いているときが一番楽しかった。人がいなくて静かだし眺めの良さは雄山方面と変わらない。

 

ここまでの山行を無事予定通りにこなしたからこそ、三日目にボーナスステージとして奥大日岳に登ることができ、ここも想像以上に素晴らしい山だった!山自体も形が良いし、室堂方面と剱岳の双方をきれいに見渡せる絶好の位置にあるんだよな~。

 

ずっと快晴の中、盛夏の室堂周辺を余すことなく満喫しきった。悔いはない。

 

8. 9/16-9/23 北海道レンタカーの旅 (羊蹄山・旭岳・十勝岳トムラウシ山雌阿寒岳)

ボリュームがありすぎるので最初のエントリと一番好きなエントリだけ貼っておく。

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レンタカー車中泊で1週間北海道を走り回って山に登るとかいう、なかなかに気の狂ったチャレンジングな冒険だったが、無事故でケガもなくやり切った。

 

旅の前半はずっと天気が優れず、特に旭岳と十勝岳は強風とガスの中で強引にピークだけ踏んで帰ってきたありさまだった。

 

だからこそ、旅の終盤、トムラウシ山の2日目復路で天気にも人との出会いにも恵まれたことがかけがえない思い出になった。ここまで試練に耐えてきた自分がついに報われたと思えて。

 

9. 10/14 谷川岳

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谷川岳、すごい山だった。本当に標高2000mないのかこの山?今でも信じられないぐらい稜線が高山の風格を持ってるんだよなあ。

 

当日きれいに晴れていたこともあって、鋭利な稜線が作り出す陰影のコントラストが印象的だった。日本三大急登の西黒尾根もアスレチックみたいで楽しかった。

 

今度来たときは馬蹄形一周チャレンジしたいなあ。ロープウェイ使いつつ死ぬほど頑張ればワンチャン1日で行けるんじゃないか。

 

10. 10/28 武尊山

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とっても魅力的な山だ。なのに、近くの谷川岳にばかり人気が偏って武尊山は人が少ない。なんで?いやまあ、間違いなく公共交通機関でのアクセスが悪いからだけど。登りは軽トラのお兄さんに拾ってもらえたが、下りは舗装道を10kmぐらい歩いてしんどかった...

 

むしろ人が少ないからこその静かで豊かな山歩きだったかもね。

 

遠くから見るとずっしりとした山体なので稜線も広いかと思いきや、意外と急峻でスリルも楽しめる。特に崩落のせいで登山道から外されている川場剣ヶ峰、もうちょい経験積んだらチャレンジしてみたくはある。

 

11. 11/19 瑞牆山

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金峰・瑞牆山は気になっていたが後回しになってしまっていた。11/23で瑞牆山荘へのバスは終わってしまうので、それに滑り込ませる形で瑞牆山へ。

 

標高の割に奇岩怪石のたくさんあるユニークな山で面白かったのだが、それ以上にその巨岩でロッククライミングをしてる人たちが多くて、見てるこっちの方が怖かった。

 

私は登山にのめりこんでいるのは確かだが、これを極めていった先にはロッククライミングがあるのだろうか。それとも最後まで岩を登る人々の気持ちが理解できないままなのだろうか。

 

今はわからない。もっと経験を積もう。

 

12. 11/23 金峰山

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瑞牆山に4日前に登ったばかりなのだが、今年のバス運行最終日に滑り込みで金峰山へ。

 

なんでこんなやり方になったかといえば、まずもともと瑞牆山金峰山は1泊2日で一度に登るつもりだったのだ。でも夜の天気予報があまり優れなかったこと、初冬のテント泊に少しリスクがあると感じたことから11/19に瑞牆山だけ日帰りで登った。でもそこで初冬の山に登る自信が付き、結局金峰山も今年中に登りたい!となったわけ。後から思えばテント泊もいけたな~とは思うのだが、まあ結果論。リスクを取らない選択もそれはそれであり。

 

金峰山奥多摩のラスボスの風格を持った立派な山だった。薄めの雪化粧も始まっていて、登山道に彩りが加わっていた。

 

チェーンスパイクは浅め硬めの雪にてきめんに効いたけど、かなりずれやすいのが気になった。軽アイゼンが使えるところではそっちを使ったほうが間違いなくいいと思う。

 

13. 12/16 赤城山

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遊園地みたいな山だった、赤城山。いろんなピークを楽しく踏めて、それでいて大沼から大きく離れることはないので遭難リスクもほとんどない。登山者をやさしく迎え入れる包容力、100点。

 

そろそろ雪山にも手を出してみたいなあと思っていて、初雪山には赤城山がちょうどよさそう。今回の山行はその予行演習でもあった。

 

今年の登山の総括と、来年やりたいこと

今年は一気に登山に目覚めた年で、我ながら目覚ましいステップアップを遂げられたと思う。

 

テント泊ができるようになり、剱岳立山では2泊を経験した。

北海道では車の運転に慣れつつ、車中泊で幾多の山に登った。

赤岳・剱岳武尊山などで、やせた尾根や急峻な岩場を乗り越えた。

初冬の金峰山ではチェーンスパイクを装備して雪の登山道を踏破した。

 

技術・装備面での進歩もそうだし、何よりいろいろな土地のいろいろな山を、いろいろなコンディションで登ることができて、今最高に楽しんでいる。

 

来年はこのステップアップをさらに継続していきたい。

 

夏山に関しては、高山の稜線でのテント泊縦走をしっかりとやりたい。南アルプスなら北岳を起点に光岳あたりまでの縦走を視野に入れたいし、北アルプス薬師岳から槍ヶ岳にかけての稜線は楽しそうだ。

 

冬山に関しては、本格的にやり始めるかは分からないが、まず少しだけ手を出してみたい。1-2月あたりで入門的な雪山で遊んで、本格的に装備を揃えるなら次シーズンになるだろう。その場合はガイド登山なりで人から技術を教わっていきたい。

 

今から来年が楽しみで仕方がない!

赤城山登山~足取り弾む外輪山巡り~

はじめに

12/16(土)に赤城山に登ってきた。

11月末の金峰山が今年最後の登山かな~と思っていたのだが、12月をじっと過ごしている間に我慢ならなくなってきた。

もともと赤城山には雪山入門として冬に訪れるつもりだったのだが、無雪期に登って地形感覚を掴む予行演習をしておこう、ということでこのタイミングでの山行に踏み切った。

 

ルート

当日のルート

ルートは赤城山ビジターセンターを出発して、大沼、小沼をとりまく主要なピークを一通り踏んで一周するもの。特に、赤城山最高峰の黒檜山と展望良好の次鋒である地蔵岳はきっちり押さえることができた。

鈴ヶ岳は西に孤立しており、コースタイムが爆増してしまうので今回は断念した。

 

山行録

交通手段には前橋駅から出る赤城山直通バスがとても便利だ。冬にも冬季専用ダイヤで休みなく運行してくれるのがポイント高い。

前橋駅の表示が親切なバスターミナルから乗車し、行く手にやや雲をまとって見える赤城山を見据えながら移動した。

乗客の数は少ない。紅葉と雪山の狭間にある微妙なシーズンだからだろう。

天気は薄曇り。雨の心配はなさそうだ

前橋駅高崎線や新幹線が通らないのを今回初めて知った。県庁所在地なのに行くのに乗り換えが必要なの、ちょっと切ない。)

 

鳥居の向こうに赤城山

10:00 赤城山ビジターセンター出発

ビジターセンターに到着。

センター内ではヤマノススメのパネルを見かける。気になる作品ではあるのだが、自分がまだ登っていない山の回を見たらネタバレされた感がありそうなので手を出せていない。

赤城山ビジターセンター

このイラスト、すごく好き

 

それはそれとして自分の山行は始まる。舗装道を少し北へなぞった先に駒ヶ岳・黒檜山登山口。さっそく赤城山最高峰へ駆けあがっていくぞ!

コンディションは良好だった。雲の量は朝よりも少なくなって、晴れ間も若干見えるぐらいに。風もそよ風程度、全然寒さを感じない。

登山道も快適そのもの。長大な鉄階段が2つも掛かっていて、その間の区間にも木階段がきっちり整備されている。全く疲労をためずに稜線に出ることができて、これから外輪山周回を控える身にはうれしい限りだ。

木からはすっかり葉が枯れ落ちて寂しい見た目になっているが、これはこれで日当たりが良く開放的な山行が楽しめる。

鉄階段第一陣

狭間の木階段

鉄階段第二陣

稜線では景色が一気に開けて開放感は最高潮!思わず足取りも弾んでくる。

南には小沼と、それを取り囲む長七郎山や小地蔵岳が見え、火山ならではの趣を醸し出していた。小沼は大沼より結構高い位置にあるんだな。

また、スリムな印象の駒ヶ岳と、その奥にどっしりと構える黒檜山のコントラストもこの稜線歩きの面白さの一つのようだ。

足取り弾む

東には雲海

小沼と、それを見下ろす長七郎山&小地蔵岳

駒ヶ岳(右)と黒檜山(左)

黒檜山頂手前では黒檜大神が祀られていたのでお参り。山に登っていると神社に出会うことは多い。お参りするのが結構好きな身としてはお得感がある。

そして登頂。

11:15 黒檜山

山頂から少し北に行くと展望の開けるスポットがあり、南西から北にかけて広く景色が見渡せた。(このへんから気づかないうちに写真のアスペクト比が16:9になっている)

大沼から離れてすっくと立つ鈴ヶ岳

北にも尾根が伸びる。先には北黒檜山が

北アルプスもそれなりに見える

見えそうで見えない、雲に隠れた皇海山

最高峰で遮るものもなかったが、風は優しくさわさわと吹くのみ。赤城山自身のユニークな山容と北の山々をひとしきり眺め終わった後にゆったりと行動を再開した。

 

ここからはいったん大沼まで下山し、そこから改めて陣笠山・薬師岳の尾根へ歩を進めることになる。

黒檜山から直接大沼へ降りるルートは、駒ヶ岳経由のルートよりもきつかった。とにかく岩が大量にごろついていて、そしてそのどれもが斜めを向いていて足を置くことを拒否してくる。岩の一つ一つと対話し、無理そうなら間の土で妥協することをひたすら繰り返して地道に下りて行った。

 

大沼の対岸向こうには立派なピークの地蔵岳が見えていた。道中に地蔵岳を「アンテナ山」と書いている標識を見かけて少しムッとしたが、カッコ書きで「(地蔵岳)」と後から書き足されていて胸がすいた。山は伝統と威厳ある名前で呼びたい、アンテナ山じゃあんまりだよなあ。

大沼にはちょっとした観光施設と浜があるが、この季節は閑散としている

対岸の向こうには地蔵岳。放送局のアンテナが複数立つ

そんなこんなで一度大沼まで下りることに成功した。

さて、これで今回の山行は終わらない。次に赴くは陣笠山~薬師岳の尾根だ。

一度舗装道に合流し、しばらく道なりに進んだ先、前橋市沼田市の境界である五輪峠から目的の尾根に足を踏み入れた。

ここの尾根歩きは、黒檜山の稜線にも増して爽やか、なおかつ起伏もほとんどないので散歩感覚で楽しめた。

そして、ここから振り返った黒檜山が最も格好良く見えた。全容が見え、なおかつそれなりに近い距離なので迫力がある。

黒檜山

12:39 薬師岳

どんどんピークを踏んでいく

陣笠山→薬師岳→出張山とさくさく越えていき、出張峠まであっという間の尾根歩きだった。

出張峠から、大沼周辺の全体像が一望できる。

鈴ヶ岳。大沼の外輪山とは別の古い噴火でできたから孤立気味らしい

鈴ヶ岳へ登るのはコースタイム上断念するので、出張峠からは素直に大沼へ下りる。

この日2度目の大沼下山である。

孤高のカルガモ

今日の山歩きはまだまだ終わらない。次は大沼沿いにやや南下したのち、スキー場の斜面を登って見晴山へ。ゲレンデだけあって、すっきり開けたなだらかな斜面を自由な経路で登っていける。

山の内側へ滑り降りるスキー場って新鮮

牧歌的な見晴山、先にはアンテナの立つ地蔵岳

東屋の向こうに荒山

見晴山を越えた先では一度舗装道に合流し、改めて地蔵岳への登山道に入っていった。素直なピークなだけあって、登山道もまっとうに素直で、ほどよい斜度の道をほどよい時間登り続けて登頂。

14:09 地蔵岳

地蔵岳には様々な放送局が立っている。確かにこの山、見晴らしがよいので電波を飛ばすのにはちょうど良いし、山頂が広いので施設を建設するのに十分な土地がある。放送局にはこの上ない適地のようだ。

地蔵岳という名に違わず、山頂には地蔵も見かけることができた。地蔵を撮るのはなんとなくはばかられるので写真は残っていないが。

アンテナ群

小沼がはっきり見える。地元の蔵王御釜を思い出す眺め

地蔵岳をクリアしたので、いよいよ今日最後の行程へ移っていく。それは赤城山南部エリア、小沼周辺の尾根周回だ。

地蔵岳からは南へ向けて下りていき、さっそく小沼に出た。

小沼は、端的に言ってちょっと怖いところだった。周り全体が緩い尾根に覆われ、そして舗装道や建物の類がまったくないので人里から隔絶されている。良く言えば秘境感が手軽に味わえる一方で、囲まれて逃げ場のない場所で静かな沼と対峙する不気味さもそこにはあった。

春に来たらもっと印象は違うかもしれない。

小沼。大沼よりも人気がない

不気味な撮り方もできる

小沼の南端にある鞍部から尾根に取り付き、長七郎山と小地蔵岳へ。

最後の尾根歩き

14:55 長七郎山

ここまで何度もアップダウンを繰り返してきたにもかかわらず、長七郎山・小地蔵岳へ向けた最後の上りも苦ではなかった。今年は去年までと比べ物にならないほど山に登ってきたから、その成果が出ているなあと思うと感慨深い。

皇海山もちょっと姿を見せてくれる。抜きんでた山体

地蔵岳からほどなく舗装道に出て、今回の山行も無事に終了した。

見下ろすは覚満淵。表日本には珍しい高層湿地とのこと

15:36 赤城山ビジターセンター帰還

バスが来るのは16:40。だいぶ時間があるので、ついでに覚満淵を回る遊歩道を歩いた。

がっちり木道

張り出している半島部分が2.5m~3mの泥炭層を形成しているミズゴケ・ツルコケモモ群落(受け売り)

16時を過ぎるころにはあたりは暗くなりだし、めっきりと冷え込んできた。赤城山ビジターセンターは15:45に閉まってしまうらしく、屋外に締め出されて寒さに耐えながらバスを迎え帰還したのだった。これも寒冷順化の一環と思おう。

振り返り

  • 12月の赤城山は雪もなく寒すぎず、それでいて登山者も少ないので、地形や見晴らしを純粋に楽しむだけなら最適期といってもいいくらい。ただし植生には期待しない。
  • 大沼と小沼の読み方問題。山と高原地図では「おの」「この」と書かれてるけど、現地の標識では徹底して「ONUMA」「KONUMA」と表記されている。どちらを信じればいいんだ
  • ポケットに入れた家の鍵を紛失した。常にコンパスと同じ側に入れているので、コンパスが手元にある限り、取り出すことの少ない鍵もちゃんと手元にあるだろうと思い込み、まさか無くすとは思っていなかった。やらかした。今度からは行動開始前にちゃんとリュックにしまう。

総括

大沼・小沼をとりまくいくつものピークを楽しく歩き回れる、さながら遊園地のような楽しい山行だった!

積雪期、雪山入門としてもう一度訪れてみたい。

 

金峰山登山~奥多摩の主へ、シーズンオフのご挨拶~

はじめに

11/23(木)に金峰山に日帰りで登ってきた。ルートはみずがき山荘からのピストン。

 

4日前に同じみずがき山荘発で瑞牆山に登っているが、その日は出発が遅れたこと、初冬の山に慣れていなかったことから、易しめの瑞牆山を選んだ。

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今回は時間通りに出発できたこともあり、瑞牆山でチェーンスパイクの感覚を掴んで自信を持ったこともあるので、韮崎ー瑞牆バス路線の運行最終日となる11/23(木)に、満を持して金峰山へ挑んだ。

 

うっすらと雪化粧を始めた奥多摩の主は、青空とともに優しく私を迎え入れてくれたのだった。

 

 

山行録

電車で韮崎駅に向かう途中、寝ぼけていたせいで誤って塩山駅に降りるというポカをやらかす。かなり焦ったが、甲府まで次の便で行く+甲府から特急あずさに乗ることでギリギリ間に合った。

 

山に登っていると高速で特急券を買う技術が鍛えられる気がする。

 

なお、韮崎ー瑞牆線に乗る人の数は4日前よりも多かった。やっぱりみんな運行最終日というのを意識しているのかもしれない。

今日もここから、頑張るぞ

10:18 山行開始

天気はきれいに晴れ。気温も十分に上がっていて、麓では手袋も帽子も不要という良好コンディションだ。

明るい秋晴れ

ここから富士見平小屋までは瑞牆山と共通のルートになる。慣れた景色をさくさく登っていき、瑞牆山を横目に見ながら富士見平小屋まで一気に到達。

 

先日はありがとう

前日が平日(水曜)でもテントはまばらにある

 

富士見平小屋を過ぎたら、いよいよ道は分岐し、金峰山へ向かう尾根に突入する。

 

大日小屋までの道は傾斜が緩やかで、なおかつ尾根がゆったりと広いためにとても登りやすかった。こういう道を考え事をしながら登るのは気分が良い。

 

ゆったり尾根

11:11 大日小屋

大日小屋は常駐管理人がいない最低限の避難小屋といった感じでかなり古ぼけている。

 

まあ古さなんて関係なくて、雨風をしのげる建物がそこに存在しているというそれだけに無上の価値があるものだけど。私も忠別岳避難小屋にお世話になった。

大日小屋

大日小屋手前で鷹見岩へ往復する分岐があったが、ただでさえ日没の早いこの時期、しかも風が強まってくるという予報があるなかでの寄り道は無謀だったのでやめておいた。眺望は山頂まで我慢我慢。

 

大日小屋を過ぎた後から登りはしだいに本格化していく。道中には鎖場もいくつかあったが、どれも鎖を使わずに靴のグリップで登れる斜面で、危険度としては低かった。

 

大日岩と鎖場

 

この辺から道が雪に覆われ始めるが、規模がやはり瑞牆山とは違った。尾根の半ばから稜線上に至るまで広範囲に定着していて、多いところでは5cm程度の積雪になっている。

 

数日間の晴れによって雪は固まっているため、チェーンスパイクが最高に輝きを放っていた。凍結気味の雪にフラットフッティングで接地すると、とてつもなくグリップが効いてまったくと言っていいほど滑らない。頼れる装備だあ。

 

これはもう溶けないだろうな

凍結してる箇所も

厚さを増していく

ここまではずっと樹林帯を縫う道で、展望はほぼ開けなかった。金峰山主稜線、砂払いノ頭に至るとようやく、一気に視界が広がることになる!

 

待ちに待った稜線歩きだ

稜線も雪化粧

富士山とともに

 

 

手前から見た金峰山頂は、瑞牆山から見た以上に威厳を備えていた。

稜線には特徴的な岩がいくつもそびえ、さながらそれを中心に土を集めて山を作ったかのような光景。南に向かって切れ落ちている区間もあり、重厚でありながら鋭利さも内包している。

 

なんだか遺跡のようにも感じさせる

最奥には五丈岩

ユニークな岩がたくさん

金峰山小屋。山の状況をまめに呟いてくれて非常に助かる

稜線ギリギリまで樹林が続くのは奥多摩らしさ

五丈岩、到達ーー

そして登頂!

 

12:40 登頂

フェイク山頂

真の山頂

 

五丈岩は金櫻神社の境内らしく、登るのが禁止されているようだ。どうせならお参りしたかったが社殿の類は見つからず。心の中であいさつだけしておいた。

 

景色も最高だった。瑞牆山からの展望もそれはそれでよかったが、金峰山頂からだと高さが圧倒的に違う。主稜線の格好良さと積もる雪もあいまって、より厳かな光景になっていた。

 

稜線がいい

五丈岩も景色のアクセント

瑞牆山ははるか下に(ちゃっかり八ヶ岳も)

瑞牆山の奥にそびえる小川山。このペア、見た目が対照的

富士山と五丈岩

山頂では軽く腹ごしらえしていたが、気温が低いうえに遮るものがない中でそよ風が吹いているものだから、体は一気に冷えてくる。あまり長居していると体力を奪われそうだったので、時間をかけずに再出発した。

強風が吹いていたらもっと寒かっただろう。服に関してはフリースジャケットという最終兵器があるから良いが、手がかじかみだしたので、手袋が力不足かもしれない。スノーハイクに挑戦するならもっと装備を整えていかないとな。

 

復路は雪を踏みしめて下りていくことになるわけだが、下りは雪が積もっている方がむしろ楽かもしれないと思った。岩や木の根の隙間が雪で埋まっているおかげで足の置き場が非常に多く、歩き方に迷わない。それに、チェーンスパイクががっちり雪面をとらえてくれるおかげで安心して体重を預けることができ、大股でザクザクと下りていけて快適だった。

 

瑞牆山を見ながら下る

 

14:10 大日小屋

大日小屋まで戻ってきたころには、すでに西日が差し始めていて雰囲気は夕方に。この季節は行動時間の短いこと短いこと。

 

太陽が低い

富士見平小屋からは瑞牆山に登ったらしき人も見かけつつ、ほどなく帰還。

 

14:58 みずがき山荘帰還

なんと、瑞牆山周回のときより早い時刻に帰り着いてしまった。やはりピストンは王道、多少距離が長くても迷わず一直線に戻ってこれる。

西日が差す晩秋の林道。好き

最終運行日のバス

4連休最初の日ということで、帰りには特急を使わず、普通列車でまったりと帰ったのだった。

振り返り

  • 新登山靴(GK88)がこなれてきた&付き合い方が分かってきた。
    • ハーフインソールを入れたらフィット感は丁度良くなった。
    • イカットの紐の結び方の要領を掴んだ。
  • ここから冬山向け装備を整えていくとしたら何が必要か
    • 寒風に弱い。レインウェアを着ればある程度対策にはなるが、専用のハードシェルがあると望ましい
    • 手袋ももっと分厚いやつがもう1枚要る
    • 靴もこのままだと限界がある。冬用の登山靴が要る。
    • チェーンスパイクだけでなく軽アイゼン・アイゼンも必要になってくる

 

総括

うっすらと雪をまとった金峰山を存分に楽しめた素敵な山行だった!

 

初冬の積雪した稜線を歩く経験が積めたので、ここから低山スノーハイクが楽しめる程度のステップアップを目指していきたい。